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皆で登校

「ふぁぁ……」


 欠伸をしながら身体を伸ばそうとして、何かが腕に引っかかるのを感じた。


 少し遅れて陽花を腕枕で眠らせていることを思い出しすぐに体勢を戻した。


「むにゃむにゃ……お兄ちゃぁん……すー……」


(朝日に照らされた陽花の寝顔……これはこれでレアでキュートでグッドだなぁ)


 目に焼き付けようとググっと顔を近づける。


 きめ細かい肌にプニプニほっぺ、小さいお鼻にプルプル艶々の唇……すべてが愛おしい。

 

 目に入れても痛くないとはこのことだろう。


 優しく頭をなでてやるととても気持ちよさそうに吐息を洩らす。


(ずっとこうしていたい……ずっと見ていたい……)


 しかしそうも行かない、何とか時計を確認するとあと少しでアラームが鳴る時刻になってしまう。


 もちろんその時点で遅刻スレスレなのは言うまでもないが、それ以上にこんな機械音で陽花に嫌な目覚めをさせたくなかった。


 もっと優しく起こしてあげたい、そう思い俺は軽く揺さぶりながら声をかけた。


「陽花、朝だぞ~起きようねぇ」


「んやぁ……すー……すぴー……」


「ほら起きなさい、もう朝なんだよ」


「くー……くぅー……」


 全然起きる気配がない、困った。


 このままでは陽花はうるさいアラームによってたたき起こされてしまう。

 

(どうにかしないと……こ、こうなったら仕方がないっ!!)


 俺は決意を固めると顔を近づけて、陽花におはようのキスをした。


「んぅ……んんっ……んーーっ!!」


「はぁ……おはよう陽花」


「お、お兄ちゃん……い、いま陽花になにしたのぉっ!?」

 

 いつもの逆で唇を抑えて後ずさる陽花、お顔は真っ赤っかだ。


「何っておはようのちゅー……きゃあ言っちゃったぁはずかしいぃっ!!」


 せっかくなので俺も真似していつもの陽花の振りをして頬を抑えながら部屋を飛び出してみた。


「は、はずかしいのは陽花のほうなのぉおおっ!!」

 

 室内から陽花の叫びとベッドをバフバフする音が聞こえてくる。


(少しはやられるほうの気持ちが分かったかな)


 これで今度からおはようのキスを控えてくれるといいのだが……そんなうまい話無いよなぁ。


 折角部屋を出たのだからそのまま食事の支度をしてしまう。


「陽花ー、ご飯の支度できたからお部屋から出てきなさい―」


「うぅぅ……いいお兄ちゃん、おとめにかってにちゅーしたらだめなんだからね……」


「いつもおはようのキスしてるのは陽花でしょ、そんな自分勝手なこと言わないの」


「だって、だってぇ……すごくはずかしかったんだからぁ……」


 顔を俯かせてモジモジしながらも俺の足元へ近づいてくる陽花を抱き上げる。


「ほら食べよう……伊代音さんに駄目だって言われたけど特別に食べさせてあげるから」


「あ、そうだ……あさのばつとしてきょうは陽花がごはんたべさせてあげちゃうんだからっ!!」


 椅子に座った陽花が小さいお手手で箸を掴んでご飯を俺の口元に運ぼうとする。


「とどかないよぉ……お兄ちゃんしゃがんでこっちきてぇー」


「はぁ……もう仕方ないなぁ、あーんっ」


 口を開いて陽花に近づくと、強引に喉の奥にまでご飯を突っ込まれる。


「ごぼぉっ!? がばぁっ!! ぐぅぅ……ごくんっ」


 反射的に吐き出しそうになったが陽花の身体に俺の食べかけをかけるような真似ができるわけがない。


 無理やり口を閉じて何とか飲み下したが味なんかわかるはずもない……余りの苦しみに涙が零れてきた。


「えへへ、陽花にたべさせてもらってかんげきしちゃったのぉ?」

 

