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英雄=掠奪者、あるいは欲望に従う者  作者: 軌跡
第一章 二度目のトロイア
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第15話 こちらも再会

「アンドロマケ!」


 俺がその姿を見つけた時、彼女は外に出てきたばかりだった。

 声に反応して振り向いた彼女は、驚きと困惑が混じったような顔をしている。


「え……」


 どうしてか、アンドロマケは目を見開いて動かない。

 そんな反応をされると、困惑するのは俺も同じだ。だって、そういう表情をされる理由がない。まさか死んだとでも思われてたのか?


「大丈夫か?」


 茫然としている彼女に、俺はそのまま声をかける。


「え、ええ、まあ」


「そうか、良かった。ああ、怪我とかしてないか? 体調は? 大神の一撃だったんだ、少しでも違和感があるなら――」


「ね、ネオプトレモス様」


 アンドロマケは凛として、しかし不安げに顔をあげる。


「私は大丈夫です。ちょっとまだ混乱してますので、一人にさせてもらっても宜しいでしょうか……?」


「あ、ああ。思慮が足りんかったな、スマン」


「いえ……」


 小さな背中をいつも以上に小さくして、アンドロマケは住宅街の中へ入っていく。

 俺も、追いついたオレステスも、彼女を追うことはしなかった。そりゃあ話はしたいけれど、本人の意思を無視するわけにもいかない。


『フられたな。今夜はご馳走だ』


「どうしてそうなるんですかねえ!? 女神だったら慰めるとかしてくださいよ!」


『いやいや、私は処女神だぞ? 男の失恋には、胴上げして喜びを共有するに決まってるだろうが。貴公も付き合え』


「絶対に嫌です」


『遠慮するな。童貞神として祭り上げられるかもしれんぞ?』


「なんですか、その不名誉な神は……そもそも大神が女性に手を出しまくってる時点で、神様として認められなさそうな気がするんですけど?」


『父上は孫にさえ手をだすからなあ……』


 感心しているのやら、呆れているのやら。いまいちハッキリしない抑揚だった。

 俺はオレステスと合流し、地下の方へと戻っていく。


「どうなされたんですか? アンドロマケ様は」


「さあ? 調子が悪いだけじゃないのか?」


「だといいのですが……どうも、僕の顔を見て驚いていたようで」


「オレステスもか?」


「ネオプトレモス様も?」


 奇妙な一致があったものだが、これは何を意味するんだろう?

 男二人で無い知恵を絞ってみるが、肩を竦めるぐらいしかやることはなかった。やっぱり、直に聞くしかないんだろう。まあ無理に聞きだすのはどうかと思うが。


「……ん?」


 そのときだった。

 住宅の陰に、ヘクトルの姿を見つけたのは。

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