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義母の伊代音さん

「ただいまーっ!!」


「ただいま、はぁ……物凄く疲れたなぁ」


 家に帰り着くなり廊下に倒れ込んでしまう、ここの所いつも疲れているが今日は格別だった。


 朝から身体を動かし続けて、最後には子供二人を抱えての全力疾走だ……おまけにその後自転車を押して帰ったりもしてる。


 文字通りくたくたで、しばらく身体を休めたいところだった。


「えへへ、お兄ちゃん……きょうはとってもかっこよかったですっ!!」


 身体を動かしたわけじゃない陽花はまだ体力が残っているようで、崩れ落ちている俺の頭をいい子いい子してくれている……ああ、癒されるわぁ。


「ありがとう、お兄ちゃんは陽花の為ならいくらでも頑張れるんだ……けど、今だけは休ませて……」


「うんいいけど……そのまえにひとつだけ、おやくそくだけはたしておいてほしいなぁ?」


 陽花の言葉に思わず首をひねってしまう……正道さんの一件がインパクト強すぎて他のことが思い出せない。


「お約束……何かあったっけ?」


「もう、ごまかそうとしないでよぉっ!? ほぉらぁ……ようちえんをでるときごほうびくれるっていったでしょ?」


「……ああ、キスのことね」


「陽花はとってもたのしみにしてたのですっ!! だからぁ、ねぇいいでしょ?」


 そういって陽花は俺の身体の上に乗っかると顔を近づけてくる。


「そうだなぁ……約束しちゃったしなぁ、おでことほっぺたとどっちがいい?」


「……お口さんがいい」


「それは駄目ー、陽花我儘言わないの……ほら選びなさい」

 

「お口さんがいいのぉ……ふつうのちゅーでいいからぁ、ごほうびさんでしょ……えらばせてよぉ……」


 流石に我儘が過ぎる、少し叱るべきだろうか……だけどちょっと気力が残ってないこの状態で陽花の泣き顔は耐えられそうにない。


「陽花、お口さんは朝におはようのキスでしてるだろ?」


「お兄ちゃんからのちゅーがほしいの……いっかいだけ……おねがい……ちゅー……」


 切なそうに俺に懇願する陽花、多分疲れ切っていたせいだろうけどどうしても抵抗しきれなかった。


「……本当に今回だけだぞ、一回きりの普通のキス……いいな」


「うんっ!! お兄ちゃんだいすきっ!!」


「はぁ……ほら、目を閉じて……」


「んーっ」


 上体を起こして陽花を抱きかかえて、俺は初めて自分から幼い義妹の唇にそっと自らの唇を重ねた。


「ただいまー、お義母さん久しぶりに休み……が…………えっ!?」


「っ!? お義母……じゃなくて伊代音(いよね)さんどうしてこのタイミングでっ!?」


「えへへ~、ママ見てたぁ……陽花ね、お兄ちゃんとラブラブちゅーしてたのぉー」


 まさかのタイミングで帰宅した義母は俺たちのキスシーンをもろに目撃し、その手に提げていた買い物袋を滑り落とした。


「あ、あはは……お、お義母さんお邪魔だったかなぁ、そのあたりどうなの石生君?」


「ぜ、全然邪魔とかじゃないですっ!! いや、今のは本当に偶然の一瞬であって……陽花もちゃんと説明しようなっ!!」


「陽花ねぇ、はじめてお兄ちゃんからちゅーされちゃったのぉっ!! きゃぁーはずかしぃーーっ!!」


 真っ赤になった頬を抑えながらぱたぱたと部屋に向かって駆け出していった陽花……お、終わった。


「と、とりあえず……食卓で話しましょうか?」


「は、はい……買い物袋持ちます」


 お義母さんと共に台所で買い物の食材を片付け、そして食卓で向き合う。


「ええと、あのね最初に言っておくけど私は石生君のことを信じてるから……さっきのキスも陽花にせがまれたものなんでしょ?」


 俺のことをまっすぐ見つめる視線には確かに蔑みなどは混ざっていなかった……だからこそ心苦しい、正直に話すしかないな。


「は、はい……ちょっと色々あってご褒美にキスしてほしいと頼まれまして、了解したのは早計でしたすみません」


「そうよねぇ……だけど一瞬だけど妙に慣れてる感じがしたんだけど、それに陽花の初めてお兄ちゃんからのキスっていう表現も何か変よねぇ……普通は初めてのキスっていえばいいものねぇ……」


