IF~もしも、そしてこれから
【微エロ注意】
主人公が温泉旅館で何も決めれなかったルート。
なお夢落ちです。
目が覚めると鎖が擦れる鈍く耳障りな音が聞こえる……上体を起こして左手にずっと繋がれている手枷を摩るが外れる気配はまるでない。
ベッドから伸びる鎖はそれなりの長さがあるから室内の行動には支障をきたすことはないが、それでも監禁されている事実が俺の心を重くする。
(どうしてこうなってしまったんだ……)
ぼんやりと思い返しても理由はわからない、わかるのはこうなったきっかけの日だけだ。
結局俺は陽花との関係に答えを出せなかった……さんざん矢部先輩や正道さんが背中を押してくれたというのに。
だから陽花を可愛がりながらもキスなどは拒み続けていた……俺なりに妹として愛していたつもりだった。
それがいけなかったのかもしれない、電車通勤する職場に通い帰宅が遅くなった俺に対して反抗期を迎えた陽花は主張が激しくなり……初めて喧嘩をした。
俺が軽く怒ったり、陽花が俺を怒ったりはあった……しかし怒鳴り合いにまで発展したのは初めてだった。
『お兄ちゃんの馬鹿っ!! もう知らないからねっ!!』
『我儘ばっかりいってっ!! 勝手にしろっ!!』
確か最後はこんな感じで終わったはずだ、お互いに部屋へと戻ると俺は仕事に備えて眠りについたのだ……そして目が覚めたらこうなっていた。
怒鳴ろうと喚こうと陽花は一切反応を示さなかった……もう知らないとはどうなっても知らないよという意味だったらしい、それに対して勝手にしろと俺は答えてしまったのだ。
(しかし……まさか本当に監禁までしてくるなんて……)
それからどれだけ過ぎただろう、一カ月までは数えていたがそれからかなり時間がたっている……携帯も取り上げられて連絡手段も何もない以上は打つ手がなかった。
親父か伊代音さんが帰ってくればどうにかなりそうだが、相変わらず仕事が忙しいらしく当面は期待できなそうだ。
俺の仕事のほうはもう首だろう……これからどうすればいいのかまるで見当が付かなかった。
「おはようお兄ちゃん、今日の食事持ってきたよ」
陽花が食事をもって部屋に入ってきた……下着以外何も身に着けていない、俺と同じ格好だった。
学校にも通っていない様子だ、それこそ食事の準備とか最低限しなければいけないこと以外で陽花が俺から離れることはない。
「おはよう陽花……そろそろ手錠外してくれないかな」
「まだそんなこと言ってるの……いい加減あきらめたら?」
鼻で笑った陽花が食事を近くの机に置くと、俺のベッドに腰掛ける……そしてじっと俺の顔を見つめてきた。
「……わかってるよね、お兄ちゃん?」
「わかってるよ……」
陽花の身体に手を回して抱き寄せ、腕の中に納まった陽花にキスをする……こうして陽花を満足させなければ食事は目の前でひっくり返される。
もはや我儘とは言えない、あの日から癇癪持ちになってしまった……だけどこれも反抗期が終わるまでだと信じたい。
「んっ……はぁ……お兄ちゃん、もっと舌絡めて……チュッ……」
当たり前のようにディープキスを堪能する陽花、その手は俺の身体に伸びて敏感な場所をまさぐっている。
もはや一線も超えてしまった今、その程度で興奮はしない……ただ変わってしまった妹が痛々しい。
「んぅ……ふふ、よくできましたぁ……私幸せだよ……お兄ちゃん」
狂気さすら感じさせる笑顔を浮かべて陽花は食事を俺の元へと持ってくる、そしてオカズの一つを指で掴むと俺の口へ差し入れてくる。
「美味しいお兄ちゃん? ほら、私の指先綺麗に舐めとって……じゃないと食べさせてあげないよ……」
しっかりと丹念に食事を舐めとるとようやく陽花は満足げに頷いて、次の一口分を掴んで持ってきてくれる。
この繰り返しで一時間近くかけて食事を終えると、口移しで飲み物を飲ませ合い……絡み合う。
「はぁ……お兄……ちゃぁん……好き……大好き……もう私だけ見てて……」
「ああ……もう陽花しか見えないよ……」
妖艶に微笑んで長く伸びた髪を振り乱して、俺の身体に跨る陽花……せめて言葉で応え手を握る。
