4話 3人での買い物
買い物に出た3人はデパートに向かった。
子供服など大抵のものは揃うからだ。
「俺は近くのソファで休んでいるよ」
と綾に寺下からもらったお金を渡して去ろうとした。
その瞬間、裾をぐっと引っ張られた。
引っ張ったのは、半泣きになっている絵梨だった。
「パパと一緒じゃないとヤダ!」
今にも大泣きしそうな顔を見て、彼は
「分かった、パパも一緒に行くから」
というと彼女はすぐに笑顔になった。
そして、渋々行く彼の手をぐっと握って彼女は引っ張っていた。
後ろから2人についていくように綾が行った。
子供服売り場に行くと清楚な感じのものや可愛らしい感じのものまで種類が豊富にあった。
2人は絵梨が気に入る服を買うことにした。
絵梨はどの服にしようか悩んでいると店員が
「どんな服が好きなのかな?」
と気を利かし声をかけてくれた。
「う~ん、可愛らしいのがいいけどフリフリみたいなのがないのがいいな~」
それを聞いた店員がいくつか服を持ってきてくれた。
順番に試着をして、彼女が気に入った2、3着を購入した。
「あとは何買って帰らないといけない?」
と彼が言うと
「パジャマとか歯ブラシとかですかね」
「パジャマなんかそこらのスウェットでいいだろう」
その言葉を聞いた綾は大きなため息をつき
「子どもはパジャマでも気にしたりするんですから!
いつもトランクスはいているのに親にブリーフ買ってこられたりしたら、嫌でしょ?」
と言われると納得すような顔をして
「分かった、パジャマとかも気に入ったのにしろ。あと予算だけはオーバーするなよ。俺だって金はあまりないんだからな。」
2人は声をそろえて
「はーい!」
と言ってパジャマを買いに行った。
その間、彼はぐったりとした顔で近くのソファで休憩していた。
ケータイを何気なく開いてみると寺下からメールが入っていた。
『女の子とはどうだ?お前の事だからあのねぇちゃんに任せているだろうけど』
大きなため息をつきながら
『一応服とかの買い物してるよ、我妻だけだと嫌がったから俺も一緒にな』
と送ると爆笑したような絵文字で返信が来た。
そうしている間に2人が買い物を終えて戻って来た。
「じゃあ、事務所に帰るか」
ケータイをポケットにしまい、2人よりも先を歩こうとすると裾をぐっと引っ張られた。
下を見ると、手を握って歩いてほしいというような顔をして手を出していた。
彼はため息をつきながら手を握ると満面の笑みで歩いた。
そんな2人を横で見ていた綾は本当の親子のように思えた。
つづく