「うぅ……じ、実は、朝その……陽花を起こさないようアラームを遅めにセットしてまして……だけど陽花はその前に起きて俺におはようのキスを……ほぼ毎日しております次第です」


「ほ、ほぼ毎日……っ!? ふ、普通のキスよねっ!? そ、その……い、いわゆるディープキスみたいなことはしてないわよねっ!?」


「申し訳ございませんっ!! 先日ちょっとした不注意でエロ本を少しだけ見られてしまい、丁度今朝に一度だけ……申し訳ございませんっ!!」


 話せば話すほどドツボな気がしてくる……こうして羅列してみると確かにやばいわ俺らの関係。


「あぁ……そ、そんなぁ……あ、あのないとは思うけど……そ、それ以上のことは……っ!?」


「ないですっ!? 陽花も知識がないはずですし俺からお願いすることはありませんっ!! 全く持ってありえません、俺があの可愛い天使のような存在を汚したりはできませんっ!!」


「て、天使って……はぁ……まあ石生君がそんなことするとは思えないけど……聞くけど基本的に陽花のほうから迫ってるのね?」


「はい……断れない時点で同罪ですが……申し訳ありません、どうしても可愛くて叱れないどころか厳しくもできなくて……流されるままに……」


 土下座せんばかりの勢いで頭を食卓に叩きつける……いや本当に申し訳ない。


「ママ~陽花おなかすい……お、お兄ちゃんっ!? ど、どうしてそんなことしてるのっ!? ま、ママったらお兄ちゃんをいじめてるのっ!?」


「いや違うんだよ陽花、お兄ちゃんなぁちょっと道を間違いかけてて訂正してもらってるところなんだよ……」


「あのねえ陽花……石生君におはようのキスをしてるってのは本当なの?」


「うんっ!! だってそうしないとお兄ちゃんおきれないんだもんっ!!」

 

 そういうつもりでキスしてたのか……全く気付かなかった。


「陽花、お兄ちゃんは起きようと思えば起きれるからキスする必要はないんだよ……次から止めようね?」


「だめぇっ!! お兄ちゃんをちゅーでおこすのは陽花のおやくめなのっ!! だいじなおしごとなのっ!!」


「陽花……石生君嫌がってるのがわからないの?」


「えっ……お、お兄ちゃん……陽花のちゅー……い、いやだったの……う、うそでしょ……」


 ふらふらと俺に縋りつこうとする陽花を思わず抱きしめてあげたくなる……だけどその前に伊代音さんがさっと抱き上げてしまう。


「当たり前でしょ……勝手にキスされて嫌じゃない人がいますか?」


「だ、だってだって……陽花のちゅーだよぉ、お兄ちゃん陽花のこときらいなの?」


「そんなことはないっ!! 俺は陽花が大好きだよっ!! だけどねその好きは兄妹の好きなんだよ……家族の好きなんだよ、普通家族でキスはしないんだよ……ごめんなちゃんと伝えておくべきだったなぁ」


 頭を下げる、俺には他に出来ることがない。


「ほら聞いた陽花、あなたは自分勝手な気持ちを押し付けてたのよ……我儘言っちゃ駄目じゃないの」


「ち、ちがうもんっ!! わがままじゃないもんっ!! 陽花はお兄ちゃんのことけっこんしたいぐらいだいすきなんだからっ!! だ、だからお兄ちゃんも陽花のことだいすきで……だいすきで……じゃないの……ふぇぇ……っ!!」


