ふみつなのなな
そして、上末本町で降りた。
見たことのある改札を通って、見たことのある道を歩いていった。
そして、見たことのある建物に入った。
そこは、自分の住んでいるアパートの隣にある、マンションだった。
僕は、凄く戸惑った。
だって、こんな人が、自分の近くに住んでいたら普通、そうなるよね、かわいいし。
でも、先生は気づいていない様子だった。
階段を登って、マンションの角部屋に入った。
このこと、他の生徒が見ていていたらどう思うのだろう。
「おじゃましま~す。」
「どうぞ〜。」
「ちょっと、そこに座ってて、お茶を出すから。」
「あ、ありがとうございます。」
先生の部屋は、まあまあ整頓されていて、パステルカラーを基調とした優しい雰囲気の部屋だった。
僕は、少し悩んだ結果、隣に住んでいることは話さないことにした。
先生がほうじ茶を出してくれた。
そして、「ちょっとまっててね」と言って、台所で、料理をし始めた。
僕は、ほうじ茶をすすって、先生の家の窓から自分の家を眺めて待っていたが、なんとなく気まずかった。
「先生、手伝いましょうか。」
「大丈夫だよ、せっかく来てもらったんだから。」
「いや〜、でも、なんとなく気まずいので。」
「だったら、このじゃがいもを皮を剥いて、芽も取っておいてくれる?」
「わかりました。」
「全部、剥き終わりました。」
「もう終わったの?速いね。」
「まあ、バイトでやっていますから。ところで、あの、何作っているんですか?」
「今日の献立は、肉じゃがですっ。」
先生は、そう、かわいいドヤ顔で言った。
その後、じゃがいもなどを適当に刻み、鍋に入れた。
「先生、」
「どうしたの?」
「今日、なんで肉じゃがにしたんですか?」
「ん〜、、、なんとなく?」
「なんか、家族みたいですね。」
僕がそう言うと、隣の先生は、少しうつむいて、赤く頬を染めながら、
「うん、そうだね。」
と、少し小声で答えてくれた。