火祭り
本日2回目の投稿です。
早めのディナーを済ませると、皆、外出の用意を始めた。
大きな荷馬車には昨日のうちにオブジェが積まれている。
荷馬車にはオブジェを囲むように子供達が座った。
そして、フランクさんを含めて10人くらいの男性が馬に乗って荷馬車を囲むように進む。
他の人は歩いて領主館から会場まで向かった。
私も皆に紛れて会場まで歩いた。
もう魔法で寒さは克服したし、夜の収穫のお陰で雪の夜道を歩く方法も学んだ。
私は楽しみでスキップして進んだ。
会場は開けた何もない小高い場所だった。
すでに街の人も沢山来ていた。
「今から火祭りが始まるよ。最後に花火を上げるから、シアも手伝って」
フランクさんに言われて私は頷いた。
時間になると、持ち寄ったオブジェを積み上げて、司教様がお祈りをした。
すると、オブジェには青白い火がつき、パチパチと燃え出した。
青白い火の粉は高く空まで上がり、ふわっと消えていく。
…綺麗…
大人達が演奏を始めた。
火を囲むように、子供達が歌いながら踊り出した。
全員、赤いマントを着ている。
不思議に思っていると
「青や白の服を着ていると、雪の精霊に仲間だと勘違いされて連れていかれるって伝説があるんだ。
だから、仲間だと間違われないように赤いマントを着ているんだよ。
そもそも火祭りは、雪の精霊のお祭りなんだ。あの青白い炎はすごく冷たいんだよ。」
とフランクさんが教えてくれた。
子供達の踊りと歌がだんだん大きな声になって行く。
すると、楽しそうな笑い声が聞こえて、オブジェの火が大きくなり全てのオブジェが空に吸い込まれるように消えた。
そして、空から沢山の光がフワフワと降ってきて雪に溶けていくように無くなった。
じっと消えた場所を見つめていると、その奥にユニコーンがいた!…気がした。
…気のせいだったみたい…。
ユニコーンに気を取られていると、隣にいたフランクさんが、手から花火を上げた。
フランクさんだけではなく、何人かの人が花火を上げていく。
私もフランクさんに言われて花火を上げた。
沢山の花火が夜空に上がり、色とりどりの光が瞬いては消えた。
最後にフランクさんが一際大きな花火を上げた。
大きな歓声が上がり、司祭様より、来年もまたいい年になると宣言された。
それから、子供にはホットココア、大人にはホットワインが配られて、全員で乾杯をした。
そして、幻想的なお祭りは終わった。
来てよかった!
空っぽになった荷馬車には、疲れて眠る子供を抱いた母親や、歩き疲れた人達が乗った。
オブジェを下ろした後の荷馬車は、領主館に帰る従業員達が乗っていっぱいになった。
「シアは疲れていない?」
とフランクさんに聞かれ、私は笑顔で首を振ったけど、
「私が歩く」
と言ってフランクさんは私だけを馬に乗せ、自分は馬の手綱を引いて領主館まで歩いてくれた。
そして、領主館に着いた頃には、すでに年が明けていて、みんなで
「ハッピーニューイヤー」
とお祝いをしてから眠りについた。
びっくりするくらい早く目が覚めた。
新しい年を、異国で迎えてしまったけど今までとは違う日常にワクワクしていた。
新年の最初にする事は、アドベントカレンダーの最後の引き出し、「ニューイヤー」の引き出しを開ける事。
引き出しを開けると、昨日のケーキに入っていたガラスで出来た宝石とそっくりの石が入っていた。
…宝石そっくりなガラス玉が2つ…
私はそれを光にかざして眺めた。
これはグレイグ国の思い出として取っておこう。
石をマントに縫い付けてあるアイテムボックスに入れた。
新年は、領主館から皆でゆっくり歩いて教会まで行った。
そして、新年のミサに参加をした。
ウィルコクス国では、新年はどこかのパーティーに参加していた。
誰がどんなドレスを着ているとか、誰が一番ステキか、とか、そんな噂話を聞きながら過ごしていた。
そういえば、部屋中がシャンパンの泡だらけになった年があった。
それから、海辺でパーティーをして参加した若い貴族みんなでドレスのまま海に飛び込んだ年もあったわ。
私はそれを止めもせず傍観していたけど…。
もしかして、側から見ると私も馬鹿騒ぎをしている人の中の一人だと思われていたのかな。
…それはパーティーガールと呼ばれるわ…
自分の行いを反省した。
お祈りをしているフリをして、横にいるフランクさんを薄目で見た。
フランクさんは目を閉じてちゃんとお祈りをしていた。
若くして子爵として領主をしながら、騎士団に所属するって大変よね。
私はもう一度目を閉じて、自分ももっとしっかります。と神に誓った。
ミサが終わり、領主館に戻ったタイミングで、真っ白な鳥が飛んできてフランクさんの手の中に落ちると手紙になった。
手紙を読んだフランクさんは
「トーマスに執務室にくるように伝えてくれ」
と入口付近にいたメイドに言うと、慌ただしく執務室へと入っていった。
フランクさんは急遽、王都に戻らなければいけなくなったようで、領主館は慌ただしくなった。
するとティナさんから
「フランク様と一緒に王都に行きませんか?
いずれ仮発行の滞在証も期限が来てしまいます。
シア様がこの国に滞在し続けるのか、それとも帰国の手続きを取るのか。
王都に行けばどちらも簡単に手続きが取れますから。」
と言われて、フランク様と王都に向かう事になった。