2僕の家族
「おかえりなさいませ」
僕たちが自宅であるクリフトフ邸に着くと留守番をしていた執事長のダニエルが綺麗な礼をして出迎えてくれた。
僕はそれに挨拶を返したが、いつもなら返事をする両親はなんのリアクションもない。
よっぽど僕の魔法適正に憂いてくれているようだ。
僕はむしろありがたいぐらいだが両親を、そして話を聞いたらきっと家族全員が僕の心配をしてくれると思う。
これは一度家族ときちんと話をして、それから何か成果を見せた方が良いだろう。
「父様、母様。兄様と姉様を呼んでみんなで話をしたいです」
僕が二人を見上げてそう言うと二人は頷いてくれた。
「そうだね。みんなで相談しよう。ダニエル二人を談話室に呼んで来てくれ」
「かしこまりました」
***
「まぁ、マークが」
父から僕の魔法適正を聞いた姉は片手を口元に当て、兄は握りこぶしを握りしめた。
二人も僕の適正を悲しんでくれているようだ。
「みんなに話があります。聞いてくれますか?」
少しみんなの様子が落ち着いたのを見計らい僕は声をかけた。見回してみんなが頷いてくれたのを確認する。
「僕はあんまり殺生を好みません。でも、みんなが傷付くのを見るのは辛いです。だから僕はみんなの傷を治せる治癒魔法の適正があって嬉しく思います。僕はこれから治癒魔法を勉強したいです」
「……マーク」
みんな僕の言葉を聞いて感動してくれたようだ。たしかに客観的に見ると不遇な魔法適正の子供が健気に頑張ってみんなの役に立つように頑張るよ。と言ったらたしかに胸にくるかもしれない。
僕としては普通に治癒魔法の無限の可能性に期待しているだけだが、水を差すのも悪いだろう。
「わかった。マークの為に治癒魔法の教本を取り寄せるな」
父の言葉にいやいやと否定の言葉が出そうになるのを寸前で止める。
本というのは高価でうちの領はお世辞にも繁栄しているとは言えない。むしろぎりぎりでなんとか運営しているのだ。
領地がそんなんだといくら領主と言えど他と比べて裕福ではない。はっきり言うと貧乏である。
だから申し訳ないなと思ったけど、みんな僕の為に何かをしたいと思ってくれているんだと気付いて代わりにお礼の言葉を言った。