 陽花が泣いている、いつもはこれが可哀そうで見てられなくて何でも受け入れていた……そのせいで逆に傷つけてしまった。


 だけど今度こそ、お義母さんが見ている今こそきちんと正さないといけない。


 俺は泣いている陽花に近づいて頭を撫でてやる。


 涙でぐしゃぐしゃになった陽花がこっちを見て、俺はまっすぐその目を見つめるとはっきりと答えた。


「お兄ちゃんは陽花をね……大好きだよっ!! 何でもしてあげるから泣きやんでっ!!」


 やっぱり無理だ、いくら伊代音さんの目の前でも陽花の涙だけは耐えられない。


「えぇっ!? ちょ、石生君っ!?」


「ごめんなさい伊代音さん、俺は陽花の泣き顔はやっぱり耐えられない……例えドツボにはまることになってもこんな可愛い天使を悲しませることができないんだっ!!」


 やけくそ気味に叫びあげて強引に伊代音さんから陽花を奪い取り、力いっぱい抱きしめてやる。


「お兄ちゃぁあああんっ!! うぅぅ……陽花ねぇ……ひっく……お兄ちゃんに抱っこされてるときが一番幸せぇ……うぇぇぇ……ず、ずっと抱っこしててぇ……お兄ちゃぁぁん……ひっくひっく……」


「ああいくらでも抱っこしてあげるよっ!! もう今日は一緒に寝ような、また腕枕と頭なでなでしてあげるからっ!! というわけです、本当に申し訳ないですけど一線は決して超えないようにしますのでご了承をお願いしますっ!!」


 思いっきり頭を下げる、俺の胸で泣き続ける陽花をナデナデしながら……ああ、俺ってここまでシスコンだったのかぁ。


「……ま、まさか石生君がここまで陽花の虜になってるなんて予想外だわ」 


「ママきらいっ!! お兄ちゃんと陽花をいじめるママなんかきらいっ!!」


「よ、陽花あなたねぇ……はぁ、でも私も意地悪いいすぎたかしら」


 伊代音さんのため息をつく声が聞こえた、だけどどこか呆れたようで……嬉しそうにも聞こえた。


「石生君、頭を上げて……二人の交際、モドキを認めます」


「えっ!?」


「ふぇぇっ!?」


「最初にキスするとこ見た時点で認めてたんだけど、一応二人の気持ちを試しておきたくて……仮にも兄妹での交際だから覚悟が必要だと思って」


 頭を上げると視線の先で伊代音さんがにこやかに微笑んでいた……俺のやけくそじみた態度とは偉い違いだ。


「ど、どういうことですか?」


「いやね、前に陽花の悪戯で恋人って写真が送られてきたでしょ……あの時点でうすうす気づいてたのよ」


 笑いながら答える伊代音さんだが、確かにそんなこともあった……そういえば返信の時点で認める的な内容が掛かれていた気がする。

 

「うぅぅ……いじわるっ!! ままのばかぁっ!! 陽花ほんとうにくるしかったんだからねっ!!」


「はいはい、悪かったわ……まさかあそこまで陽花が号泣するとは思わなかったわ、もっとただの兄への憧れぐらいだと思ってたから」


 陽花が腕の中で暴れている、俺は落ちないように支えるので精いっぱいだ。


「石生君にしてもてっきり陽花のお遊びに付き合ってくれてるだけだと思ったけど……いや多分そうなんだろうけど、ここまで陽花に駄々甘だったなんてびっくりだわ」


「ははは……自分でも驚いてます」


「とうぜんだもん、陽花がひっしにあぴいるしてゆうわくしたからとっくにお兄ちゃんは陽花のとりこなんだもんっ!!」


 確かに一日の自由時間のほぼ全てに陽花がかかわってる、頭の中はとっくに陽花でいっぱいだ。


「全くどうせ石生君に迷惑かけまくってるんでしょ? とにかく、ここまで想い合ってるなら引き離すわけにもいかないし……あくまで交際モドキよ、石生君が言ったように一線を超えない範囲での付き合いを認めます」


