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新幹線でしりとりゲーム

「皆川様ぁ~こっちこっちぃ」


「本当にいいのか、指定席って高いだろうに……」


「一緒に居られるほうが価値があるのよ、ほらそっちの席をひっくり返して……とりあえず幸人も私の膝の上に座りなさい」


 正道さんの指示に従い、俺たちは新幹線の指定席へと腰を下ろした。


 四人席で向かい合い、子供は保護者の膝の上に座っている。


「陽花まどぎわがいいっ!! おそとみたいっ!!」


「わかったわかった、じゃあ俺は奥に座りますね」


「じゃあ私は皆川君の隣に座るねぇ」


「私も幸人が陽花ちゃんお姉さまと向き合えるよう窓際に座るわ……残った席は荷物置き場にしておくわ」


 誰も座らない席に手荷物を置く……もちろんこの席も購入してある、幸人君が陽花が眠たくなったら座らせる予定だ。


 戸手は現地で集合する予定なのでこの場にはいない……居たらもっと楽しかっただろうになぁ。


(いや、人見先輩のせいでグダグダになってたかなぁ……あの人は絶対騒ぐだろうし……)


「陽花、他のお客さんもいるからあんまり大声は出さないようになぁ……ふぁぁぁっ」


「あら大欠伸ねぇ皆川様たらぁ、昨日は緊張しすぎて眠れなかったのかしらぁ……ふぁぁぁっ」


「全くぅ葉月ちゃんだって欠伸しちゃってぇ、ちゃんと寝なきゃダメ……ふぁぁぁっ」


 どうやら保護者組は誰も眠れなかったようだ……俺は陽花の寝顔が可愛くて寝れなかったんだけどな。


「まったくぅ、せっかくはやくおふとんにはいったのにわるいお兄ちゃんだなぁ」


「うぅ……すみません、できるだけ起きておきますので……」


「お姉ちゃんもぼくといっしょにおふとんにはいったのに……ちゃんとなでなでしてあげるべきでしたね、ごめんなさい」


「うぅ……幸人は悪くないわぁ、私も寝ないよう頑張るからぁ……」


「私も頑張ろうっとぉ、じゃあ目覚めの為に最近手に入れた本を朗読してあげるね……『お兄さんは狼男っ!? 欲情の蜜げぇっ!?」


 とりあえず矢部先輩の頭を叩いて本を取り上げる……前に戸手が言っていた魔本の写本らしい。


「いつの間に手に入れてたんですか……没収です」


「えぇ~、せっかくみんなで読みたいから今日まで我慢してたのにぃっ!!」


「陽花はおおかみおとこがでてくるホラーはきらいぃっ!!」


「ぼ、ぼくもホラーはあんまりすきじゃないですぅ」


 子供二人の脅えが可愛い、天使だなぁ……癒されるわぁ。


「あはは……じゃあ何か別のことをしましょう、例えば陽花ちゃんお姉さまとすりすりちゅば……じょ、冗談よぉ」


「お願いだから車内で暴力を使わせないでください……何か健全な遊びをしましょう」


「でもこの向きだと机が使えないから……難しいねぇ、案外」


「一応トランプとか持ってきたけど……確かに難しいわぁ」

 

「はーいっ!! 陽花ねぇ、しりとりしたいっ!!」


 中々アナログな遊びが出てきたものだ……でもやることも無いから付き合おう。


「じゃあやってみるか……まずは陽花がしりとりの『り』からだ」


「ええとねぇ、『りんげつ』っ!!」


「よ、陽花ぁっ!? ど、どこでそんな言葉覚えたのっ!? というか意味わかってるのっ!?」


「まえにようちえんのせんせいがおしえてくれたんですよ、ふうふせいかつをながつづきさせるだいじなようそだっていってました」


(俺の陽花に変なことを教えてたのは先生かぁあああっ!! 幼稚園変えたいぃいいっ!!)


 次会った時にしっかりと説教しておこう……俺の天使を汚しやがってぇええっ!!


