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会議室でのお話

ドミニクは応接室の外に侍従を待たせて、私と2人で応接室に入った。するとドミニクはすぐに結界を張り、外に音が聞こえないようにした。


「シンシアが屋敷を飛び出した日に、執事のダントから『シンシアが屋敷を出て行った後足取りが掴めない』と連絡が入って。

その日の夜にベルーガ公爵から『シアが行方不明だ』と報告が上がったんだ。

で、シアが持っている誘拐防止用の魔法石の位置情報を探したら、ウィルコクス国内に魔石の反応がなくて。

さらに範囲を広げて探したら、ここグレイグ王国にいることが分かったけど、なんせ離れすぎている。

だから私が、シアを探すために大使としてこの国に派遣されたんだよ。

私ならシアが魔石を持っていなくても、半径1キロ以内にいたら、たとえ地下であろうがシアの魔力を見つけられるからね。

しかし、一体何があってこうなっているんだ?」

と言った。


そこで、家を飛び出した経緯や、なぜか飛び出したその日にグレイグ国に来ていた事、フランクさんに無事保護された事などを空中に文字を書いて説明した。


「ベルーガ公爵家からは王家に上がった報告は全く違ったよ。

ただし、執事や侍女からは元々色々な報告が上がっていたけどね。

シアはいつも苦労していたのは知っていたけどさ。

あのポンコツども!!!!」



私の話を聞くうちに、ドミニクの魔力はメラメラと燃え出して


「あいつら本当に許さない!とりあえず、シアの立ち位置も考えて平民のシアとして旅券を出す。

ここで正体がバレたら一大事だ。

場合によっては誘拐疑惑で、国家間のいざこざの元になる。

…これは報告案件だな。

シアの王位継承権は俺より上だからな、シアがこんな事になっているのは国益に関わるんだ。

だからこそ、表立って行方不明とは公表できず、捜索も限られていたんだよ。」


私は王位継承権の事を持ち出されて意味がわからなかった。


「あれ?シア。知らなかったのか?

俺は正式には、先代王弟の孫なんだよ。

俺の父は子供の頃養子に入っているから王弟と呼ばれているが、正式には国王陛下と父は従兄弟。だから、シアと俺はハトコだ。」


えーーー???

知らなかった。


「ついでの話だがな。

ベルーガ公爵家の嫡男であるイアンは公爵家の外交を全くしないし、公爵家としての役割を果たさないから、次男である俺を婿養子としてシアと結婚させてベルーガ公爵家を継がせようと言う話が国王陛下から出ていたぞ」


私は血の気が引くのを感じた。


「一年後は、婚約者かもしれないからな、これからもよろしく。

それとこの国では、ドミニク・エッゴールド侯爵子息という事になっている。

王族であることは誰にも言うなよ?

…って声が出ないから言えないか」


と鼻で笑われた。


ドミニクと結婚?それは嫌だ。結婚に夢を持ちたい。

いっその事、帰るのを諦めようかな?

だめだ。もうドミニクに見つかってしまっている…。

それに、お祖父様からの遺産を貰うためには帰らなきゃ!


『私、ドミニクとは結婚しないわ。

でもここに居たいわけじゃないの。一年以内には絶対に帰りたいの!

お祖父様は遺言で、私達3兄妹に同額の資産を遺してくれたのよ。

お祖父様の死後10年で使えるようになると聞いているけど、その時点で行方不明だったら、私の資産はお兄様とお姉様で分ける事になる。

それは嫌!

自分の分はきっちり貰うわ。

そしてドレスメーカーを新しく立ち上げて、私は一生独身で過ごすからドミニクとは結婚しないけど。

どうしても戻りたいのは、来年がその10年目なの!』


と筆談で伝えると、ドミニクは笑い出した。


「戻りたい理由がそれか!

シアらしいな。私とこの国に渡航していた事にして帰るのが1番自然だけど、婚約以外で二人でグレイグ国に来ている理由ってあるか?

私の帰国はまだまだ先だ。

それまでに理由を考えておけよ?

私は、『婚約して一緒に来ていた』が自然だと思うぞ。」


とドミニクの話はここで終わった。




会議室を出るとドミニクの侍従とフランクさんが待っていた。


『そうだ』

とドミニクは古代語で言うと、何かを思い出したような顔をして、内ポケットから


『シアから預かっていた大切な本』

と言って、3年前の私の日記を内ポケットの中にあるであろう、アイテムボックスから出してきた! 


紛失したと思っていたらドミニクが弱みを握ろうと持っていたのね!

最悪!


私は受け取ると、誰にも見せないようにギュッと日記を抱え込んだ。

そんな私を抱擁して耳元で

『この騎士団は正体不明の奴が複数所属している。

くれぐれも気をつけて』

と古代語で囁いて、


『では、またね。シア。次会う時は旅券持ってくるから』

とウィルコクス語で言うと手を振って、侍従と共に待っていたフランクさんに出口まで案内されていった。


悪魔だ…。

日記を読まれていたなんて!

日記をマントの内ポケットにあるアイテムボックスに隠さなきゃ!


動揺した私は普段誰も近づかない倉庫の方に行ってしまった。

すると


《準備はもう少しで整う》

《遅れているな。計画通りにやるにはもう時間がないぞ》

《大丈夫だ》

《このタイミングしか無いんだから失敗は許されない》


いつか聞いた、どこの国の言葉かわからない話し声が聞こえてきた。

あれは…ユールサイト子爵領にいる時に聞いた言葉だ。


この近くで話しているようだけど、人の姿は見えない。私のバタバタと走る足音で、シンと静かになった。

私は疑問に思いながらも来た道を戻って総務に戻った。


「ねぇ、シアさんとウィルコクス国のエッゴールド大使って知り合いなんですか?

さっき、ウィルコクス国大使の帰り際にシアさんを抱きしめているのを見ちゃった。」

とマリーナちゃんに聞かれた。


『大使とは同郷なの。』

と空中に書くと


「本当にそれだけ?大使はシアさんの事、優しい目で見ていましたよね?

もしや秘密の恋とか?」


『ないない!あんなに性格悪い人とは嫌』

と書くと

「どんな性格か知っているなんて親密なんですね。

そういえばシアさんはユールサイト小隊長とも仲良しですよね。」

とマリーナちゃんが言うと


「フランク・ユールサイト子爵の所に私の姉がいるのよ。」

とキャロルさんが話に加わった。

「シアちゃんは、ユールサイト小隊長の恋人…なのよね?」

とキャロルさんにいわれて

『違います!親切にして頂いた恩人です』

と書くと

「あの女心がわからないけど、軍人としては優秀で爵位のわりには第一騎士団の第一小隊長の隊長になっているユールサイト子爵だけど。

シアちゃんにはすごく甘いって聞いたわよ?

この前の靴下はひどいプレゼントだったけど…。

ピアスを贈った事があるとか?

あの小隊長が気の利いたプレゼントを贈るなんてありえないわよね」

とキャロルさんが言うと


「ええ?あのユールサイト小隊長がアクセサリーを贈るなんて!

ユールサイト小隊長。このままだと、同郷のウィルコクス国大使とシアさん結婚しちゃいますよ!」

とマリーナちゃんは言ってから


「シアさん!ユールサイト小隊長を見捨てないでくださいね」

とマリーナちゃんに手を握られたところで


「書類溜まってますよ」

と、声が掛かって話は終わった。



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