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皆でお休み

「皆川様、それで私たちはどこで寝ればいいのかしら?」


 無事にやることを全て終えることができた……後は寝るだけだ。


「俺と陽花と幸人君で一緒に寝るから、矢部先輩と正道さんは好きなベッドで寝てください」


「えへへ……陽花はいつでもお兄ちゃんといっしょなの」


「お、おにいさんといっしょ……は、はずかしいですぅ……」


 嬉しそうに悶える陽花と照れたように悶える幸人君……お風呂で可愛がってあげたかいがあったようだ。


「えぇ……私たちもみんなと一緒に寝たいよぉ」


「うちのベッドではとても寝れません……素直に別れましょう」 


「じゃあ、いっそのこと寝具を集めて一カ所で寝ましょうよっ!!」


「うわぁ……それすごくいいねぇ葉月ちゃんっ!! 皆川君、ぜひそうしようよぉっ!!」


 寝間着に着替えてはしゃぐ女子二人……普段より薄着だからかあるいは風呂上り故か、どうにも魅力的に感じてしまう。


(この二人と一緒に……今の俺には拷問だぁ)


「お兄ちゃん、みんなでいっしょねんねはおもしろいとおもいますっ!!」


「そ、そうですよぉ、お姉ちゃんもやべおねえさんもいっしょにねましょうよ……じゃないとぼく……ぽっ」

 

