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最後の騒動

「ふぁぁ……もう朝か……」


「すぅ……すぴー……お兄ちゃぁん……もっとちゅぅ……えへへぇ……すぅ……」


 目を覚ますと陽花が俺の腕に何度も吸い付いている……腕に吸盤が吸い付いたような跡がたくさんついてしまっている。


 困ったものだと思うが、それ以上に愛おしい……本当に俺は陽花にメロメロだ。


「ほら、起きろ陽花」


「んにゃぁ……にぃ……ちゅぅ……するぅ……」


「わかったよ……ほら、ちゅっ……」


 おでこに軽くキスをしてやる、陽花は寝ぼけながらも嬉しそうにしている。


「えへへぇ……もっとぉ……すぅ……」


「ほら、早く起きて朝食に行こう……ちゅっ……」


 今度はほっぺたにしてやる、やっぱりくすぐったそうに微笑んでいる。


「にゃぁ……えへ……むにゃ……」


「はぁ、困った子だ……よっと……」


 これで起きなかったら仕方がない、俺は陽花を抱きかかえて部屋を出ることにした。


 流石に口にキスまではしない……陽花が望むなら応えようとは思うが。


「ふぁぁ……うぅ……石生君、おはぁぁ……」


「大きな欠伸……それに寝ぐせも酷い……どうしたんですか稲子さん?」


「それが稲子先輩、結局興奮しきって夜中まで寝ないではしゃいでたのよぉ……ふぁぁ……私も付き合わされて眠いわぁ……」


「おにいふぁ……ごめんなさい、あくびしてしまいましたぁぁ……あうぅ……」


 隣の部屋から出てきた三人が大きな欠伸をしている……稲子さんは本当に困った人だ。


「全く……帰りの支度は出来てるんでしょうね?」


「それぐらいは終わってるよぉ……ふあぁ……うぅ、先に朝風呂浴びて目を覚まそうかなぁ……」


「それいいかも……ちょっと眠すぎるわ……」


「お風呂で寝ないでくださいよ……でも確かにせっかくだし幸人君も行こうか?」


「わかったですぅ……みずあびしてめをしゃきっとさましますぅ……」


「むにゃ……陽花……すぴー……」


 眠り切っている陽花を抱いたまま、お着替えとタオルだけ準備して風呂場へと向かった。


「ふぁぁ……あれ、戸手君に人見さんだぁ……おはよぉ……」


「ふぁっ!? な、何で何で何でお前らっ!?」


「あ、あはは……ど、どうしたのかな皆?」


「いやせっかくだから帰る前に朝風呂でもと思って……お前らもだろ?」


 何やら焦った様子でこっちを見ている戸手と背負われた人見先輩……どうしたのだろうか。


「な、なら先に朝ごはん食べてきたほうがいいと思うよ……後で帰る前に合流しようよ……」


「そ、そ、そうだそうだっ!! い、一緒に行動する必要なんかないぞぉっ!! あっちいけぇっ!!」


「えぇ~せっかく仲良くなれたのにそう言うこと言わないでよぉ~……ほら行こうよぉ」

 

「そうよ、どうしたの二人とも……せっかくだし一緒にお風呂入りましょうよ」


「そうだぞ戸手、どうせならお風呂も朝食も一緒に行動しようぜ」


「そうですよぉとでおにいさん、いっしょにはいりましょうよぉ?」


「んにゃぁ……あれぇ……みんなおふろぉ……いっしょにはいるぅ……」


「え、ええと……その……はぁ……ど、どうします詩里香先輩?」


「ど、ど、どうって……うぅ……戸手の馬鹿馬鹿馬鹿ぁっ!!」


 何故か暴れる人見先輩に、殴られっぱなしで申し訳なさそうにしている戸手。


「な、何よ……何か気に障ることしちゃったかしら?」


「そ、そうだよぉ……何かあるなら言ってよぉ?」


「と、戸手……俺らに不満でもあるのか?」


「ち、違うんだ……違うんだけど……はぁ……ごめん詩里香先輩……時間が無くなるし、もうあきらめましょう……」


「うぅうううっ!! お、覚えてろよぉっ!!」


 怒りながら人見先輩が戸手から降りて……がに股で歩き出した。


 まるで脚の付け根に違和感でも感じているようであり、しかも時折痛むかのように顔をしかめている。


(おい……おいおい……おいおいおいぃいいっ!?)


 俺たちが戸手へ視線を移すと、恥ずかしそうに申し訳なさそうに顔を真っ赤に染めてうつむいている。


「え、えっとぉ……肩貸しましょうか人見先輩……大先輩様ぁ……」


「う、うん肩貸してあげるからちょっとお話聞かせてぇ、人見大先生っ!!」


「う、うるさいうるさいうるさいぃいいいいっ!!」


「はにゃぁ……うるさいよぉ……」


 同じく顔を真っ赤にした稲子さんと葉月さんから尊敬の眼差しを受けながら人見先輩は更衣室へと入って行った……後ろから何も知らない陽花がふらふらとついて行った。


「な、なあ戸手君……いや戸手さん……その……ねぇ……」


「あ、あはは……だ、だってほら、恋人同士で同じ部屋で寝泊まりして……しかもあの馬鹿興奮して眠れないとかで人の布団に入ってきて……その……良い匂いだったし……柔らかかったし……可愛かったし……だから……あはは……はは……はぁ……」


