マリーナちゃんの正体
セザールさんが私を見ながら結界を張った。
《さてはお前、私の言葉が聞き取れているな?》
私は何も反応をせずにじっとセザールさんを見た。
《結界の中でお前を始末した方が掃除がラクだからな》
殺されるかも!
そう思った時。
バリバリ!!
と破壊音がして結界が割れたと同時に、箒を持ったマリーナちゃんが結界の外に見えた。
マリーナちゃんは箒で結界を叩き割ったようで、さらに箒を振り下ろしてセザールさんの後頭部を叩いて、土魔法で煙幕を出した!
それから間髪入れずに魔法撃を脇腹に打ち込んだ。
セザールさんは煙幕で視界が無くなったのと、脇腹に撃ち込まれた魔法撃の痛みでその場にしゃがみ込みながら、手から炎を出して応戦してきた。
視界を奪われたセザールさんの出す炎は手当たり次第に攻撃した。
「メガネ女!お前は生活魔法しか使えないと言ってたじゃないか!」
とゼェゼェ言いながら手当たり次第に攻撃していく。
マリーナちゃんは運悪く、その炎が右膝に当たった!
その衝撃でマリーナちゃんの体が資料棚にぶつかり眼鏡が落ちた。
マリーナちゃんは立ち上がると顔を歪めながら私の腕を掴み、私を連れて資料室の奥へと走っていく。
そして唇に人差し指を当てて
「シッ」
と言った後、資料室の1番奥の壁の隙間に手をついた。
すると壁が消えて奥に通路が見えた。
マリーナちゃんは音を立てずにその空間に私の手を引いてそっと入ると、また手をかざした。
フッと壁が出現して入り口が無くなった。
マリーナちゃんは無言で私の手を引いて歩いていく。
曲がり角を通ってしばらく行くと、またマリーナちゃんは手をかざした。
すると壁が消えて、その先が見えた。
箒やモップが並べられた小さな倉庫に入ると、また壁に手をかざした。
そして、その先に見えたのは、薄暗い煉瓦造りの廊下だった。
等間隔で魔法石が置かれているようで、かろうじて足元が見える。
そこで初めてマリーナちゃんが話し出した。
「なんとかここまできたけど…この通路は迷路のようになっていて先はどこに続くのかまだわかっていないの。
抜け道もあるんだけど、シアさんでは探せないわ。
私がいない事に気づいて誰かが探しにきてくれるのを待つしかないわね。
この膝ではこれ以上歩けない。」
炎で攻撃されたマリーナちゃんは、そこにあった大きな扉に背中をつけてしゃがみ込んでしまった。
マリーナちゃんは扉を見上げるとニッコリ笑った。
「この開かずの扉の先には『導きの秘宝』があるって噂でね。
先日、開けようと試みたのよ?
でも全く開かなかったの。
カギが違ったみたい。」
とマリーナちゃんは言うと首から下げているネックレスを見せてくれた。そこには大きなエメラルドがついた指輪がペンダントトップとしてついていた!
マリーナちゃん、平民って言っていたのに…大きなエメラルドの指輪と、この地下迷路に詳しい点。
…この国の王族?…
この指輪は第二王子妃…?
マリーナちゃんは指輪を見せた後、更に辛そうな表情になった。
マリーナちゃんを触ると冷たい!
マリーナちゃんは毒に侵されている。
あの炎は毒を含んでいたんだ!
なんとかしなきゃ。
私はマントの中にあるアイテムボックスの中に入っている物を手当たり次第出してみた。
裁縫道具と、メイク道具…頭痛薬。
頭痛薬は痛み止めだから飲んでもいいのかな?
いや、魔法との相性が悪くて副作用で悪化したら困るわ。
それからドミニクから取り戻した日記と…
役に立ちそうな物が見つからない!
まだ色々入っていたはず。
次に手に当たったのが、ユニコーンからもらった革紐のついたネックレスだった。
ネックレスのペンダントトップはサファイアで宝石の種類は違うけど大きさは同じくらいだった。
この扉が開くかも!
扉が誤作動を起こして開いてくれたらラッキーだわ。
導きの秘宝があるなら、マリーナちゃんを連れて帰る道を導いて欲しい。
私は試しに扉の中央にあるくぼみにペンダントトップを当ててみた。
ガチャ
鍵の開く音がした。
そっと扉を押してみると、扉が動いた!
「開いた?」
虫の息のマリーナちゃんが呟いた。




