旅館で夕食
「うぅ……しくしく……」
「あはは……ずっと泣いてるけどどうしたの皆川……それに正道さんも矢部先輩も妙に顔赤いし……」
「ま、ま、ま、まままままさかまさかまさかぁっ!? こ、こ、子供の前でお前らぁあああっ!?」
「ち、違うわよ……ちょ、ちょっとその……稲子先輩が暴走してその……あ、あんな大きいなんて……」
「え、えへへ……じ、実物はすごいんだねぇ……ほ、本当に入るのかなぁ……」
「とでおにいさんあのね、やべおねえさんがおにいさんのたおるをとっちゃって……みんなのまえで……ぼくもみちゃったですぅ」
「な、なんか陽花もどきどきしちゃったぁ……へんなかんじぃ……」
もう二度と家族風呂には入らない……絶対にだ。
「あはは……ああ、その……災難だったね皆川……」
「うぅ……戸手ぇ、ナデナデしてくれぇ……」
「……そ、そんなにで、デカいのか男の……それって……?」
「そ、それがですね人見先輩……大体このぐらい……」
「はいそこ、こそこそ話さないぃいいいっ!!」
女性陣の話を強引に断ち切る……もう勘弁してくれぇ。
「まあまあ……皆、皆川が嫌がってるからそれぐらいにしておこうよ……それより夕食を食べてしまおうよ」
「そ、それもそうね……はぁ……」
「うふふ……家族風呂っていいねぇ……」
「おにいさん、いいこいいこ……よしよし……ナデナデ……」
「幸人くぅん……うぅ……」
「お兄ちゃぁん、それより陽花おなかへったぁ……はやくだっこしておせきにすわろ?」
可愛らしく俺を見上げる陽花、わかってますよぉ。
俺が陽花を抱き上げて座敷に座ると、両隣に稲子さんと葉月さんが座った。
「な、何ですかぁ……?」
「い、いやほら流石に恥ずかしい思いさせちゃったしお詫びしようと思って……ね」
「そおそぉ……食べさせてあげるよぉ……あーんしてぇ」
「一人で食べれるよぉ……あぁ、両腕を取らないでぇっ!!」
左手を稲子さんに、右手を葉月さんに絡めとられる。
(ひ、左手が谷間に……これじゃ動かせないっ!? み、右手は……力の差がありすぎて欠片も動かせないっ!?)
完全に固められた、しかしこれでは向こうも手が使えないから俺にご飯を食べさせようがないはずだ。
「ほら、幸人……食べさせてあげて」
「陽花お姉さまぁ、今のうちに食べさせてあげてぇ」
「え……いいんですかっ!?」
素晴らしい、極楽だ。
「わかりました、おにいさん……あーんですぅ」
俺は素直に口を開けることにした……幸人君が拙い箸使いで俺のお口にご飯を運んでくれる。
「もぐもぐ……はぁぁ……幸せぇええっ!!」
「お兄ちゃん……んんぅ~」
陽花がお口におかずを半分含んだ状態で口を近づけてくる……口移しとかどこで覚えたぁっ!?
「よ、陽花それは……んぐぅっ!?」
「んんぅ……えへへ、おいしかったぁ?」
「そ、それは……美味しいけどこの食べさせ方は禁止ぃっ!!」
「よ、陽花ちゃんお姉さまぁあっ!! 葉月にも同じ食べさせ方させ……むぐぅっ!?」
「はづきおねーちゃんはふつうのたべかたでがまんしてねー……はい、あーんっ」
「やべおねえさんもたべさせてあげます、はいあーんしてください」
「うわーい、幸人君だいすきぃ……あーん、もぐもぐ……おいしーっ!!」
子供たちが一生懸命俺たちのお口にご飯を運んでくれる……口移しはともかく、幸せだなぁ。
「……戸手ぇ、お願いだから違う席に座ってぇええ」
「あはは……それより僕にも食べさせてほしいなぁ……あー……んぐっ!?」
戸手の口内に人見先輩が調味料を直接流し込んだ……目を白黒させながら飲み干している。
「変なこと言うな馬鹿ぁっ!! いいからあっちの席行くぞっ!!」
「んぐぅ……がぁ……お、お前何考えてんだっ!! し、死ぬかと思ったぞっ!!」
「そっくりそのまま返してやる馬ぁああ鹿っ!! 何考えて口開いてんだお前ぇええっ!?」
「自分がやったこと考えてから言えこの馬鹿っ!! 流石にやばかったぞっ!!」
向こうは向こうで前のようなノリで罵り合ってる……けどまあ、離れようとしてないから痴話げんかの類だろう。
「恥ずかしいわねぇ……あーん、もぐもぐ……」
「恥ずかしいねぇ……あーん、もぐもぐ……」
「恥ずかしいなぁ……あーん、もぐもぐ……」
「「お前らが言うなぁあっ!!」」
戸手が人見先輩と一緒に怒鳴った……早速戸手ったら変な影響受けてるなぁ。
「でも、おもしろいですねぇみんな……もうすこしでおわりなんですよねぇ」
「そうだよねぇ、きょうおとまりしたらあしたはおかえりなんだよね……陽花ちょっとさみしい……」
「……大丈夫よ、また皆で来ればいいのよ」
「そうだよぉ、私頑張って時間作るから一緒に来ようよぉ」
「……そうですね、来たいですね皆で」
心の底からそう思う……だけど本当にこれるだろうか。
受験が始まる人見先輩、就職活動しないといけない稲子さん……二人が落ち着くころにもう一度行けるだろうか。
その次の年は俺も葉月さんも戸手も受験生、陽花と幸人君は小学生になる。
この二人ならきっと友好関係も広がるだろう……俺たちの相手なんかしてくれるだろうか。
「うん、やくそくだよぉっ!!」
「うん、またきたいですっ!!」
子供二人が無邪気で頷いている……本当にこんな時間が続けばいいのに。
「その時は違う場所でもいいかもね……スキー旅館だとか海が近いホテルとかも面白そうだし……」
「……まあ、時間が出来れば付き合ってやってもいいけど……」
戸手も人見先輩も何だかんだで乗り気だ……本当にもう一回、いや何度でもみんなで遊びに行きたいと思った。
「その時は毎日家族風呂に入ろうねっ!!」
「も、もう絶対嫌ですぅううっ!!」
稲子さんの言葉に俺は悲鳴を上げた。
「こ、今度は石生様に私たちのを見せてあげるから……ね」
「嫌ぁあああああっ!!」
葉月さんの言葉に俺は悲鳴を上げる。
「でもみんなではいるのたのしかったですよぉ」
「そおだよぉ、はずかしいけど……わがままいわないでいっしょにはいろーねお兄ちゃん」
「うぅ……嫌なものは嫌だもん……」
陽花と幸人君にまで諭されて、俺は力なく涙を零すのだった。
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