「はぁ……はぁ……よ、陽花……舌の上に乗せてくれればいいからね」


「ううん、きちんとおくまでいれてあげちゃうんだからぁ……はい、あーんっ」


「手前っ!! 手前でお願いしますっ!! あーん……んごぉっ!?」


 何度も何度も笑顔で食事を突き当りまで差し込んでくる陽花……初めて悪魔に見えた。


「がはぁ……ぐはぁ……お、終わったぁ……」


「どう? おいしかったぁ?」


「ノーコメントです……お兄ちゃん歯を磨いて準備しておくからその間にご飯を食べておいてください」


 俺はふらふら立ち上がると気力を振り絞って洗面所へと向かった。


「ぶぅ……かってなんだからぁ……そうだ、はも陽花がみがいてあげようかっ!?」


「勘弁してくださいぃいいっ!!」


 朝からこれ以上ダメージを受けたら立ち直れない。


 俺は急いで陽花が干渉できないよう身支度を済ませてしまうのだった。


「お兄ちゃん、陽花もしょくじとはみがきおわったよぉ」


「ごめんね、お兄ちゃん今日駄目駄目だったね……ありがとう」


「いいよぉ、ちょっと陽花もやりすぎちゃったからね……じゃあおきがえしてくるー」


「ねえ今やり過ぎちゃったって言ったよね陽花さん、ワザとだったんですか? おーい、陽花さん返事してー?」


 俺の言葉を無視して部屋に籠って着替えを始める陽花。


(純粋無垢で汚れを知らぬ純白という言葉が似あう麗しの天使だったのにぃ……誰の悪影響だよぉっ!?)


 俺ではないと信じたいところだ。


「お兄ちゃん陽花かわいいー?」


「ああ今日も最高に可愛いよ……で、さっきの食事の件だけどさぁ」


「おじかんきちゃうよぉ、はやくようちえんいこぉー」


「それはそうだけどさぁ……」


 陽花に手を引かれるままに俺は家を後にした。


 庭に止めてある自転車の後部座席に陽花を座らせ、早速幼稚園へと向かう。


「じてんしゃさんにのってるとかぜがきもちいいねぇ、お兄ちゃんすぴぃどあっぷぅっ!!」


「危ないから駄目です……今度防具一式買ってくるからな」


「ぶぅ……どうせかうなら陽花にぴったりなかわいいのにしてねっ!!」


「はいはい」


 前方にしっかりと意識を集中しながら俺は陽花とのおしゃべりを楽しんでいた。


(疲れるけど……陽花とこうして少しでも長くお話できるのはいいなぁ)


 何だかんだで俺も陽花の可愛いお話は大好きなのだ。


「何なら一緒に買い物行くか」


「いいのぉっ!! わーいいくいくぅっ!! お兄ちゃんとおデートだぁっ!!」


「ただの買い物だよ、全く陽花は大げさだなぁ」

 

「あいするだんじょがいっしょにおでかけするんだからおデートなのぉ……お兄ちゃん、陽花おデートにきていくあたらしいおようふくかいにいきたーいっ!!」


「おいおい、その理屈で行くとお洋服を買いに行くためのお洋服が必要になっちゃうだろ」


 呆れてしまうが陽花はとても嬉しそうで満面の笑みを浮かべている……とても愛おしいこの笑顔。


(ついつい許してしまいたくなる……だけど俺のお小遣いそんなに残ってたかなぁ?)


 懐具合が少し気になった……何せ俺の財布には二人の生活費も入っているのだから。


 陽花の為なら俺はいくらでも食事など切り詰められる。


 しかし陽花を飢えさせることは万が一にも許される話ではない。


(最悪は俺もバイトでも始めようかなぁ……でも陽花の面倒も見ないとなぁ……)


「もうお兄ちゃんなにかんがえてるのぉ……でもおデートさんたのしみだなぁ」


「お出かけさんだよ……でも楽しみか、そうかじゃあ明日にでも連れてってあげるよ」


 ちょうど明日は休日だ、早速行ってみようと思う。


「えへへー陽花たのしみでねむれるかなぁ……お兄ちゃんいっしょにおねんねしてね?」


「全くいっつも寝てるでしょ……最初からそのつもりだよ」


「わーいわーいっ!! さいきんのお兄ちゃんとくにやさしくってだいすきーっ!!」


「そ、そうか……ちょっと甘やかしすぎっ!? よ、陽花服を捲るのは止めなさいっ!!」


 油断も隙も無い、後部座席から手を伸ばして俺の服の裾を強引に持ち上げようとしている。


 流石に自転車の運転中はろくな抵抗ができない。


 それを陽花もわかっているから色々と意地悪をしてくるのだ。


「お兄ちゃんに陽花なりのかんしゃのきもちでマッサージしてあげるだけだよぉ~」


「くすぐったいからやめてくださいっ!! 転んだら陽花が大けがしちゃうでしょっ!! 陽花のツルツルで滑々な出来立ての温泉卵よりデリケートで美味し……可愛らしいお肌が傷付いちゃうでしょっ!!」


