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プロローグ  幸せは長続きしない

 雨に濡れた紫陽花あじさいが可憐に咲きほる梅雨が明け、晴天から降り注がれる日差しが窓に反射し交叉こうさし合う教室の中は、来月に迫る(せまる)修学旅行の話で盛り上がっていた。

男女共に好きなあの子となりたいと話しているグループがあれば、一緒の班になろうねと話していグループやら、女子がどんな水着を着てくるか話して女子から睨まれている奴らなど多様な会話が聞こえて来る。

 八武崎やぶさき 大優まさひろもまた、前の席の浜沢はまざわと修学旅行の話で盛り上がっている一グループである。

 八武崎達は班決めの話を熱心に話している。

大優まさひろはやっぱり由良川ゆらかわさんだよな」

八武崎は照れ隠しをするよに話の話題を変えていく。

「そうだけどさ、てか浜沢って今日アイドルのライブ行くから6時限目早退するって言ってなかったか」

「いやー修学旅行の班ぎめだぜ、ライブどころじゃないだろ。」

「そういうものなのか。てか浜沢って確かーー。」

そんなたわいのない雑談を中断させるように前の扉がガラガラと開き担任が入ってきた。

「ほーら静かにしろ、これから8月にある修学旅行の班決めををするぞ。班決めはくじ引きとする。」 

 たった今高校生活最大と言っても過言ではない学校行事のかなめが神頼みと告げられた教室中が唖然あぜんとし、静まり返っていた。

八武崎と同じことを思っている奴が大半を占めていて担任は相当な罵声を浴びている。

担任は俺らの言葉なんか気にもせず、班決めをするであろう赤と白のラインの入った箱を取り出した。

「班は全部で6班だ、男、女それぞれ3人ずつ計6人だ。生憎俺のクラスは毎回くじ引きだからな。まあ俺のクラスになったのが運の尽きだ。前の奴からどんどん引いてこい。」

 いやいやそれも初耳なのですが。浜沢が俺を励ましてくれようと後ろを向いてきた。

「大優、六分の一の確率で由良川さんとなれるぜ。きっと普通に誘うよりかは確率が高いと思うぜ。」

「励ましてくれてどーも、そうゆうお前こそいいのか。」

「あー、等価交換約束で教えた俺の好きな人は嘘だから気にするなよ。」

「やったぱりお前はロクな奴じゃなかったぜ、後でけちょんけちょんにしてやるからな。」

「そんなに怒るなっつーの、てか俺の番来たからちょっくら行ってくるは。」

 そう言い残すと、浜沢は逃げるように教卓の前に走って行った。

浜沢が変な舞をし始めたが気にしない気にしないっと、多分ツッコンだら負けだ。次は自分の番だと考えたら手足が震えてきた。心身を落ち着かせるため椅子の背凭れ(せもた)に深く腰を掛け天井を見てぼーっとしてると、軽佻けいちょうな足取りで浜沢が帰ってきた。

浜沢は、クラス一可愛い子(俺の中では由良川さんが一番可愛い)となれたらしく上機嫌で自慢しに来てかなりムカつく。

「いやー、マジでこの俺の運を大優まさひろに分けてあげたいくらいだぜ。」

「そんなんたまたまだろうがよ、自分の運命は自分で切り開いていくっつーの。」

浜沢は八武崎の話を聞くと他の奴にも自慢しにいくといい、立ち去っていった。

 八武崎が行くのが遅く担任に呼び出されてしまい重い足取りで教卓に向かっていく。不図ふいに由良川さんが何班であるのか気になり、由良川さんの隣を通って教卓に行くことにした。以外にも机の上に露骨に置いてあった紙、紙には三班と書かれている事を横目で確認し緩めてた足に再び力を入れ直し歩いていく。

いざくじ引きの箱の前に立つと思っていた以上に緊張するし、変な汗がワイシャツを湿らせる。

右腕を箱に突っ込み直感的に一枚選び取り出し高鳴る心臓の鼓動を押し殺し紙を開くと、三班と書かれていて思わず心の底から転び出た叫びが教室中に響きわたった。





 あれから数十分が経ち無事に修学旅行の班決めが終了し、HRホームルームを聞き流し長かった1日も終わった。いつもならすぐに帰るのだが今日は違う、今俺の眼の隣にはあの由良川ゆらかわさんがいる。同じ班になったから勇気を振り絞り声をかけてみたら優しく微笑んで話をしてくれて、せっかくなら話しながら帰ろうよ提案してくれ、たまたま帰宅する方向が同じだったため一緒に帰ることにになって今に至る。

一日に二回も良いことが起こり今日死ぬんじゃないかなってレベルで運を使い果たしたような気がする。   

                   

                 〝幸せすぎる”


 土手沿いを歩いていると由良川さんが何かを見つけたのか指を川に向かって指している。指が示した方向を見ると一匹の子犬流されていた。川の水は梅雨の影響で膨張していて川の流れも荒れていて強く流石さすがに助けられる状態ではい。だが由良川さんは土手を下り子犬がいた方に走って行く、俺も追いかけるように坂を下って走って由良川さんがいるところまで行った。由良川さんは息を切らしながらも俺に話しかけてきた。

「子犬さん助けられないかなぁ、確かあの先は海に繋がってるよね。」

「川が荒れてるから俺じゃ無理だけど助けを探すのはどうかな。」

「「あ」」

二人の声が同時に言った。さっきまでいたはずの子犬が川に沈んでいってしまっている。

「ごめんね八武崎君、私ちょっと行ってくる」

「待って、本当に危なーーーー」

俺の言葉が言い終わる前に由良川さんは川に潜っていってしまった。

荒れ果てた波が由良川さんを襲っていく姿は見ていられなくて俺も川に飛び込んだいく。

川の中は、冷たく荒波のせいで上手くバランスが取れなくクロールでいくら水を掻いてもちっとも前に進めなく流されていく。由良川さんは腕に子犬を抱いていて身動きが取れていない、一向も早く由良川さんの所へ行かなければと思い腕に力をいれるが、先程より風が強く吹き始め波も強くなり始め下へ、下へと引き込まれていく。

やがて二人共体力が尽きて水面からは人の姿が消えていった。


待ってくれ、沈んで逝かないでくれ。


音も無い暗闇の世界で彼の言葉は届くはずも無くただただ沈んで逝く。


腕を伸ばしても彼女の身体は暗闇の底えと沈んで逝く。


さっきまでは身体中に充満していたはずの酸素は今にも絶えそうだ、肺の中は無意識に飲んでいた水で埋め尽くされてる。


この川はこんなにも深かったのだろうか、自分では一体どのくらいの時間沈んでるのか分からない。


意識がだんだん薄れていき、苦しさ、痛さ、恐怖が感じなくなっていく。


暗闇の中でも朗らかに輝いていた彼女の姿も見えなくなり、やがて彼の姿も暗闇の中に飲み込まれていった。




皆さんはじめましてこんにちは。

受験生ですが、妄想を膨らまし楽しく書いていこうと思います。

月2更新を目標に頑張っていきます。

これからも何卒とよろしくお願いします

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