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やばい人に見つかった!

働き出して数週間が経った時だった。


その日は、第一騎士団団長から私宛に来客があると聞かされていたけど、時間は指定されていなかった。



私は資料室に行こうとしていた。


廊下の角を曲がると、奥の応接室からお客様とともに、ガードナー第一騎士団団長とフランクさんが出てきた。


お客様は遠くから私を見ると

『もしかしてシア?」』

と大声で話しかけてきた。

ウィルコクス国でも、グレイグ語でも、キルコフ語でもない、古代語を話せるのは1人しかいない!

やばい人がいる!逃げなきゃ!

そう思っているのにその人は近づいてきた。


『シア!やっと見つけた!

なんでこんなところにいるの?

隠れようとしても無駄。なんでそんな格好しているの?』

と言って近づいて来た。


そして私の目の前まで来ると

『やっぱりシアだ。ここで何してるの?』

と聞いてきた。


やばい人に見つかった!

目の前にいたのは、侍従を引き連れた幼馴染のドミニクだった。


ドミニクは、ウィルコクス国の王弟殿下の子供。

つまり私とは従兄弟だ。

ドミニクは私と同じ年で、兄妹のようにして育った。2人で色々な悪戯をする時の合図のために、古代語を覚えた。

古代語を話せたのはお祖母様だけだったのでお祖母様に2人で教わったのだ。



ドミニクは、きっとこの事を言いふらすだろう…。

そしてゴシップ誌が沢山取材に来る。


私は血の気が引いた。


『シア、なんだよ、その態度は。

無視ができないと思ったら、睨んできて。

髪色を変えて、髪型を変えても無駄だよ。

私はその程度じゃ誤魔化されない。

シアの魔力の色は特別だから、1キロ先にいても見つける自信があるよ。 

そんな態度取るなら、あの事、社交界で言われてもいいのかぁ?』


とドミニクは肩に手を置いて小さい声で無視をする私を揶揄ってきた。

それでも無視をしようとすると、


『あっ!こんな所に古い手紙が』


と言いながら、内ポケットから何かを出そうとした!


ドミニクは内ポケットのアイテムボックスに、昔私が書いた『将来の夢、ドミニクのお嫁さんになる事。結婚してねドミニク』と書いた手紙を隠しているのね?

卑怯者!私の黒歴史だ!

ドミニクほど人をいたぶるのが好きな変態はいない。

ドミニクはプラチナブロンドの線の細い優しげな外見をしていて人畜無害そうだし、外面は誰にでも優しいいい人だ。だから皆、ドミニクに悩みを打ち明けてしまうのだ。

そしてドミニクに弱みを見せた人は、気がつくとドミニクのイエスマンになって行くのだ。


…恐怖の大魔王とはドミニクの事…



私はドミニクの口を塞ごうと手を伸ばしたところで、フランクさんが話しかけた。



「エッゴールド大使。こちらのシアをご存知なのですか?

聞いたことのない言葉ですね。方言ですか?

彼女からは昔ウィルコクス国の貴族だった事と、今はドレスの販売員だと聞いております。

彼女は私の領地の森で保護したのですが。

旅券がなくて一時的な滞在証を発行してこうして騎士団の総務を手伝ってもらっているのです。

実はこの後、別件で面会をお願いしていたのはシアの件なんです。

もしよろしかったら正式な滞在許可証を発行していただけないでしょうか?」

とフランクさんが大人の対応で割って入ってきた。


「へぇ。面会者とはシアの事だったんですね。

シアと私は同郷出身で昔からよく知っているんですよ。」


ドミニクは私がドレスをリメイクして経費節約をしていたのを知っているので少しニヤッとしたがフランクさんは、そんなドミニクの様子を無視して話を続けた。


「今、彼女は声が出ないのです。医師の診察を受けましたが原因不明で…多分ストレスではないかと…」

とフランクさんは説明してくれると、


「仮病じゃなくて?声が?」

ドミニクは驚いて私を見ると

「シアは見かけによらず苦労人だからなぁ。」

としみじみ私を眺めて言った。


「旅券発行は、私が身元引受人になるのですぐに発行します」

ドミニクは今まで見たことない優しい顔をして、私の頭をポンポンと叩くと


「シア、困ったことはないか?」

と聞いてきたので私は首を横に振った。


「そうか…まさかここでシアに会えるとはびっくりだ。

話したい事があるから…どこかで時間をもらえないか?なんなら大使邸で話してもいい」

そうドミニクか言うと


「いえ、シアは今、機密事項を知っていますから大使邸ではちょっと…」

フランクさんがすかさず割って入ってきた。


「ええ、騎士団の機密事項を知るものが他国の大使邸に行くのは!そうだ、大使。

今お時間があればこのまま応接室でお話してはいかがですか?」

ガードナー第一騎士団長はそう言った。



二人は平民の私が大使からの圧に負けて不利な立場になるのではないかと心配してくれているのかもしれない。

だって、私は機密事項なんて知らない。私の仕事で知る事といえば、騎士団宿舎の経費や、食堂の経費、遠征費に、それから討伐した魔物の数に、回収した魔石の数。


魔物や魔石は公表されているから機密事項でもなんでもないし、経費は機密事項なの?



「では、そうさせていただく。しばらくシアと2人で話をさせてもらう…しかし、シアと呼び捨てなんだ…」


最後の方はドミニクの独り言で側にいる私にしか聞こえなかったが、フランクさんは心配そうに

「大丈夫?シア」

と聞いてくれたので、私は笑顔で頷いた。


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