「お、お兄ちゃんさすがにそんなにほめられると陽花はずかしいよぉ」


「とにかく転んだら大変だから服の中をいじるのは止めなさいっ!!」


 何とか陽花の動きを制することができたようだ……本当に陽花が傷付かなければ我慢してもいい……いややっぱ嫌だなぁ。


「いいもん、こんどぼうぐいっしきみにつけたらそのときにえんりょなくお兄ちゃんのおからだをあますところなくあじわっちゃうんだからぁ」


「陽花さん、余すところ味わうとかどこでそんな言葉覚えてくるんですか?」


「ひみつぅ~おとめにはたっくさんひみつがあるんだよぉ~お兄ちゃんしらなかったのぉ~」


(絶対に見つけ出して陽花との接点を絶ってやる……一生俺の、じゃなくてともかくできる限り汚れない天使で居てほしい) 


 何だかんだで俺の思想も大分重傷だと思う……治せそうもないけど。


「お、幼稚園見えてき……っ!? 陽花、あの入り口に見えてる光景どう思う?」


 二人の女性が話し合っている……どちらも見覚えがありすぎて逆に目の錯覚じゃないかと思った。


「うわぁ……どうみてもあのばけものだよお兄ちゃん、しかもやべおねえちゃんとなにかはなしてるよねぇ」


「やっぱりそう見えるよね……今日は帰ろうか?」


「うん……きょうは陽花ようちえんやめておくよぉ」


(あの二人の会話とか絶対ろくな話し合いじゃないしなぁ……君子危うくに近寄らずってねぇ……ゲッこっち見たっ!?)


「………っぁあああんっ!! 陽花ちゃぁあぁああああんっ!!」


「うわっ!? 気づかれたっ!! 陽花逃げるぞっ!!」


「うわぁああんっ!! あいつきらいぃいいっ!!」


「陽花ちゃぁあああんっ!! よく見てぇええ葉月だよぉおおっ!! 逃げる必要なんかないんだよぉおおおっ!!」


「逃げる必要しかないわぁあああああっ!!」


 自転車で反転して立ち漕ぎしてその場を立ち去ろうとする。

 

 しかし既に正道さんは俺たちの前に回り込んでいた。


 咄嗟に陽花を抱きかかえ自転車を飛び降りる。

 

 慣性の法則にしたがい自転車が正道さんにぶつかり、チリンと悲し気な音を立てて崩れ落ちた。


「ヨウカチャンオネエチャントオイシャサンゴッコシヨ、ゼンシンアマストコロナクモンシンシテアゲルカラネ」


「ふざけんなっ!! こっち来たら蹴り飛ばすぞっ!!」


「お兄ちゃぁあああんっ!! もういいからにげようよぉおおっ!!」 


「もう三人とも騒ぎすぎだよぉ……周りの人たちに物凄く見られてるよぉ?」


 継ぎ接ぎだらけの制服を着た矢部先輩が幸人君を連れて俺たちの間に入ってくる……とてもにこやかで怪しすぎる。


「お姉ちゃん……ようかちゃんたちいやがってるよぉ、こんなことしてちゃだめだよぉ……ようかちゃんのおにいさんとなかよくなりたいっていってたよね?」


「はぁはぁはぁ……ゆ、幸人黙りなさいっ!! お姉ちゃんはねぇっ!! お姉ちゃんはねぇっ!! 陽花ちゃんとキスしてハグして全身を舐め尽くした上で三か所の聖域を……がふぅっ!!」


 俺の蹴りと矢部先輩の鞄が同時に正道さんに突き刺さった……正面からの俺の蹴りは右手の人差し指だけで止められたが鞄のほうが後頭部にクリーンヒットしてくれた。


「うぅぅ……まことに申し訳ございませんっ!! この場の皆様に土下座してお詫び申し上げますぅうっ!!」


「道路で泣きながら土下座とかこれはこれで厄介なんですが……まあいいや、正道さんそのままステイっ!! 俺たちが幼稚園に滑り込むまでステイっ!!」


「はぁいいいいっ!! うぅぅ……私のバカバカぁっ!!」


 ガンガンと土下座しながら頭を道路に打ち付けて……道路のほうが一方的にえぐれていく。


(本当に何なんだよこの生き物は……)