「ゆ、幸人……あなた、お風呂で何したのよ?」


「べ、別に何も……ただ身体を洗い合っただけだぞ」


 幸人君が洗ってくれたからお返しに肌が傷付かないよう撫でるように洗ってあげただけだ、何も変なことはしていない。


「ふぅーん……まあいいけど、じゃあ陽花ちゃんお姉さまは葉月の隣でおねんねしましょうねぇええっ!!」


「おふろばでさんざんさーびすさんしてあげたでしょ? これいじょうわがままさんはだめですよぉはづきおねえちゃん」


「……お前こそ風呂場で陽花と何したんだよ?」


「べ、別に……ただ身体を洗い合っただけよ」


 露骨に目をそらしやがった……まあ陽花も矢部先輩も笑ってるから深刻な事態にはなっていなさそうだ。


「ふぅーん……まあいいけど、とにかく陽花と幸人君は俺の両隣で寝ようなぁ」


「ぼくはお姉ちゃんのとなりでねますぅ……おにいさんのとなりだとどきどきしちゃいますからぁ……」


「じゃあ陽花お姉さま、皆川君、私、幸人君、葉月ちゃんの順で寝れば完璧じゃないかなぁ」


「いいえ、矢部先輩、皆川君、陽花ちゃんお姉さま、私、幸人の順が完璧だと思うわ」


 どちらにしても俺と幸人君は隣り合って眠れないらしい……嫌われちゃったかなぁ、ぐすん。


「……いつの間に皆で寝るのが決定になったんですか?」


「だって四対一だよ? 諦めようね皆川君」


「はぁ……わかりましたよ、もうとにかく寝ましょう」


 抵抗をあきらめた俺は他の部屋から寝具を持ち出すと居間に引き、全員で眠れる状態を作り端のほうに寝っ転がる。


「ほら、陽花おいで」


「はーい……お兄ちゃん、おやすみのちゅーっ!!」


「しません……ほらおねんねしちゃいなさい、幸人君もおいでぇー」


「ぼ、ぼくはこっちでねますぅ……」


 俺から一人分離れたところに横になった幸人君、だけどチラチラこっちを見てるからまだ嫌われたわけじゃないと思いたい。


「じゃあ私は陽花ちゃんお姉様の……じゃなくて幸人の隣に行くから睨まないでよ」


「あうぅ……皆川君の周り盗られちゃったぁ、じゃあ陽花お姉さまの隣もーらいっ!!」


 結局は幸人君、正道さん、俺、陽花、矢部先輩の順で寝ることになったようだ。


「ほら陽花、腕枕してあげるからねんねしちゃいなさい」


「はーい、お兄ちゃん陽花しあわせぇ……」


「えへへ、余ってるところもーらい……やっぱり皆川君の腕枕気持ちいいねぇ」


 陽花の為に伸ばした腕を矢部先輩まで枕にしてくる。


「皆川様ぁ、私にも腕枕してくれないかしら?」


「またこうなるのか……大人しく寝てくれるならいいですよ」


「あ……ふふ、人にしてもらう腕枕って素敵な感触なのね」


「おにいさんのうでまくら、お姉ちゃんのとおなじぐらいきもちいいですよ……」


 反対側の腕もまた正道さんと幸人君が枕にしてくる。


 両腕に四人分の頭がのしかかり辛い……けれど何故か幸せな重さだと思った。


「よしよし……陽花お姉さまいい子いい子……」


「うにゃぁ……陽花……きもちいい……くぅ……すぴー……」


「ほら幸人、いい子いい子……ゆっくりお休み」


「はぁい……お姉ちゃんぼく……ねむく……くぅ……くぅ……」


 まず陽花と幸人君が眠りに落ちた……とてもかわいい吐息が聞こえてくる。


「陽花ちゃん可愛い……ふぁぁ……ちょっと騒ぎすぎちゃったぁ……先に寝ちゃうね……お休み……すぅ……くぅ……」


 次いで矢部先輩が眠りについた……まあ正道さんに付き合っていれば読書少女なら体力も尽きて当然だ。


「皆川様……今日は私の我儘に付き合ってくれてありがとう、感謝してるわ」


「色々言ってきて今更ですが気にしないでください、陽花も正道さんにかなり慣れてみたいですし……これなら温泉旅行も平気そうですからね」


「ええ……とても楽しみ……お友達と旅行できる日が来るなんて……本当に幸せ」


 正道さんが儚げに微笑む……こんな顔も出来たのかと正直驚いてしまう。


(いや、正道さんも女の子だもんなぁ……色々と納得しがたいけど)


「俺も友達との旅行は初めてですよ……正直楽しみで仕方ありません」


「ふふ、それはよかったぁ……私が無理言って押しかけたみたいだから本当は迷惑だったんじゃないかとかずっと考えてたから」


「嫌だったら断ってますって、気にしすぎですよ」


「そうなのね……私って人との距離感が苦手だからわからないのよ、だから同じように距離を保ちながら戸手君とか矢部先輩と仲良くなったあなたが羨ましいわ」


 言われて気づく、正道さんが俺と戸手の関係を何度も訪ねてきていたことを。


 そしてもう一つ……同級生を様付けで呼ぶことに何の抵抗も抱いてなさそうなことも距離感の下手さ故だったのだろうか。


「偶然ですよ……特別俺が何かしたわけじゃありませんよ」


「ううん、そんなことないわ……私も仲良くなってすごく居心地の良さを感じているもの……癒しオーラでも出てるのかしらあなた」


「いやそんなこと言われても……」


「まあそれは冗談にしても、あなたと居ると緊張しないのは事実よ……私は逆だったのねきっと」


 正道さんはどこか遠くを見つめながらぽつりぽつりと話し始める。


「親がいない孤独感を埋めたくて人の注目を集めようと頑張って理想的な人間を演じて努力して……だけど近づいてきたのは変な取り巻きだらけ……おまけに大人とか余計な人たちから期待されて裏切れなくなって……苦しかったわぁ」


「それがストレスになって……あんな暴走をかぁ」


「あはは、前はただの子供好きぐらいだったんだけどねぇ……どんどんああいう欲求も高まって、隠さなきゃって思うとそれもまたストレスで……悪化する一方だった、皆川様に出会うまでは」


 そういって俺に笑いかける正道さんは……どうしてか美しく見えた。


「皆川様は悪いところはしっかり叱ってくれて、それでも自分から距離を置こうとはしないで相手をしてくれて……嬉しかった」


「ドン引きはしてましたよ……それに近づくなって言った気もしますし……そんな立派な人間じゃないですよ俺は」


「ふふ、本当に距離を置こうと思ったら無視するでしょこんな変態女……だけどちゃんと相手してくれて……こうしてお泊りさせてくれて……おまけに戸手君や矢部先輩とも友達になれた、全部あなたのおかげ」


「……仮に俺がきっかけでも皆が友達になったのは正道さんに魅力があったからですよ」


 少なくとも俺は何だかんだで一緒に居て楽しいから友達になったのだろう……幸人君が可愛すぎるからじゃないと思う、多分。


「そう言ってくると嬉しいわ……ありがとう皆川様、感謝している……そろそろ寝るわね、お休みなさい……」


 正道さんが目を閉じて静かに寝息を立て始めるのを聞いて、俺もまた瞳を閉じて眠りについた。


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 この作品を読んでいただきありがとうございます。

 

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