「お兄ちゃん、いつか陽花ともりんげつになろうねぇ」


「あ、あはは……次は俺だなぁ『つ』……『疲れた』……」


「それ有なの? 単語縛りのほうがいいと思うのだけど、まあお遊びだしいいか……『た』ねぇ……『体液』」


 一体どういう意味で言っているのだろうか……考えないようにしよう。


「『き』ですかぁ……ええとぉ、『キリン……ソウ』……あ、あぶなかったですぅ」


「幸人君よくキリンソウなんて知ってるねぇ『う』……『ウインナー』……ウインナー?」


 俺の下半身を見て首を傾げる矢部先輩……怒りますよ。


「『ナー』はむずかしいよぉ……ええとぉ、『ナース』さん……お兄ちゃん好き?」


「病院は嫌いですぅ……『す』ねぇ……じゃあ『酢』」


「ああ、それずるいわよ……そういう皆川様は『好き』よ」


 しりとりに託けて何てことを言うんだ……少しドキッとしてしまったじゃないかぁ。


「きゃーっ!! 葉月ちゃん大胆ーっ!! もちろん私も皆川君好きだよーっ!!」


「陽花もぉっ!! 陽花もお兄ちゃん大好きーっ!!」


「ぼ、ぼくもおにいさんのことすきですよぉ……だ、だけどあんまりからだをさわられるとぼく……ぽっ」


 一気に騒がしくなった……幸人君の反応が可愛らしい、もっとお風呂で弄ってあげよう。


「分かったから、俺もみんなのこと大好きですから……ほら幸人君『き』だよ?」


「ま、また『き』ですかぁ……ええとぉ『きんぎょ』……やべおねえさんむずかしくてごめんねぇ」

 

「全然いいよぉ、皆川君と違って木って言わないだけ良い子だよぉ……『ぎょ』ねぇ……『漁色(ぎょしょく)』……ね、皆川君」


 さっきから矢部先輩は俺に何を言いたいのだろう……俺は別に魚が主食じゃありませんよ。


「ええと、『く』ですね……『苦しい』……はぁ……」

 

「お兄ちゃん、もっとあかるいことばをつかおうよぉ……『い』でしょぉ……『いもうと』っ!! お兄ちゃんのいもうとっ!!」


 俺は陽花の頭を撫でてあげる……そう俺の義妹だ、宝物だ。


「私も陽花ちゃんお姉さまの義妹よぉっ!!『と』……『トリップ』……み、短い旅行っていう意味もあるのよ……本当よぉ」


「うぅ……『ぷ』ですかぁ……『プリン……ト』……かみのことこういいますよね?」


「うんうん、幸人君は賢い子だねぇ……よしよし、『と』ねぇ……『盗撮』……してもいいんだよ、皆川君なら」


「余り変な単語を口にしないでください……『つ』ですよねぇ……『辛い』……うぅ……」


 どうしても日々思っていることが口に出てしまう……いや本当に辛いっす、楽しいけど。


「お兄ちゃんたらぁ陽花がいっしょなのにつらいわけないでしょ……『い』……『いちゅうのひと』……お兄ちゃんいいちゅーのひとぉっ!!」


 意中の人ってそういう意味だっただろうか……少なくとも陽花は心中に秘めてないからそっちで正解なのかなぁ。


「私の意中の人も目の前にいるわよ……また『と』……『トロトロ』……溶けちゃいそ……わ、わかったわよ悪かったわよぉ」


 俺を見ていったのか陽花を見ていったのかわからないが……際どい発言禁止ですぅ。


「『ろ』……む、むずかしいですぅ……あ、『ロボット』……えへへ……おもいつきましたぁ」


 幸人君は一々可愛すぎる……誰かしらに答えるたびに頭をなでなでされている。


「うぅ、私もまた『と』かぁ……『年上』……お姉さんにいつでも甘えていいからねぇ」


 胸を張らないで、揺らさないで……そのうえでその発言は物凄く魅力的なんですからね。


「はいはい……『え』ねぇ……『エンジェル』……陽花と幸人君のためにある言葉だな、うん」


(おかしいなぁ、誰も賛同しないだとっ!?)


