9話 大人の会話
綾たちが事務所に戻るとすでに江崎が警察署から帰ってきていた。
「なにか情報はありましたか?」
と彼女が聞くと
「まあ、あったにはあったがなんとも言えないな」
いいような情報がないと表情に出ていた。
そして、彼女の横に居た絵梨は嬉しそうに彼に向かって微笑んだ。
彼女がジュースとお茶を入れて、2人に出した後台所に行き昼食を作り始めた。
その間、少女は客間でお絵かきをして待っていた。
あえて少女の前で何も聞かなかった彼は、昼食を作っている彼女のところに行き
「そっちは変わったことあったのか?」
と聞いた。
「あれっ?用事終えた後、こっちに来て絵梨ちゃんと何か話してたじゃないですか?」
「いや俺はそのまま警察署から事務所に直で帰ってるぞ」
そこで彼女が見た相手が江崎じゃないことに気付いた。
「じゃあ、あれって絵梨ちゃんのお父さんってことかな」
とぼそっと言ったのを彼は聞き逃さなかった。
「公園に行った時に俺と瓜二つみたいな相手を見たんだな!」
「ええ、なんか話をしていたみたいなんですが距離があったので何を話していたかは……」
と聞くと急いで少女のもとに彼は向かった。
「ねぇ、約束ってどんなのしたか覚えてる?」
「パパ忘れちゃったの、明日も公園で会おうって言ったよね」
それを聞いて、彼は明日の同じ時間に本当の父親が娘に会うことを知った。
そのままスマホを取り出し、少女の頭を撫でながら外に出ていった。
「すみません、尾上刑事居ますか?」
『少々お待ちください。』
と言われると保留音が流れ、10秒ほどすると
『お電話代わりました、尾上です。』
「絵梨に父親が接触して来て、明日会うみたいな約束してるみたいだ!」
と当然言われ、きょとんとしたのか無言の時間が流れた。
「だから、会うみたいだからお前に連絡してんだよ!」
『待て待て、それは本当なのか?』
「うちのやつだって見てんだって!約束する瞬間は見てないが・・・・・・」
それを聞いた電話先の尾上は周りに情報を話していた。
『じゃあ、明日俺らも行くから』
と言って電話先では騒がしくなっていた。
「俺も行くから間違っても俺を確保するなよ!」
とだけ言って電話を切った。