俺たちの関係はどうしようもないほどに歪んでしまった……俺が歪ませてしまった。
陽花はいつだってまっすぐぶつかってきてくれていたのに俺が都合よくごまかし続けたから……中途半端に受け入れそして拒んでいたせいで歪になってしまった。
(どうして俺は……ずっとあのままでいられるなんて幻想を抱いていたんだろう……)
夢物語だと分かっていながら、俺はずっとそれを望み……陽花にも強要し続けてしまった。
成長しないよう、変化しないよう……その挙句に抑圧され続けた陽花は反抗期という節目に弾けてしまった。
とても美しく育った陽花、だけどやっぱり俺の眼には痛々しくしか見えない。
(今からでも遅くない……まだ陽花は若いから……何とかしてあげたい……)
頭の中ではそう思っている、だけど身体と心がソレを許してくれない。
陽花のもたらす快楽によって身体は悦び……こんな形とは言え陽花を独占できている事実に心が喜んでいる。
だから拒むことはできない……そして受け入れきることもできない。
本当に俺はどうしようもない人間だ……情けなくて死んでしまいたい。
「んぅっ……ふふ……そういえばお兄ちゃんに…………とてもいい報告があるの……」
「く、ふぅ……何だい陽花?」
一区切りついて俺の身体に抱き着いた陽花に、前のように腕枕をして頭を撫でてやる……この瞬間だけ陽花はかつてと同じ笑顔を浮かべてくれる。
これを見る瞬間だけが今の俺の救いだった……だけど今日の陽花は何やら含みのある言葉を洩らしていて不安で心が騒めいた。
「私ねぇ……こんなもの買ってみたの?」
「それは……?」
「あはは、お兄ちゃん男の人だし私が初めてだったから知らなくても仕方ないよね……これ妊娠検査薬」
「っ!?」
衝撃を隠せない俺の顔を見て、陽花はニタリと嗤った。
「説明書持ってきたほうがよかったかなぁ……まあいいや……こっちに線が浮き出てるでしょ……陽性だってぇ」
「な……」
「毎日そーいうことしてるんだから当然だよねぇ……むしろ遅すぎるぐらいだよねぇ……」
何が可笑しいのだろうか、クスクスと壊れたように笑い声をあげる陽花。
「よ、陽花……そ、それは……不味い……」
「今更何を言ってるの……ふふふ……いい加減覚悟決めてほしいなぁ……」
固まる俺を抱きしめてキスをする……俺の天使はもうどこにもいなくなってしまった。
「これでやっとお兄ちゃんも諦めが付いたよね……私だけのものになってくれるよね……」
「陽花……ごめんな陽花……」
「謝らないでいいよお兄ちゃん……お礼もいらないよ……ただ、私を愛してくれるだけでいいの……ずっとこうしていてくれればいいの……」
またしても俺は間違えたようだ、反抗期だとかなんだとかで自分をごまかして……都合よく陽花に与えられる快楽をむさぼってこの様だ。
どうして早く修正しようとしなかったのだろうか……自己嫌悪で死にたくなる。
だけどどこかで嬉しさも感じている……陽花も俺しか見ていないことに気づけたから。
(もっと早く気づけていたら……)
考えても仕方がない……俺は腕の中で笑顔を浮かべている陽花に自らの意志でキスをするのだった。
目を閉じて真っ暗闇の中、陽花の柔らかい感触だけがして……何故か和服のイメージが頭に浮かんだ。
*****
「うわぁっ!?」
「はにゃぁっ!?」
俺が飛び起きると腕の中にいる陽花もまた焦ったように飛び起きた、互いに顔を見合わせ視線を下におろし……ちゃんと寝間着を着ていることを確認して胸を撫でおろした。
「ゆ、夢かぁ……」
「ゆ、夢かぁ……」
安堵の溜息が重なる、顔を上げると陽花も俺を見て驚いたようだ。
「お、お兄ちゃん……陽花ね、とっても変な夢見たんだけど……」
「陽花もか……お兄ちゃんもだよ……」
「ま、また座敷童さんかなぁ……」
「だろうねぇ……はぁ……」
温泉旅館に泊まって以来、たまにこうして陽花とシンクロする夢を見るのだ……そしてそういう時は大抵夢の中に和服の少女が姿を現す。
(し、しかしなんて夢だ……心臓がやばい……)
