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俺がデレデレな可愛い義妹

「じゃあここでお別れね……」


「うぅ……もっと遊ぼうよぉ……」


「ま、また今度でいいだろぉ……」


「あはは……僕も詩里香先輩を送らないといけないからね……」


「ざんねんですぅ、でもたのしかったですよ」


「じゃあね~とでおにいちゃんもひとみおねえちゃんもまたあそぼーねーっ!!」


 駅前で戸手さんが笑顔で別れを告げ、人見先輩と共に去って行った。


「さて、私たちもそろそろ帰りましょうか……何だかんだで疲れたわ……」


「明日から学校だからねぇ……はぁ、現実に帰ってきちゃったぁ……」


「ああ、そうだなぁ……陽花と幸人君も幼稚園だしなぁ……」


「そうですね、はやくかえってじゅんびします」


「だいじょうぶだよぉ……せんせーならきっとわすれものしてもゆるしてくれるよ、だからもっとあそぼうよぉっ!!」


 陽花が幸人君の手を引いて歩き出してしまう……地元に戻って来たもんだから活動的になってるな


「ああもぉ……ちょっと待ちなさい二人ともぉっ!!」


 葉月さんが追いかけて行った、俺も後を追おうとして後ろから稲子さんに呼び止められた。


「私、こっちだから……明日の支度もあるし先に帰るね」


「わかりました……今回は付き合ってくれてありがとうございました、楽しかったですよ……いずれお礼はしますから」


「もぉ、そんなのいいのにぃ……私も楽しかったから……あ、でも……せっかくだし一つだけいいかなぁ?」


 稲子さんがゆっくりと近づいてきて、周りを見回して……ほくそ笑んだ。


「な、何を企んで……っ!?」


「石生君……だいすき……ちゅっ」


 軽く唇同士を触れさせるだけの、本当に刹那の口づけ。


「い、稲子さんっ!?」


「え、えへへ……人見さんの話聞いたらちょっと盛り上がっちゃってぇ……この先はちゃんと石生君が答えだすまで我慢するから安心してね」


「……答えなら出しました、俺は大人になった陽花の望むとおりにしてあげます……本当に望んだとおりに……」


「おおっ!? いい答えだねぇ……やっぱり今の内にキスしといてよかったぁ」


 稲子さんは嬉しそうに微笑んで、俺から身を離した。


「じゃあ続きは陽花お姉さまが大きくなってからだねぇ……期待してるからね、石生君っ!!」


「まあ陽花次第ですけど……こんなヘタレな俺でよければ待っていてください」


「もちろんだよーっ!! じゃあ、また明日ねぇ~っ!!」


 子供のように両手を振って、稲子さんは走り去っていった。


 俺は唇に残る、稲子さんの感触に少しの間酔いしれることにした。


「石生様……どうしたのよ、呆けて?」


「あ、いや……あの二人は?」


「近くの公園で遊んでるわ……あれ、稲子先輩は?」


「先に帰るって……それよりあんな可愛い二人組誘拐されないか心配だっ!! 急ごうっ!!」


「……やれやれ」


 俺の言葉に呆れた様子を見せながらもきちんと後をついてくる葉月さん……当たり前のことを言っただけなのに呆れられるなんてひどい。


「わーいっ!! ゆきとくんこっちこっちぃっ!!」


「ようかちゃんまってぇ~っ!!」


 公園内を駆け回って追いかけっこしている陽花と幸人君……こ、転んだりしないだろうかっ!?


