3治癒魔法とは
父様から治癒魔法の教本が届いた。僕はわくわくしながらさっそく本を開いてみる。
僕は6歳にしては既にほとんどの読み書きは履修していた。
これは前世の知識を思い出す前の事なので自分でいうのも難だが地頭が良いのだろう。
難しい字は辞典で意味を調べながら読み進めていく。
「う~ん? この世界は‘いりょうぎじゅつ’が遅れているのかな?」
教本には魔法と呪文が大半だった。そしてすぐに読み終わってしまうぐらいには内容が薄い。
【ヒール】
軽度の怪我が治癒できる。
これである。呪文は技名の事なのでRPGみたいになんか格好いい短文とかではないのだ。
こんな感じてハイヒールやエリアヒール、キュアなんてのが載っていた。
これでは治癒魔法師になりたくてもなれないだろうな。
さて、どうしようか?
呪文は全て覚えた。でもこれだけだと不完全な気がする。
なんともなしに教本をぺらぺらとめくっているとその文章が視界に入った。
【魔法は想像力が大事です】
なるほど。たしかになんとなくヒールをかけるよりたとえば、擦り傷なんかだと皮が出来るようにとか血が止まるようにって具体的に考えて魔力の指向した方が良い気がする。
とりあえず魔法を使ってみた方が良いかな?でも自分でわざと怪我してみる?
うーん。と悩んでいると部屋をノックする音が。
「兄様。どうしたんですか?」
部屋にやって来たのは兄であるギルバードだった。
「うん。マークは治癒魔法を頑張ると言っていたからな。ちょうど訓練で怪我をしたからマークの練習に良いのではないかと思って来たんだ」
「ちょうど試したいと思って怪我しようか考えていたところだったんです。……でも良いんですか?」
基本の魔力操作は練習していたけど、まだ実際に魔法を使ってみたことはない。そんな人間が治癒魔法をかけても大丈夫なのだろうか?
僕の不安そうな顔をみたんだろう兄はにっこり笑って頷いた。
「大丈夫だ。俺はお前の兄だからな。何事も実践あるのみだ」
「ありがとうございます。では、よろしくお願いします」