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英雄=掠奪者、あるいは欲望に従う者  作者: 軌跡
第一章 二度目のトロイア
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第12話 一瞬の再開

「ヘクトル――!」


 休んでいる暇なんてなかった。俺は即座に立ち上がり、実力の違いを踏まえず飛びかかる。

 彼の表情は冷たい。一度は愛した妻だろうに、何の感慨も湧かないのか?

 それが俺の激情を駆り立てた。いつも以上に荒々しく、力任せの連撃を叩き込む。次の神雷を撃たせる暇など与えるものか。

 腹に目がけて、一閃を叩き込む。


「ぬっ!」


 入った。

 鎧すら引き裂いて、綺麗に一撃が入っている。よろめくヘクトル。滴る血も、俺に手ごたえを感じさせた。

 なんだ、呆気ない。もともと頭脳系の武将だとは聞いていたが、この程度とは。

 しかし。


「げっ、治るのかよ……」


 裂かれた肌も、流れていた血も元通り。鎧の破損だけが残っている。


「加護のお陰でね。……しかし、初戦で突破されるとは驚きだな。さすがはアキレウスの息子といったところか」


「そりゃどうも!」


 俺は奴の腹部を狙って、槍の一撃を走らせる。

 しかし成果に結びつくことはなく、一進一退の攻防がしばらく続いた。ゼウスの雷は落ちてこない。回数に限度があるのか、今は準備中なのか。

 突然聞こえた太い笛の音が、戦いを切り上げる合図だった。


「っ、時間か。悪いがここで失礼させてもらう」


「待ちやがれ……!」


 だが、自動人形どもがここぞとばかりに割り込んでくる。

 ぶち撒けられる銃弾を躱し、俺は次々に残骸を生み出していった。ヘクトルの気配だけが遠くなる。

 一通り片付いた頃には、彼の姿などどこにもなかった。


「……くそっ」


 苛立ちを口にする中で、視界に入るのは痛ましい戦火の痕跡。


「?」


 何か物音が聞こえて、俺は自然と意識を向けた。

 真っ先に湧くのは警戒心だ。残った自動兵器が、俺たちを狙っているのかもしれないし。

 しかし、倒れるように出てきたのは人影で。


「あ、アンドロマケ!?」


 ゼウスの雷撃を受けた筈の彼女が。

 完全な無傷で、俺の目の前に現れた。


「っ、く……」


「お、おい!」


 がっくりと倒れる彼女。

 安心感で胸を撫で下ろしたい一方、驚く気持ちも捨てられなかった。


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