恐怖なのか興奮なのかはわからない……だけどどうしようもないぐらい心臓がうごめいている。
「うぅ……お、お兄ちゃん……よ、陽花はあそこまでしないからねぇ……」
「わ、わかってるよ……陽花の反抗期はもっと可愛かったもんねぇ……」
思い返してみても陽花の反抗期は本当に可愛いものだった、四六時中笑顔で俺に張り付いて所かまわずキスをして……こうして思うと大差ないかもしれない。
「だ、だって……お兄ちゃんがちゃんと陽花を見て愛してくれてたから……反抗する理由がなかったんだもん……」
「……そうか」
嬉しいことを言ってくれる、思わず抱きしめてしまう……寝間着越しに胸が触れ合って夢の感触を思い出してしまう。
「お、お、お兄ちゃ……い、今は陽花凄いドキドキしちゃって……」
「あ、ああゴメン……」
「え、えへへ……やっぱり陽花お子様だね……あ、赤ちゃんは羨ましいけど……あ、あんな……恥ずかしいこと耐えられないよぉ……」
真っ赤に火照らせた頬を両手で押さえながら軽く頭を振るう陽花、さらさらと髪の毛が揺れる様が微笑ましい。
「そうだな……お兄ちゃんもあそこまで過激なのは耐えられないなぁ……」
「そうだよぉ……稲子お姉ちゃんや葉月お姉ちゃんには悪いけど……この一年でゆっくり時間をかけて関係を進めようね……」
「うーん、だけど関係を進めるって……どうするんだ?」
「ええとぉ……どうしようかなぁ……あ……っ」
悩む陽花が可愛くて俺は微笑みながら頭を撫でてあげた……それだけで陽花は本当に嬉しそうに笑った。
「えへへ……お兄ちゃん、陽花ねぇ……これだけで幸せさんなの……すごく幸せ……」
「お兄ちゃんもそんな陽花と居られて幸せだよ……大好きだ……」
「うん、陽花もお兄ちゃん大好き……ちゅっ」
唇を触れ合わせるだけの普通のキス……最近はディープキスよりこっちのほうが好きになったようだ。
そんな俺の天使を優しく抱きしめると陽花もまた抱き返してくれる。
「お兄ちゃん……ずっとこうしていようね……」
「ああ、ずっと一緒にいような……」
俺たちは抱き合ったままベッドに横になり、ゆっくりと目を閉じた。
一瞬瞼の裏に和服の少女が浮かび上がった気がして、ドキッとした。
こっちが夢だとしたらとても困る……だけどあっちが現実でも隣に陽花が居てくれる。
そう考えれば致命的な違いはない、俺には最悪陽花だけいてくれればそれでいいのだ。
だから俺は目を開けることもなく安心して眠りにつくのだった。
そして俺は……俺たちは夢を見た
『お兄ちゃーんっ!!』
真っ白いウエディングドレスを着た陽花が俺の元に駆け寄ってくる。
『もぉ、遅いよぉ石生ったらぁ……』
『全く、しっかりしてよね』
その先では同じ格好の稲子と葉月が俺たちを待っている。
『主賓が遅れたらシャレにならないからね、急ごう皆川もみんなも』
『やれやれ……本当に三人相手とか……節操なさすぎだろぉ……』
あきれ顔の戸手夫妻が俺たちの後ろからついてくる。
『おめでとうお姉ちゃん、陽花ちゃん、葉月お姉さん……お兄さん』
スーツ姿の幸人君が涙さえ浮かべてこっちを見ている……携帯にウエディングドレス姿の写真も来た、美人さんだった。
『はぁ……やっぱりこうなったのね……』
疲れ切った表情の伊代音さん、だけど口元は笑っている。
少し離れたところで和服姿の少女が笑っている、顔は良く見えない。
俺は陽花を抱き上げてそんな皆の元へと歩き出した。
とてもいい夢だと思った。
現実にしたいと……心の底から思える夢だった。
歩き出して、俺はあることを思い陽花に向かって口を開いた。
『陽花さんはお幾つですか?』
俺の言葉を聞いて陽花は、とても嬉しそうな笑顔で答えるのだった。
『20歳です……お兄ちゃんのお嫁さんですっ!!』
【読者の皆様に感謝いたします】
これで完全に終了です。
自分でも楽しみながら書き終えました、感想もブックマーク、評価全部嬉しかったです。
誤字報告もとても助かりました。
最後までこの作品にお付き合いいただきありがとうございました。