「お兄ちゃんはずかしいよぉ……それに『る』はむずかしいよぉ……ええとぉ『ルージュ』……陽花もはやくおけしょうしたいよぉ」


「陽花ちゃんお姉さまは天然素材で十分魅力的よっ!!『じゅ』ねぇ……『塾』……行かなくてよかったわぁ、皆と出会えたから」


「そうですねぇ、みんなにであえてぼくもしあわせですよ……『く』ですよねぇ……『くるま』……バスのおともだちさんです」


「うんうん、そうだねぇ……はぁ幸人君も可愛いなぁ……『ま』ねぇ……『まん……じゅう』……そ、そんな目で睨まないでよぉ」


 絶対に今、不適切な発言をしようとしていた……油断も隙も無いなこの人は。


「本当にその手の発言だけは許せませんからね……『う』ねぇ……『鵜』……鳥さんにそういうのがいるんだよ」


「お兄ちゃんずるいぃ……えっとぉ……『うしちちぃ』……」


 陽花が矢部先輩を見たかと思うとすぐにそっぽを向いた……牛さんを思い出しちゃったんだなぁ、というか牛でいいじゃん。

 

「うぅ……うしちちじゃないもん……」


「まあまあ……無いよりあるほうがいいでしょ……はぁ……『ち』ねぇ……『ちっちゃい』……うぅ……」


 涙が連鎖している……そして二人して俺を見ないでください、大きくても小さくても女性の胸は魅力的です。


「ぼくもはやくおおきくなりたいです……『い』ですねぇ……『いくら』……ぼくだいすきなんですよ」


「うぅ……幸人君は純粋だよぉ……陽花お姉さまも流石に見習おうよぉ……『ら』……『ラブ』……ラブラブしよぉ皆川君」


「……しません、『ぶ』……『豚』……だ、誰のことでも無いからぁっ!!」


 女性陣の目が一瞬凄まじくきつくなった……他に思い浮かばなかっただけだよう。


「ぶぅ……お兄ちゃんそういうこといっちゃいけません……『た』……『たからもの』……そんなお兄ちゃんでも陽花にはたからものぉ」


(俺も陽花が宝物だよ……他に何もいらない、いや皆もできればいてほしいけど……)


「私も陽花ちゃんお姉さまが宝物よぉっ!!『の』……『濃厚キス』しましょ……み、皆川様に言ったのよぉ」


 絶対にしません、それにさせません……陽花も唇をとんがらせない。


「の、のうこうなちゅー……は、はずかしいですぅ……『ス』……『ステーキ』……おいしいんですよ、とっても」


「美味しい食べ物は他にもいっぱいあるんだよぉ、濃厚キスも美味しいしぃ……『キス』……しよっか皆川君」


「だからしません……陽花もおでこで我慢しなさい、ちゅっ……『す』……『スーツ』……俺も将来は着るのかなぁ」


「えへへ……お兄ちゃんにちゅーされたぁ……陽花しあわせぇ……『つ』……『つづき』……お兄ちゃんちゅーのつづきしよぉ」


 キスの続き、多分もう一回してほしいんだろうけど……汚れた俺には違う意味に捕らえられるからやめてほしい。


 とりあえず頬にキスをして落ち着かせよう……もう人前でも口以外にキスすることには抵抗がなくなってる俺。


「はぁはぁ……わ、私にもしてほしいなぁき、キスぅ……『き』……『キスぅ』……ほ、ほら陽花ちゃんお姉ちゃん私とキスぅっ!!」


「はい、正道さん失格……ほら離れて……」


「さ、魚のキスよぉっ!! セーフっ!! まだセーフっ!!」


 中々しぶとい……窓の外の景色はあまり変わりがない、先は長そうだ。


「ええと、じゃあぼくが『す』ですねぇ……『すきやき』……みんなでたべてみたいですね」


「絶対楽しいよそれっ!! 今度やろうねぇ……また『き』……『キスマーク』……付けたい派、付けられたい派?」


 キスマークと聞いて思い出すのは前の騒動だ……勘弁してほしい。


「もう二度と付けてほしくないです……付ける気もないです……『く』……『苦悩』……はぁ」

 