「もどきぃ? いっせんをこえないはんいってどういうこと?」


「それは石生君に判断してもらいなさい……信じていいわよね石生君」


「はい、それだけは絶対に順守します信じてくださいっ!!」


 当たり前だ、俺に陽花を汚すような真似ができるはずがない。


「うん信じるわ、じゃあこの話はここまでにしてご飯を……っとその前にもう一つ、キスとかするときは出来るだけ人前ではしないようにね」


「えー、陽花たちのあいをみんなにじまんしたいのにー、ねえお兄ちゃん?」


「お兄ちゃんは恥ずかしがり屋だから人前ではしたくないです……」


「ぶぅっ!! お兄ちゃんのいくじなしぃっ!!」


 俺たちのやり取りを微笑んで見守りながら、伊代音さんは手料理を振舞ってくれた。


 そして家事の全てを取り仕切ってくれて、陽花にも無理やり手伝わせて……俺は本当に久しぶりに一人の時間を過ごすことができた。


 伊代音さんが用意してくれたお風呂に入って、歯磨きも自分の分だけ済ませて……自分のベッドに入り込む。


 ただでさえくたくたで瞳を閉じたらその時点で眠ってしまいそうで、だけど陽花との約束を考えてギリギリのところで耐えていた。


「お兄ちゃん、陽花おねんねのじゅんびできた~」


「わかったよ、ほらおいで……伊代音さんまでどうしたんですか?」


「気にしないで、二人がどんなふうに寝てるのか見せてもらいに来ただけだから」


 俺の腕枕に横たわる陽花を見守りながら、伊代音さんはベッドの反対側に陣取った。


 伊代音さんに見守られる中で俺はいつも通り優しく陽花が寝付くまで頭を撫でてあげた。


「すー……お兄ちゃぁん……くー……」


「もう寝ちゃったわね……よっぽど石生君の腕の中が気持ちいいのね」


「単純に体力がないだけだと思いますよ」


「どうかしら……折角だし試させて貰っちゃおうかな、私にも腕枕してくれる?」


 どこかで聞いたような展開だが断るわけにもいかない、俺は伊代音さんに腕を差し出しその頭を支えた。


「……どうですかね、腕枕の感想は?」


「あは、気持ちいいわ……やっぱりあなたのお父さんがするのに似てるわよ」


「あの……息子としてはお義母さんからそういう言葉を聞くと微妙な気分になりますよ」


「ふふ、ごめんなさい……ねえ石生君、陽花のこと可愛い?」


 伊代音さんがまっすぐ俺を見つめて尋ねてくる、当然俺もまっすぐ見つめ返してはっきりと答えた。


「ええ、世界で一番可愛いと思ってますよ……妹としてですが」


「やっぱりね……よかったぁ、一人の女として愛してるって言われたら正直どうしようかと思ったわ」


 心底ほっとした様子で伊代音さんが胸を撫でおろした……やっぱり交際を認めるとは言っても不安はあったのだろう。


「安心してください、伊代音さんが言った通りあくまで交際モドキです……陽花がちゃんとした恋心を理解するまでのお遊びですよ」


「そうね……だけど、実はね……陽花がここまで男の人に懐くのは初めてなのよ?」


「いや親父が……そんなに関わってないか、だけど友達に幸人君って子もいますよ?」


「ううん、そうじゃなくて……こういう話嫌かもしれないけど、聞いてくれるかな?」


 伊代音さんの言葉に俺は頷く……陽花がかかわっている話を聞かないわけがない。


「陽花がかかわってるなら俺は何でも聞きますよ、なんですか?」


「ありがとう……私って陽花のお父さんが亡くなった後当たり前だけど子持ちのシングルマザーだったでしょ?」


「まあそうなりますね」


「そうしたらね……妙にモテたのよ、なんでだと思う?」


 全く分からない、俺は首を横に振る。


「何でですかねぇ……言っちゃ悪いけど子持ちっていうだけで引く人もいそうですけどねぇ」


「子供が男の子ならね……世の中変な趣味の人もいるから娘が目当てで交際を求める人が居るのよ」


「……胸糞悪い話ですね」


 完全に予想外だが理屈だけは理解できた……全く内容は納得できないが。


「まあそんなのは断っていたけど……やっぱり変なのがアプローチしてきたりしてね、多分陽花にも嫌な思いをさせたと思う」


「何処のどいつですかっ!?」


 陽花をそんな目で見た奴がいるなど許せない……一刻も早く処分しなければ、正道さんに協力を頼めばどんな相手も一発だぜっ!!