 しかしまた暴走されてもたまらない、俺は陽花を抱きしめたまま幼稚園へと滑り込んだ。


 隣にはなぜか幸人君を抱いた矢部先輩もついてきている。


「陽花ちゃんのお兄さん、それに陽花ちゃんに幸人君おはようございます」


「お早う御座います」


「うぅ……せんせぇおはようございますぅ」


「おはようございますせんせい……陽花ちゃんごめんねぇ、てをひいてあげるからなきやんで」


 幸人君に手を引かれて陽花は幼稚園の中へと入っていった……可愛い×可愛い=超可愛い……のにうぅうん男の子と手をつなぐ陽花ぁぁ。


 物凄く複雑だ、めちゃくちゃ癒される絡みなのに滅茶苦茶心が引き裂かれそうな絡みだ。


(正道さんじゃないが俺も幸人君が女の子だったらと思い始めてる……重傷過ぎる)


「あの陽花ちゃんのお兄さん……その、言いずらいんですがやっぱりバス通園に戻していただけませんか?」

 

「ええと……凡そ言いたいことはわかります、あの馬鹿のせいですね?」


「ごめんなさいね、他の子たちが怯えてしまっているので……幸人君のお姉さんは出入り禁止にしたけどやっぱりねぇ……」


「俺はまあ何とかなりますが……あぁなんてことだ、幸人君には何の罪もないというのにぃ」


 世の中の理不尽を感じて仕方がない……後で正道さんに説教タイムだ。


「だから代わりに私が幸人君を途中から送り迎えすることになったんだぁ」


「……なんで矢部先輩が?」


「さあて、なんででしょうねぇ?」


 あれだけ争っていたはずの矢部先輩と正道さんだがいつの間に仲良くなったのだろうか。


「まあ私たちも学校に行きましょう」


「……腕を絡ませないでください、じゃあ先生後はお願いします」

 

「はい、行ってらっしゃい………ア充、爆………」


(何か聞こえたような……いや、きっと気のせいだ多分)


 矢部先輩に腕を引っ張られるようにして俺は幼稚園を後にする。


 途中で自転車を回収して停めておくことも忘れない。


「正道さん、もう起きていいですよ……というか何で昨日の今日で幸人君を連れてきたんですか?」


「は、はい……いやね、そのね……寝坊しちゃったのよ、夜中まで陽花ちゃんとの一夜を妄想して……」


「はいストップ、もういい喋るな……今すぐクタバレ」


「ああ、勘違いしないで妄想って言ってもあれよ……純愛の末結ばれた私たちが年齢制限のない国での結婚式の後で迎える初夜……ごぶぅ!?」


 反射的に自分の鞄を全力で振り回しつつ後頭部に叩き込んでしまった。


(まあ正当防衛だよな、脳内とは言え陽花を汚す輩は処分していい法律があったはずだしな……俺の脳内には)


 本格的に危ない奴だ……冗談抜きで完全犯罪の計画を練ったほうがいいかもしれない。


「もう二人とも通学路で遊ばないのぉ」


「遊びじゃなくて本気なんですけどね……まあ行きましょうか」


「うぅ……待ってください……」


「ついてこない……いやこんな幼稚園の近くに居られても困るしさっさと来てください」


 万が一暴走して幼稚園の中に突っ込んでいかれたら大惨事だ。


 俺は仕方なく正道さんの手を取って引っ張り始めた。


 遅刻寸前の通学路は人気が余りないがそれでもちらほらと同じ制服に身を包む生徒の姿が見受けられる。


 そいつらは右手を矢部先輩にとられ、左手で正道さんの手を引く俺を見てヒソヒソと話している。


「あ、ありがとう皆川君……手を握ったってことは私とお友達になったってことよね?」


「飛躍しすぎです、俺は陽花を虐める奴とは友達になりません」


「まあまあ皆川君、葉月さんは好きでやってるわけじゃないんだからぁ~」


「うぅ……もっと言ってやってください矢部先輩……」


 本当に何故急にこの二人は仲良くなったのか……おい、そこの男子生徒羨ましいだと代わってやるよこっちこいやっ!!


