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アマクマノギ  作者: ちゃんそん
6/6

20代男性 5

昼休憩である。

社会人ともなれば良い大人だ。

いかに便利な能力があったところで、今日手に入れたばかりの力ーーしかも、きちんと思考しなければ発動しない力ーーを頻回に使いまくれるかいえばそんなことはない。

自分の仕事をこなしていくことに精一杯で、能力を使って仕事を楽にするということなど考えつかなかった。

そんなこんなで通常の平日を過ごし、あっという間に昼だ。


「何か今日電話対応多すぎなんだけど」

「私は書類が終わんないです」

休憩に入る余裕もなさそうに、道上が答えた。

「今日までだっけ?報告書」

「そうなんですよ〜サボったツケかなー。片倉さんやる?」

「昼いただきまーす」

「くっっそおおおお」

サボったんならしゃーない。

「ほらよ」

「えっくれるの?」

能力で出したカレーパン。これもいつも食べているやつだ。

「女の子にくれるようなものじゃないけど...ありがと片倉さん」

道上はパソコンの画面を見たまま、カレーパンを頬張った。

今日は好感度上げまくりだな!

俺も昼飯に出かけよう。今日だけは、ちょっと豪勢な昼に挑戦だ。


「はーーん...」

会社の屋上、こんなとこ実際誰も使わない。

俺の目線の先には、ランチセットが並んでいる。

ビニールシート、クッション、箸、そしてカツ丼。

この右手は相当出来がいい。

考えを現実にするのは、そこまで難しいことではないようだった。

悪魔に聞いた”死”については、確かにイメージが体に染み付いていない。

死んだこともないし。

死んだ人は見たことあるがな...。

「いただきます」

右手の平を前に向け、少し光ったかと思うとペットボトルのお茶が現れる。

金の心配が要らなくなるな。特に飯においては。

他に何ができるだろう。

この昼休憩の間に、いろいろと試したい。

俺はまた右手を前に出した。

「こーんにちは」

「...!?!!?」

気付くと、昨日の悪魔が隣に座っていた。


「楽しそうなお姿が見えましたので...再度驚かせてしまって申し訳ございません」

「あの下手くそな手紙でも良いから何か言ってから来いよ...」

ニヤニヤ微笑んでいる。

「さあ、どうされますか?契約されますか?」

「今日楽しけりゃもう要らねえよ...」

「ふむ、今日だけでよろしいのですか?

救心情報誌には相変わらずお名前がございますのに」

「そのことだが、強い願いなぞわからん。他を当たった方がよかったな」

「お客様を選ぶ権利は私どもにあります。貴方様に差し上げたかったのでございます」

じゃあ、その願いを教えてくれないか。

俺が強く望んだ何かが、一体どういうものだったのか。

カツ丼を食べながら考えたって思い浮かばない。

悪魔が興味を持つくらい、俺の望みは強いのだろう?

「お聞きになりたいのですか?」

「ああ」

「聞いてしまったら、契約するのと同じことになりますよ」

「悪徳だな」地獄に連れてく準備が完了するってことか。

「それでも、聞いておこうかな。

 お前を拒否するのも少し疲れたし、何か地獄行きで失う物もない気がしてきた」

本当の気持ちだ。

大事にしてる何かなんて、当の昔に消えたんだ。

「案外、往生際が宜しいのですね」

「別に、使ってて害も無さそうだから好きに使わせてもらうだけだ」

悪魔は少し不満そうだったが、懐から取り出した契約書に自身の血判を押した。

「ワタクシの血と混ざることが必要となります」

傷をつけられるようにナイフを置く。

「使い放題か?」

「言い忘れておりましたが、本契約では想像や空想すらも現実にすることができます」





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