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アマクマノギ  作者: ちゃんそん
3/6

会社員 20代男性 3

俺は日中、とある商社にて契約社員として働いている。

28歳にもなって契約社員ってのは不安もあるが、実際のところ今の職場は働きやすく、転職自体が面倒。

営業で地方にも行かされるものの、独り身だから気楽なものだ。

そんな俺が、一体何に不満を持っていると言うのか。


「心の奥底の、強い叫びでございます」

「何も考えてないけどな」

「考えていなくとも、無意識に存在している筈です。”こんなことしたくない””俺は自由でありたい”」

そんなの、誰しも多少思うんじゃないか?

悪魔が、一枚の紙を手渡してきた。

「譲渡契約書...サインしろってか」

「能力の受け渡しに必要なだけです。血判でお願いしたく...」

「急に現れた悪魔と、身に覚えのない願いのために契約なんかできるか。帰ってくれ」

こっちは明日も仕事なんだ。

悪い夢だったということにして、早く寝てしまいたい。

「左様でございますか...では、一日だけお試しで使ってみるというのはいかがでしょう?」

「引き下がれよ、こっちだって営業やってんだ。お前みたいな諦めの悪いやつは契約とれねえぞ」

「一日で消え去る簡易的なものですから。髪の毛一本だけ頂ければオウケイでございます」

引き下がる様子はない。

寧ろこちらが苛ついている様子を楽しんでいるようだ。

このままでは寝られない。起きても付きまとわれるかもしれない。

「ちっ」

俺は渋々、髪の毛を一本抜きとり悪魔に渡した。

「これで満足か?とりあえずノルマみたいなモンがあるなら、髪の毛見せりゃ仕事の証拠にゃなるんだろ」

「何と慈悲深い。ありがとうございます」

悪魔はキレイな箱(結婚指輪をいれるような形状だ)を取り出すと、そこにパタンと俺の髪の毛をしまった。

「それでは、明日一日お楽しみくださいませ。目が覚めたら、すぐにお使いいただけます故。

 能力がお気に召しましたら、お呼び立てください」

すぐにでも伺わせていただきます...その言葉を遺し、悪魔は煙となって消えた。


「.........なんなんだ」

本当に何なんだよ。

水を飲み、電気を消し、少しだけ温もりの残る布団へ。

何で俺だったんだ。俺は何を強く望んだ。

「社会への不満...か」

それなりの生活に、満ち足りていると思うのに...。




夢と思いたかったからか?

夢を見た。

上京する前の、高校時代の。

好きだった幼馴染と歩いた畦道が。

今はもう、新しい家々に塞がれて。

俺の思いも塞がれて。

泣いてる誰かが、あの子なのか誰なのか。

俺にはもう判断がつかなかった。

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