 不安で仕方ないが二人とも本当に楽しそうに笑っているので止めるに止めれない……次からは公園は立ち入り禁止にしよう。


「そんなに心配そうに見ないの……全く、石生様は私以上のロリショタコンねぇ……過保護過ぎよ」


「い、いや常識的な範疇だって……ああ、危ないっ!?」


「あれぐらいの歳の子は多少転んだって頭さえ打たなきゃ平気よ……せっかく子供同士で遊んでるのに邪魔しちゃ駄目よ」


「うぅ……陽花ぁ、幸人君……」


 葉月さんのパワーに逆らえるはずもなく、引かれるままに公園内を見通せるベンチに座って二人を見守ることにした。


「本当に楽しそうね……今回の旅行もずっと楽しそうだったし、石生様が誘ってくれたおかげよ」


「……いや、葉月さんが皆を招待してくれたからこそここまで楽しめたんだ……本当にありがとな」


「いいのよ、私も楽しかったから……本当に楽しかったぁ」


 心の底から嬉しそうに微笑む葉月さん……俺も自然と笑顔になっていた。


「これからもこんな日々が続くといいのに……ううん、続けていきたいわ……」


「俺も同じです……ずっとこうしていたい、陽花とも……皆とも……」


「そうねぇ……だけど私はもう少しだけ先に進みたいわぁ……」


 そう言って俺をじっと見つめる葉月さん……先ほどの稲子さんのせいでどうしても唇に意識が向いてしまう。


「もう少し先って……?」


「わかってるでしょ……戸手君と人見さんほどとは言わないけど……その手前ぐらいまでは……ね……」


 そっと顔を近づけてくる葉月さん……俺はあえて抵抗しようとは思わなかった。


「……ちゅっ」


 やはり軽く、唇同士が触れ合う。


「ふふ……やっぱりいいわねぇ、好きな人とキスするのって……陽花ちゃんお姉さまがしたがるわけだわぁ……」


「……まあ、いいものだよ……本当に」


「うん……素敵だわ……この先の関係なんかもっと素敵なんでしょうねぇ」

 

「それは……まだ、駄目だから」

 

 俺の返事に葉月さんはゆっくりと頷いて見せた。


「わかってるわ、ちゃんと陽花ちゃんお姉さまの成長を待つけど……ふふ、だけど『まだ』ってことは期待してもいいのよね……?」


「全部陽花次第だけど……そして、こんなヘタレな俺を葉月さんが好きでいてくれるなら……だけど……」

 

「当たり前よ……多分……ううん、絶対に私の気持ちが変わることはないわ……キスだけでこんなに幸せなんですもの……」


 軽く自分の唇をなぞり、愛おしそうにその手を胸元に抱え込んだ葉月さん。


「わわぁっ!?」


「ゆ、ゆきとくんっ!?」


「幸人君っ!?」


「あららぁ~転んじゃったのねぇ……」


 子供の悲鳴に目を向けると、幸人君が思いっきり転んでしまっていた……ああ、俺の宝物がぁっ!?


 近寄って傷を確認するとあの麗しく汚れ一つない珠玉のごとし神々しさを放つ幸人君のお肌に擦り傷が付いてしまっていた。


「だ、だ、大丈夫幸人君っ!?」


「いてて……だ、だいじょうぶですぅ……うぅ……ぼ、ぼくなきません……ぐすぅ……」


「ご、ごめんねゆきとくんっ!? ち、ちがでてるよぉっ!?」


「ただの擦り傷よ、二人とも大げさなんだから……あっちの水道で洗って今日はもう帰りましょう」


 公園の水道で傷口を軽く洗うと、葉月さんは幸人君を抱え上げた……ああ、消毒液と絆創膏と包帯を持ち歩くべきだったぁ。


「じゃあ、私たちも帰るわね……また明日ね」


「うぅ……さ、さよならですぅ……ようかちゃんまたあしたぁ……」


「ばいばいゆきとくんっ!! またあしたねっ!! きをつけてねっ!!」


「ほ、本当にお大事にね幸人君っ!? 葉月さんも後をよろしくねっ!! じゃあ……また明日……」

 

