魔道具がバレた!
嫌な予感がした私は曖昧に笑うと、その場を立ち去ろうとしたが、レヴホーン副団長に腕を掴まれてしまった。
「深刻な相談だったのではないですか?
私で良かったらお話を伺いますよ?」
レヴホーン副団長の顔が怖い…。
もしや私が何かを感じた事を悟られたのかな?
相手はこの国最高峰の第一騎士団副団長。
隠し通せる気がしない…。
でも私はもう一度作り笑いを浮かべるとなんとか立ち去ろうとしたが、レヴホーン副団長は掴んだ腕を離してくれない。
私は『たいした事ではないから大丈夫です』と空中に書いて、無理矢理立ち去ろうとしたら、持ってきた証拠の挟まった新聞を落としてしまった。
その拍子に新聞に挟んであった、数字を書いた紙がバラバラと落ちてしまい、私は急いでそれを拾おうとした。
レヴホーン副団長は落ちた紙を一枚拾い、その紙を眺めたが雰囲気が変わった。
「これは何の数字ですか?興味深いですね」
といつもの優しいレヴホーン副団長の顔をしているけど、違う!
「しかも、私は今シア嬢が付けている魔道具の上から手を掴んでしまったようですが…この魔道具から伝わる魔力はかなりの物ですよ。」
と離してくれない腕から手を離し、長袖を少し捲られた。
私の腕にはめてある翻訳の魔道具が露わになった。
《これは翻訳の魔道具…。何故こんな博物館級の物をつけているんだ?
この言葉がわかるんだろ?》
レヴホーン副団長は魔道具を見てから私の目を見た。
逃げなきゃ!
私は散々習った護身術の中で、一瞬時間が遅れる護身術を使い、レヴホーン副団長の腕を振り切り、咄嗟に走り出した。
一瞬時間が遅くなったせいで私に振り切られたとは気づかないレヴホーン副団長は
「この私が逃げられただと?」
と叫び、
《気付かれた!おっとり坊やのオンナにやられた!》
というあの言語を中にいる誰かに向かって話した。
数人の走る音が私を追いかけてきた。
《待てよ!俺たちが遊んでやるよ!》
と叫びながら追いかけてくる!
一瞬遅れる護身術を使いながら少しでも時間を稼ごうとするけど、なかなか距離は離れない。
結界を張って身を守るか?
いや、国最高峰の騎士団を前にすると、私の結界はすぐに破られてしまう。
この場合は、外に出るのが1番だ!
でもレヴホーン副団長が出口の方にいたので、私は逆方向に逃げてしまった。
この建物は防御魔法が施されているから窓は破れない!
ここは一階で上に逃げるか、地下に逃げるかしかない。
上に逃げても屋上に出られるわけではない。
それなら地下にある資料庫に逃げるしかない。この帳簿が入っている資料庫は中から鍵がかけられる。
鍵をかけると結界が発動する仕組みだと初めに教わったから、もうそこしか逃げられない!
私は全力で階段を駆け降りて資料庫に向かった。
資料室の扉は開けっ放しだ!
資料庫に逃げ込むと鍵をかけた。
資料庫の鍵をかけてから扉に背中をつけて振り返ると、資料庫の中にはマリーナちゃんと足の悪いセザールさんがいた。
2人で書類の大きなファイルを年度毎に仕分けしている最中だった。
「シアさんどうしたの?」
何も知らないマリーナちゃんがのんびりと言った。
「シアさん、鍵かけちゃダメですよ」
とセザールさんにも言われた。
『追われているの』
と空中に文字を書くと
「誰に?」
とセザールさんが聞いた。
『レヴホーン副団長』
と空中に文字を書くと
「フフフ。まさか!副団長は女性を追わないわ。
シアさん何したの?」
マリーナちゃんは笑いながら聞いてきた。
『この紙を見られただけ』
と数字をメモをした紙を遠目から見せたら
「なーんだ。単なる数字じゃない。じゃあ追われているのは気のせいね」
とマリーナちゃんは言ったけどセザールさんは雰囲気が変わった。
「シアさんだったのか。帳簿を探していたけど見つからなくて…。
外に持ち出すと追跡魔法が発動するけど、魔法は無反応だから庁舎内にある事はわかっていて探していたんだよ。」
セザールさんは普段の話し方だけど明らかに声には殺気が混ざっていた。
その時、資料庫の扉が激しく叩かれて背中に振動が伝わった。
扉の方に向かってセザールさんは
《今ネズミを見つけた。これから始末する》
と知らない言語で叫んだ。
《わかった。その後始末は任せろ》
扉の外から同じ言語の返事が聞こえた。
ネズミって私の事?
恐怖で顔が引き攣る。




