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疑惑

髪型を今までのシアに戻して、いい気分のままで朝総務課に行くと沢山の書類が新しく届いていた。

書類の内容は大規模遠征のためのものだ。


入らずの森に誰かが侵入を試みたようだ、とキャロルさんから教えてもらった。


入らずの森は、王都から100キロくらい離れた所にあり、強い魔物が生まれる森と言われている。

そのため結界を張って安全を確保しているが、もしも結界に綻びが見つかってすでに魔物が結界の外に出ていた場合は激しい戦闘になる。

結界の状態や、森に異常がないかの確認と最悪の場合を想定して、魔道士団と騎士団と軍部の合同の遠征が予定されていてる。

遠征に持っていくポーションや魔法石、魔法弾などの確保や準備が急いで行われていると教えてくれた。



入らずの森の横には大きな道が通っていて、王都から入らずの森の横を通るルートは商人が沢山通るので、結界が破壊されるとライフラインが壊れる場所のようだ。

この道の分岐点を左に進むとキルコフ公国に繋がり、そのままウィルコクス国まで続いている。


大きな道がいくつも周りを通っているアクセスのいい場所にある入らずの森。森の周辺を安全に通行するために結界で囲んであった。




「大規模遠征はポーションや魔法弾の備蓄を増やして、在庫管理する倉庫の数が増えたりするから更に人手不足になるわね。

軍部にも総務課はあるけど、あちらは軍人あがりばかりで脳筋すぎてやりにくいから、全てこちらが管理することになっているのよ。

遠征が軍人だけなら、軍部で管理してもらえるのに。魔法師団や騎士団と合同になると、こちらの管轄になるのよね…。」


キャロルさんはがっかりした声で教えてくれた。


遠征が近いなら、と私は以前から遠征の多いフランクさんのために『フランクさんが無事に戻りますように』と願いを込めて刺繍したポケットチーフを渡した。

「シアが刺繍してくれたの?ありがとう!」


フランクさんは喜んでくれた。



総務課は管理する消耗品が増えて忙しくなった。

そして数日が経ったある日、ポーションを管理する魔法薬庫と魔法弾などを管理する武器庫の在庫と、経費の帳簿を見ていて違和感を覚えた。


今まで領地経営をしていて経験済みだが、仕入れ値を水増し請求されたり、納入数を誤魔化そうとしたり。

違和感は多分、そのどちらかだろう。


犯人は商品納入業者なのか、それとも発注側であるこちらなのか。はたまた単純なミスなのか…。

私は過去の帳簿を見たいと思って、資料庫に行った。

もしも、これが故意だった場合、資料を探していることがわかったら犯人に処分されてしまいかもしれない。


私はいつものマントを着て資料庫に向かった。

そして、マントの内側にあるアイテムボックスに帳簿を入れて資料庫から持ち出した。

これを細かく見て、何もなければ単なる発注ミス。


資料は魔法の追跡が付いているので持ち出せない。


だから、自分の手元の資料に紛れ込ませてこっそり調べた。


こっそり調べるのには数日かかった。



調べた結果。

これは…きっと故意的だ。

ポーションの質を下げて少し安い商品を納入させているのに、請求金額は同じ。しかも納入数も変わっていない。

むしろ少し増やす月があったり、包帯などの備品を納入する月もあったり。

やり方は巧妙で一見するとわからない。



もしも見つかったら、発注ミスと説明できる内容で納品してある。



帳簿を調べて行くと、ポーションの購入先の治癒院を変更してからおかしな事になっている。


ポーションの納入先の変更以前を調べると、宿舎の備品の納入業者が違っていた。

そちらは今の業者の方が高い価格で仕入れをしているが、請求額は同じで以前の方が多種多様な物を仕入れていた。安い業者の方が不審点がある……。


色々な帳簿を調べないとわからないようにしてある時点でかなり手の込んだやり方だ。



フランクさんに相談しよう。

早く相談しないと、遠征が始まって相談する機会を失ってしまう。


証拠となる帳簿をマントの中のアイテムボックスに入れてからマントを羽織り、自分が調べた証拠を新聞に挟んでわからないようにして持って、第一騎士団に向かった。


「おや?シア嬢。どうしました?」

出てきたのは副団長のピーター・レヴホーン伯爵だった。

しかもタイミング悪く来客中の所に訪ねてしまったようだ。


『フランクさんいますか?』

空中に文字を書くと

「もう大規模遠征に出発してしまったよ。

魔物が結界を破ったと連絡が入って急遽出発したんだ。

何かあったの?」

と聞かれたけどフランクさん意外に話す気はないので、

『また来ます』と空中に書いてその場を立ち去ろうとしたが

第一騎士団の執務室の奥から

《準備ができているなら決行だ》

とあの不思議な言語が聴こえてきた。


私は思わずビクッとなった…。

「…シア嬢?どうしました?

何か聞こえました?」


そうレヴホーン副団長が言った直後に、中から女性が出てきた。

民間の治癒師の服装だった。

「納品は終わりました」

と女性は言って私とすれ違い、出口の方に向かって歩いて行った。

すれ違った女性の胸元にアザがあった。



そうだ!除幕式の帰り際、レヴホーン副団長がエスコートしていた女性だ!!


女性は淡いブルーのドレスを着た30歳前後の女性だ。

ドレスとは不釣り合いな大振りのダイヤモンドのネックレスをつけていて、ダイヤモンドでアザを隠していた女性だ!



あの時、レヴホーン伯爵は

『足は大丈夫ですか?捻挫だと思いますが…治癒師のところに行った方がいいですよ。

もしよかったら今から治癒院にご案内しますか?』

と言うと女性は

『その治癒院を教えて頂けますか?』

と答えていた。



…この女性が治癒師なのに????




嫌な予感がした私は曖昧に笑うと、その場を立ち去ろうとしたが、レヴホーン副団長に腕を掴まれてしまった。


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