「しかし何で二人はあんなところで仲良く話してたんですか?」


「知らないの皆川君……幼稚園のすぐ目の前に矢部先輩の自宅はあるのよ」


「園内立ち入り禁止で困ってたのが見えたから、幸人君が可哀そうだから代わりに連れてってあげることにしたの」


 ようやく納得がいった……確かに矢部先輩は幸人君を気にかけていたからなぁ。


「ああ、確かに幸人君は不憫だなぁ……お前わかってんの正道さん、どんだけ幸人君の人生歪める気だよ?」

 

「わかってます……本当にどうしよう私……ねえ皆川君、悪いけどこれから先ずっと私が暴走しないように一緒にいてくれない?」


 涙目で懇願するように告白じみた言葉を受けるが全くうれしくない……とちょっと言い切れない辺り俺は俗物だと思う。


(何だかんだ正道さん美人だからなぁ……くそ、ちょっとドキッとしてしまった)


「うーん、だけど葉月さん……皆川君は陽花ちゃんが正妻で私が第二夫人だからぁ第三夫人になっちゃうけどいいの?」


「勝手に決めないでください、誰もそんなこと認めてませんよ……」


「うぅん……第三夫人かぁ、だけどそうすると私も陽花ちゃんのお姉さん……というよりお姉さまって呼んでいいわけよねぇ……じゅるりぃ……はぁはぁっ!! 陽花ちゃんお姉さまぁあっ!!」

 

「絶対に認めません……あと手に力を籠めないで、握力で骨がきしんでいたいんですよぉ」


 正道さんがハイになって俺の左手を握りつぶそうとする。


「となると私もついにお姉さまになるんだぁ……ふふふ、これからは私を姉と慕いなさい葉月……きゃー私格好いいーっ!!」


「はぁはぁっ!! 陽花ちゃんお姉さまっ!! ああ、素敵な響きぃいいっ!!」


「……頭痛い」


(こんなやつらと付き合っていたくないぞ俺……もう学校辞めちゃって陽花と一緒に旅に出ちゃいたいなぁ)


「おまけに葉月が私の妹になることで自然に幸人君も私たちの弟になっちゃうんだよねぇ……最高だと思わない皆川君っ!?」


「最高っ!! じゃ、じゃなくてね……いや幸人君が弟に……ああ、幸人君が俺の弟……」


 脳内で幸人君が俺に無邪気な笑顔を向けて近づいてくる。


(お兄さん大好きですとか言われちゃって……顔の左右から陽花と幸人君から同時に大好きちゅーとか……はぁはぁ……い、いけませんよお兄ちゃんにキスなんてぇ……ああ極楽だよそんなのぉ)


「よーし、仕方ない正道さんを……」


「陽花ちゃぁあああんんっ!! お顔をぺろぺろ身体をはぐはぐお胸にちゅっちゅ髪の毛もぐもぐ全身ちゅばちゅばエキスをじゅるじゅるっ!! いやっふぅうううううっ!!」


「嫌に決まってるだろうがこんな異常者っ!! 近づきたくもねぇ離れろやっ!! というか本当に死んでくれっ!!」 


「う、うわぁ……さ、流石に朝っぱらの人前でこんなこと聞くと私もドン引きしちゃうよぉ……葉月さぁん、庇いきれないし気持ち悪いよぉ」


 矢部先輩も正道さんの異常者っぷりには引いたようだ……朝っぱらじゃなくて人目を気にしていたら耐えれるのか?


 とにかく付き合いきれない、俺は全力で手を振りほどきに……手の感覚がないよぉ。


「ヤバい手がやばい……お願いだから離せこの化け物っ!!」


「み、皆川君っ!? て、手が紫色だよぉっ!? だ、大丈夫なのっ!?」


「大丈夫じゃないっすっ!! 矢部先輩こいつぶん殴って早くっ!!」


「よ、よ、陽花ちゃんの可愛らしい舌で葉月の心を癒し……ぐばぁっ!?」 


 矢部先輩の鞄が正道さんの後頭部にぶつかる。


「……ごめんなさい皆川君、矢部先輩……私近いうちに五感全部切り落としますぅ……」


「ああ、手がジンジンしてるぅ……そのテンションの上下止めてください、本当にどう対応していいか困るんですから」


「あはは……葉月さん大丈夫?」


「身体は何も影響ないです……だけど心が……罪悪感が……うぅ……苦しい……」


 ついでに言うと俺も周囲の視線が痛くて苦しい……はいはい、どうせ俺のせい俺のせい。


「とにかく行きましょう……もう何も考えないように」


「は、はい……皆川君、いえ皆川様のおっしゃるままに……」


「はーい、皆川君と腕組んでるだけで楽しいからいいよぉ」


 俺は正道さんの暴走に気を付けながら、二人を引っ張る様にして学校に向かうのだった。

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