「いっしょにねたんですねぇ、ぼくもお姉ちゃんやおにいさんといっしょにねるときもちいいですからよくわかりますぅ」


「うっ!?」


「はぅっ!?」


 無邪気な幸人君の言葉が俺たちに突き刺さる……その言い方は不味いよ幸人くぅん。


「……と、とにかく俺たちも風呂入ろう……頭冷やそうな?」


「わ、わかったよ……あぁ……僕は……うぅ……流石に詩里香先輩に申し訳ないよ……」


(俺も結構な決心を固めたつもりだったけど……やっぱり戸手さんには敵わないなぁ……)


 俺は眩しいものを拝むぐらいのつもりで戸手さんと一緒にお風呂へ向かった。


 シャワーを浴びて軽く身体を流して……幸人君にセクハラする気力もなくそのまま露天風呂に向かった。


「お、お兄さん……あの、いつものあらいかたはしないんですかぁ……?」


 もじもじしながら聞いてくる幸人君、可愛すぎるから今は止めてほしい。


「きょ、今日は時間が無いからねぇ……ほら、抱っこしてあげるから……」


「は、はいですぅ……ま、またこんどおねがいしますねぇ……」


「か、考えておきますぅ……はぁ……ここが空いてるなぁ」


「ふ、ふぅ……はぁ……うぅ……僕はなんてことをしてしまったんだろう……」


 湯船につかりながら落ち込んでる戸手さん……だけど表情はにやけっぱなしだ。


 何だかんだ先ほどの人見先輩の態度を見ても恥ずかしがってはいたが嫌っている様子はなかった。


(ば、バカップルめぇ……コメントしづらいことしやがってぇ……)


 絡みにくくてたまらない……せめて帰るまで我慢できなかったのか。


「おふろぉ~っ!! 陽花のかしきり~っ!!」


 壁の向こうから陽花の嬉しそうにはしゃぐ声が聞こえた……お客さんが居ないからって泳いじゃ駄目だよぉ。


「そ、それで……い、痛みは……?」


「ど、どれぐらい時間を……?」


「だ、だから……その……」


 次いでやって来たらしい三人の、怪しいトークが途切れ途切れに聞こえてくる……興味津々だし話す気満々だぁ。


「よ、陽花ぁっ!! お、泳ぐのは駄目だぞぉ~っ!!」


 周りに客が居ないことをいいことに、大声でワザと注意してみる……これで声が届いてるって分かっただろ。


「お兄ちゃーん、おふろかしきりだよーっ!! いっしょにはいろっかぁっ!!」


「だめですぅーっ!! いいからちゃんと肩まで入って温まりなさいーっ!!」


 普通のやり取りにほっとした、そして女性三人の声が聞こえなくなって安堵した。


「……から……な……っ!?」


「え……んなに…………っ!?」


「すご……………で…………っ!?」


 声を抑えただけで会話自体は止まっていないらしい……お願いだから陽花に聞こえるようにだけはしないでください。


(意外にこういうのって女子のほうが明け透けなのかなぁ……)


 こっちはどうにも聞きづらい……知り合いの女の子が相手だと思うとなおさらだ。


「はぁ……でもまあ詩里香先輩が機嫌損ねてなくてよかったよ……」


「ラブラブだなぁ……万が一の時は責任取れよ……」


「傷物にしちゃったからねぇ……もちろんそのつもりだけど……収入も最悪はオカルト部の依頼をまた引き受ければいけるだろうし……」


 ぶつぶつ考え出す戸手さん、本当に真面目に考えているようだ。


「けがさせちゃったんですかぁ……だめですよ、ちゃんとあやまっててあてしてあげなきゃ」


 やっぱり可愛い幸人君、なでなでしてあげちゃおう。


「うん、わかってるよ……ちゃんとするから安心してね幸人君」


 戸手さんも癒されたようで幸人君をナデナデしてあげている。


「えへへ……しあわせですぅ……」


 嬉しそうな幸人君、俺もその姿を見てるだけで幸せだよ。


 しかしチェックアウトが迫ってるため長湯することもなく、俺たちはお風呂から出て食事処に向かった。


 そして席を取って待つこと十数分、ようやく女性陣が姿を現した。


「お兄ちゃん……あのさんにんへんなことばっかりはなしてるのぉ……」


「陽花には関係ないことだからねぇ……ほら抱っこしてあげるから忘れなさい……」


「お、お帰り詩里香先輩……ほ、ほらこっちにきて……」


「し、しばらくお前は私に接触禁止ぃっ!!」


 顔を真っ赤にして言い切った人見先輩が少し離れたところに座り、その両隣を稲子さんと葉月さんが座った。


「わ、私たちもここで……それで続きは……?」


「そ、そうだよこっちでいいよぉ……か、感触はどうだったのぉ……?」


 二人とも露骨に興味津々という感じで人見先輩に絡み、時折俺の方を見て顔を火照らせてはそらしている。


(何を考えてるんだあいつらぁ……やっぱり陽花と幸人君が一番だ、はっきりわかったぁ)


「お兄ちゃん、ごはんたべさせてぇ~」


「ふふ、陽花はいい子だなぁ……はい、あーんしてぇ」


「うぅ……詩里香先輩……ゆ、幸人君食べさせてあげようか?」


「ぼくはひとりでたべれますぅ……もぐもぐ……」


 嫉妬させようとしたのか幸人君の懐柔に走った戸手さんは、あっさり断れて凹んでいた。


 そんなこんなで俺たちは旅の最後まで騒がしいひと時を過ごしたのだった。

 【読者の皆様にお願いがあります】



 この作品を読んでいただきありがとうございます。

 

 少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。


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 作者は単純なのでとても喜びます。

 

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