10初めての重傷者その2
引き続きR15です。
「マーク、治ったのか?」
「はい。ひとまず患部は塞ぎました。ですが失った血は戻せていないので貧血状態ですので安静にして栄養のある食事をあげたら良いです」
鑑定も確認して少年の状態を父に伝える。
すると周りで聞いていた冒険者たちもほっとしてなにやら騒ぎ始めた。
その声がうるさかったのだろうか?少年が目を覚ました。
そして貧血だというのに勢いよく上体を起こして、目が眩んだのか頭に片手を当てている。
そこまでの一連の動きをうっかり見ているだけになっていた僕は慌てて少年に手をさしのべる。
「ちょっと、君は重傷だったんだよ!」
「父さん、母さんは!?」
僕の小言を無視して必死な様子で掴みかからんばかりに詰め寄られる。
「へっ?」
「……俺の父さん、母さんも一緒だったんだ。二人は俺を逃がしてくれて、でも途中で一匹追っかけてきた奴に攻撃されたんだ」
「ねぇ、少年の両親は?」
僕は背後を振り返って尋ねる。
さすがに僕と一緒にここに来た父は知らないとわかったので、見知らぬ人たちを見回す。
皆険しい顔のままざわざわしている。
どうやら知らないらしい。
「今、救助に行ってるところだ。お前…じゃなくて、子息様はまだ治癒魔法使えますか?」
人々の背後からのっそりやって来た大男がそう言って僕と父の近くまでやってきた。
僕の魔力はまだ十分にある。少年と同じような重傷者はあと5人くらいは助けられるんじゃないかと思う。
なので熊のような大男…多分ギルドマスターに頷いた。
「急いで運べ!」
「やばいぞ」
やがてまたざわざわと騒がしくなってきた。多分少年の両親が見つかったのだろう。
聞き取りづらいが言葉的にはまだ息があるようだ。
「…こ、こっちに運んでください!」
僕は必死で手を上げて言うが子供の背と声量では屈強な大人に埋もれてします。
「おい、こっちだ。早く運べ。おら、子息様の前開けろ」
ギルドマスターと父の手助けで少年の両親は無事に僕の前に並べられた。
少年もまた真っ青にしながらギルドマスターに支えられて見守っている。
僕はまた深呼吸すると鑑定の魔法をかけた。
備考欄には‘腹部損傷。大量出血’の女性と‘右腕損傷。大量出血’の男性が。
男性の方は止血をきちんとされていたので女性を優先することにした。
何とか腹部の解剖図を思い出してハイヒールをありったけ力を込めて唱える。
すると少しずつ患部が再生されていく。
しかし、少年の時にも時間がかかったように感じたが、女性は更に倍の時間がかかった。
何とか傷を塞いで、鑑定で確認するとすぐさま男性の治癒を開始した。
しかし、時間が経ちすぎたのか筋肉の一部がなかなか再生されない。どうしても筋肉が治らないまま傷は塞がっていった。
鑑定を確認すると‘右腕に後遺症’と出た。
それを見て、両親の無事を喜んでいる少年や周りになんと言えば良いのかわからなくなる。
自分の力不足が悔やまれた。
「……マーク。どうしたんだ?」
僕の様子に気付いたのだろう父様が心配した様子で僕の前に屈み込んだ。
「……ごめんなさい。男性の方、損傷してから時間が経ちすぎて、ちゃんと治してあげられなかった。‘こういしょう’が残るって」
俯いていた僕の頭にふいに誰かの手の平が。
驚いて前を向くと父様が優しい顔をしていた。
そして背後から僕に抱き付く誰か。
「ありがとう。本当にありがとう。俺たちを助けてくれて」
涙を流しながらずっと感謝の言葉を言ってくれる少年。
僕は多分お父さんだろう男性を助けれてはないのに。
僕がよっぽど混乱した様子だったんだろう父様が教えてくれた。
普通だったら少年は運が良くて片足を失くす。で、両親は失くなっていた可能性が高かったらしい。
それを少年と母親は一命を取り留めて、父親も右腕麻痺のみで済んだのは凄いことらしい。
僕は張り詰めていた気が揺るんだのか意識が遠ざかる。
周りが騒がしい気がしたが、僕はもう目を開けられなくてそのまま意識を手離した。
古傷なんかは治癒魔法でも治せません。
成功することもあればどうにもならないこともあるということですね。