 手を振って二人と別れる……陽花と二人きりになってしまった。


「お兄ちゃん……だっこしてぇ」


「わかってるよ……」


 陽花を抱きかかえて、その感触を確認するようにしっかりと抱きしめる。


「みんなであそぶとたのしいけど……おわっちゃうとさみしいねぇ……」


「ああ、本当に寂しいなぁ……陽花がここに居てくれて助かるよ……」


「うん、陽花もお兄ちゃんがいてくれるからだいじょうぶ……がまんできるよ……」


 陽花が俺の胸元に顔をうずめる……本当にこの温もりがありがたい。


「……帰ろうか、お家に?」


「うん、陽花お兄ちゃんといっしょにかえるぅ」


 陽花を抱っこしたまま、俺は懐かしさすら感じる家に向かった。


「ただいまぁ……なんか久しぶりな気もするなぁ」


「ただいま……ほんとうだねぇ、ふしぎぃ」


 部屋に荷物を置いて手洗いうがいを済ませて……自然と俺たちはベッドで横になっていた。


「なぁんか疲れたなぁ……やっぱり新幹線で移動したからかなぁ」


「陽花もへとへとぉ……きょうはもうねちゃおうか?」


「だけどご飯さん食べないと夜中に目が覚めちゃうぞぉ~」


「そうしたらそのときたべればいいんだよぉ~、だからもう陽花といっしょにおねんねしちゃお?」


 可愛らしく小首をかしげた陽花、俺は逆らう気にもなれず布団に潜り込んで腕枕をしてあげた。


「そうだな、もう寝ちゃおう……一緒にね」


「わーいっ!! お兄ちゃんだいすき、ちゅーっ!!」


 陽花が唇を突き出す……俺は軽く唇を重ねた。


「お、お兄ちゃんっ!? きょうはだいさーびすさんだねぇっ!! どうしたのっ!?」


「お兄ちゃん陽花のことが大好き過ぎて……どうも逆らえなくなっちゃったらしい……」


「えぇ~っ!? もぉ、お兄ちゃんついに陽花にメロメロになっちゃったのぉ~えへへ~……」


「そうだよ……もうどうしようもなく陽花が大好きでたまらないんだ……」


 ぎゅっと陽花を抱きしめる、柔らかくて暖かくていい匂いがする……俺の世界で一番大切な陽花。


「陽花もね、陽花もお兄ちゃんがだいすきだよっ!! ちゅっ!!」


 今度は陽花から唇を重ねてきた……もう何度目になるか分からない口づけだ。


「これでこいびとどうしだねぇ……えへへ、これでおくちさんにちゅーもしほうだいだねぇ……」


「それなんだけどなぁ……お兄ちゃん陽花が大切過ぎるから……陽花が大人になるまで今の関係でいたいんだ……駄目かなぁ?」


「えぇ~せっかくあいしあってるのにぃ~……どうしてぇ?」


「お兄ちゃんがヘタレだからだよ……せめて後十年時間が欲しいんだ……それまでは兄妹でいてほしい……」


 それが俺の出した結論だ……陽花が色んなことを身に着けるまで……兄として守ってあげたい。


 そして知識を身に着けたうえで恋人になることを望むなら……叶えてあげたい。


(ずっと笑顔でいてほしい……俺との関係がどうであれ、陽花に笑っていてほしいんだ……)


 簡単な答え、最初からずっと出ていた答え。


「ぶぅ……お兄ちゃんったらなさけないんだからぁ」


「ごめんな……情けないお兄ちゃんで……」


「もぉ、そんなヘタレじゃぁおんなのこにはもてないんだよぉ……陽花がとくべつなんだからねっ!!」


 そう言いながらも陽花は満面の笑みで……俺の望んだとおり幸せそうな笑顔を浮かべていた。


「陽花はお兄ちゃんにメロメロだから……とくべつにみとめちゃいますっ!!」

 

「ありがとう陽花……世界で一番大切な……愛してる……俺の陽花……」


「でもじゅうねんたったら……ぜったいにこいびとになるんだからねっ!! やくそくだよっ!!」


「ああ、約束するよ……陽花がソレを望むならお兄ちゃんは……喜んで受け入れるよ」


 俺の言葉を受けて陽花は本当に嬉しそうにしながら……顔を寄せてくるのだった。


 俺は目を閉じて、陽花の好意を受け入れることにした。


「えへへ……陽花もね、お兄ちゃんがせかいでいちばんだいすきぃっ!! あいしてるぅっ!! ちゅっ!!」 


 口元が何かに触れる心地、鼻にはとても清涼感溢れるけどどこかミルクのような甘ったるい匂いが入ってくる。


 俺はそんな愛おしい存在を力いっぱい抱きしめるのだった。

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