 ほぼ毎日悩まない日はない……内容の濃さに違いがありすぎるが。


「もう、お兄ちゃんこんど陽花がいっぱいちゅーしていやしてあげる……『う』……『ウエディング』……早くしたいねぇお兄ちゃん」


(陽花の結婚……俺とはできないから他の誰かと……うぅ、一生見たくないぃいいいっ!!)


 思わずぎゅっと抱きしめてしまう……ずっと俺の腕の中に居てほしい。


「陽花ちゃんお姉さまの結婚式かぁ、絶対私もドレス着て参加してやる……『ぐ』……『グアム島』……ハネムーンは皆でグアム旅行」


 みんなでしてる時点でハネムーンではないような……本気で俺の第三夫人になるつもりだろうか。


「『う』ですね……『うみ』……みんなであそびにいったらたのしそうです」


「その時はとっても際どい『水着』をきて悩殺しちゃうんだからぁ……皆川君も幸人君も私に釘付けだよぉ」


「陽花に水着なんて破廉恥なものを着せれないから行けません……『ぎ』……『義妹』……陽花……」


 気が付いたら俺の中で一番大事な単語になっていた義妹……血の繋がらない、だけど妹だ。


「お兄ちゃんはかほごすぎるよぉ、でもそんなところもすきぃ……『い』……『いっぱいだいすき』……お兄ちゃんすきぃ……」

 

「おいおい、それはずるいだろ……というか好きって言いたいだけだろ」


「だってぇ、お兄ちゃんが陽花のことせつなそうによぶんだもん……すきぃ……」


「全くいちゃついちゃってぇ……『き』ねぇ……じゃあ『キスしたい』……皆川様ぁっ!! キスぅっ!!」


 正道さんまで乗ってきてしまった……もうこれではしりとりは成立しない。


「絶対にしませんっ!! 全く、何を考えてるんですかあなたは?」


「お姉ちゃんたらぁ……ええとぉ『い』ですよねぇ……『いんどぞう』……ぞうさんっておおきいんですよぉ」


「幸人君は真面目ないい子だなぁ……ナデナデしてあげよう……ああ、癒されるぅ……陽花もついでにナデナデ……」


 二人の子供の頭を撫でて笑顔を引き出し心を癒す……でなければやってられない。


「羨ましい……これは違うからね、『う』は……『運命の人』……それが皆川君と陽花お姉さま、そして正道さんと幸人君っ!!」


 嬉しそうに言う矢部先輩……家族愛に飢えていた先輩にとって皆とこうしているだけで幸せなのだろう。


「ずるい言い方ですねぇ……『と』……『とても楽しい』……なんだかんだで楽しいですよ俺も……苦しいことも多いけど……」


「すなおになればいいのにお兄ちゃんはすぐいじをはるんだからぁ……『い』……『いっぱいいっぱいだいすき』……みんなだいすきぃっ!!」


「ふふ、もうしりとりじゃないわね……私もみんなが大好きよ、本当に幸せ」


「うん、ぼくもみんなだいすきです……こうしているだけでとてもたのしいです」


「えへへ、もちろん私もみんな大好きだよーっ!!」


 ついにしりとりは終わりを告げた、だけどほんわかと楽しいのは……気のせいじゃないだろう。


(まだ旅は始まったばかりなのに、こんなに幸せでいいのかなぁ……いや、もっと楽しみたいなぁ)


 俺は窓の外の景色を見ながらこの温泉旅行を堪能しようと誓うのだった。

 【読者の皆様にお願いがあります】



 この作品を読んでいただきありがとうございます。

 

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