「ふふ、本当に陽花が大切に思ってくれてるのね、ありがとう……もう過ぎた話だしそれはいいんだけどとにかくいつからか陽花って男の人が苦手になってたみたいなの」


「……人見知りなのは知ってましたけど、男嫌いでもあったんですか?」


「うーん、どちらかと言えば男嫌いがエスカレートした結果男女構わず警戒するようになったみたいね……そんな陽花があなたに懐いているのを見たときは驚いたわ」


 初めて陽花に出会った時のことを思い出す……俺の問いかけにこそ答えていたが伊代音さんの後ろから決して出てこようとしない陽花。


 いつからここまで懐かれるようになったのかは思い出せない、ただやっぱり一緒に住み始めて半月ぐらいは警戒されていたような気がする。


「何がきっかけなのか聞いても陽花は答えようとしなかったけど、石生君の元にいるときはとても安心してるように見えた……貴方には人の警戒心を解く何かがあるのかもね」


「……ただのヘタレだから警戒する必要を感じなかっただけでしょう」


「ヘタレが実の母親の前であんな告白じみた真似するかしら……ふふ、まあだから何が言いたいのかというと陽花は多分本気よ」


 伊代音さんの言葉を聞いて思わず陽花のほうを見てしまう……無邪気に俺の腕に涎を垂らしていて可愛らしい、愛おしい。


「……兄に懐いているだけだと思いたいんですけどね」


「今はまだ兄弟愛が混じってると思うけど……ううん、今の時点でも結構男女の想いに近づきつつあると思うわ……キスするときあんな顔をしているんだもの」


 俺にはわからないが、はたから見ていた……文字通りの大人の女性には何かがわかったのだろうか。


「分かってると思うけど私が認めたのはあくまで交際モドキだから……石生君がお兄さんのつもりのうちはいいけど男女の恋愛になっても本気の交際はまだ認めてないからね」


「まだ、ですか?」


「ええまだよ、あなたたちがもう少し大きくなったときにお互いにしっかりと愛し合っていて……その上で許可を取りに来たら、そこで初めて判断させてもらうわ」


 伊代音さんは真剣な顔で俺に宣言した……そんな関係になることを俺自身が全く思えないのだが。


「その時はこんなに簡単に認めたりしないから……義理とはいえ兄妹で年齢差もある、当然だけど経済面とか社会的地位とかも考えさせてもらうわ……その上で私が認める気になるぐらいの覚悟を見せつけてもらわないと許さないんだから」


「……まるでそうなれって言ってるみたいですね」


「ふふ、どうかしらね……私は一人娘の陽花が一番大事だからあの子には心の底から幸せになってほしい、周りから祝福されて本人も幸せだと笑ってすごしていけるような結婚をしてほしいだけよ」


「……俺も陽花には幸せになってほしいですよ、世界で一番幸せに……そのためなら何でもするつもりですよ」


 本気でそう思う、だけど……伊代音さんの言う条件を考えれば隣に立つべきは俺ではないとも思う。


「すぴー……お兄ちゃぁん……くー……」


 俺の腕の中で気持ちよさそうに眠る陽花、いつまでこの愛おしい寝顔を見ていられるのだろうか。


「ふぁぁ……私も眠くなっちゃったわ……石生君……信じてるから…………」


 何を信じているのだろうか、陽花の兄としての立場を守り抜くことか……それとも隣に立つのにふさわしい存在になることだろうか。


 伊代音さんの寝顔からは何も読み取れそうにない、ただ本当に俺を信じているように無防備に眠っていた。


(俺はどうするべきなのだろうか……陽花の兄として……交際モドキの相手として……陽花の想い人として……)


 何もわからないが少なくとも今は気持ちよさそうに眠る二人を起こさないようにしようと思った。

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