表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄=掠奪者、あるいは欲望に従う者  作者: 軌跡
第一章 二度目のトロイア
16/23

第16話 お招き

「っ、アイツ……!」


「ネオプトレモス様!?」


 条件反射で駆け出す身体。

 呼び止めようとするオレステスに、俺は必要事項を大声で返す。


「ヘクトルだ! 戻ってきてる!」


「な――」


 幸い、武器は持ったままだ。迎撃の用意は整っている。

 角に消えたヘクトルを、俺は本能に任せて追跡した。アンドロマケだって外に出てるんだ。また攻めてきたんじゃ、被害は膨らんでしまうかもしれない。


「く……」


 足には自信があったが、なかなかヘクトルには追いつけない。

 つかず離れずの、適切な距離を維持されているような感じ。誘導されていると直感的に理解する。

 もっとも、それで追跡を緩める気はなかった。罠があるなら、まとめて砕けばいいだけの話。それだけの力量があると自信もある。

 槍を強く握って、俺は閑静かんせいな住宅街を駆けていった。


「――」


 追いついた頃には、地下室がある場所からだいぶ離れてしまったと思う。

 俺と向きあうヘクトルは、前回と少しばかり違いがあった。武具の一切を装備していないのだ。至って地味な服装で、顔見知りでなければ正体には気付かないだろう。

 剣呑な雰囲気は少しもない。特別な用事があるような、そんな様子だった。


「……ちょっと、付いてきてくれないかな」


「おいおい、随分と唐突だな。信用しろと?」


「ああ、信用してほしい。君にどうしても見せておきたいものがあるんだ。……長い距離を移動することになるけど、お願いできないかな? 車も用意してるし」


「……」


 どうしたものだろう。

 誘いに乗るのが、どれだけ危険かは分かっている。ましてやヘクトルは策略家。想像を絶する罠が待ち受けていたとしても、不思議はあるまい。

 でも、まあ。罠があれば、丸ごと潰してやると思ったばかりだし。

 虎穴に入らんば虎児を得ず、だ。


「分かった、乗ってやる」


『おいちょっと待て! その男、なんだか面倒くさそうだぞ! いいからさっさと首を跳ねてしまえ! 女を娶る男は私の敵!』


 その理論だと俺も死ぬしかないんですが、それは。

 とりあえず無視して、俺はヘクトルの後を追う。オレステスには帰ってから説明するとしよう。

 町外れにある、迎えの車。

 その武骨なデザインが、荒い道を行くことを示唆していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