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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な転校生に手を焼く】
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第十一話 おふだの効力



 ファルコン組の面々は、一様に魔法学の教室に移動している。

 私は、独り悪党のような笑みを浮かべて、悦に入っていた。


 フッフッフ! この『授業で当てられないおふだ』を使う時が来た!


 私は魔法学の教室に入って、自分の机の上にそれを飾った。

 一緒に教室に入ってきたジュリアスが、私の隣に座る。

 早速、ジュリアスの目がおふだに留まる。


「それ、ついに試すんだね?」

「うん、これはインチキじゃないような気がするから、絶対に当てられないと思うの!」


 私は可視したせいか、自信満々だった。可視した限りでは、力のありそうな魔法使いが、ものすごく効き目のありそうな呪文をこのおふだにかけていた。

 だから、きっと効き目があるに違いないのだ。


「でも、そのおふだって五百ルビーでしょ? 効き目あるのかな」


 ジュリアスが隣で何か言った気がするが、私の心は高揚していた。こんなにシャード先生の授業が楽しみなのは、今までにないことだ。


 ついにチャイムが鳴り、シャード先生が魔法学の教室に入ってきた。


「席に着きなさい。授業を始める」


 皆は慌てて席に着く。号令がかかり、皆は一斉にデータキューブを開いた。『可視編成』の呪文が教室の中に四散して響き渡った。


「データキューブの百三十ページを開いて。さて、誰に読んでもらおうか?」


 ついに、おふだを試す時が来た!

 私は、無意味にシャード先生を見つめた。これでもかと引き寄せるような視線を送る。当ててくれのアピールだ。

 これで、シャードに当てられなかったら効き目はあるはずだ。

 だが。


 シャードは私へと微笑んだ。完璧に目が合った。


 あれっ?


「では、鳥居、読みなさい」

「えっ?」


 おふだの効き目はないのだろうか。そう思った時、おふだが光った。


「イタッ! イタタ……!?」


 私の頭が急に痛み出した。


「鳥居、どうした?」

「いや、頭が痛くて! イタタ!」


 なにこれ!?

 私の頭は締め付けられるように痛い。

 まさか、このおふだの効力って!?

 このおふだは当てられそうになると、持ち主に頭痛を引き起こさせるのだろうか。


『鳥居~!』


 私の脳裏に、クレア先生の暢気な笑顔が浮かんだ。


「医務室に行ってきます!」

「鳥居!? 待ちなさい!」

「待てません!」


 痛みに耐えきれずに、私はシャード先生を振り切って、魔法学の教室を飛び出した。

 一心不乱に私は医務室まで駆け抜けた。


「クレア先生!」


 一目散に医務室に飛び込むと、アレクシス王子とクレア先生が深刻そうな顔をして喋っている。

 二人は私に気づいて、打たれたように振り向いた。


「鳥居! どうしたの?」

「あ、頭が痛く……ない? あれっ?」


 泣きそうになりながらクレア先生に訴えようとしたが、いつの間にか頭の痛みはなくなっていた。


「どうしたの?」


 クレア先生が面白そうにこちらを見ている。

 ドアが開いてジュリアスが入ってきた。心配して追いかけて来てくれたらしい。


「香姫さん! 大丈夫?」

「『授業で当てられなくなるおふだ』を使ったら、頭痛がして……じっとしていると耐えられなくなって……」

「ああ、鳥居もマジックショップに行ったのね!」

「はい……ジュリアス君と一緒に……」

「頭痛が起きるのも無理はないわ。そのおふだは、いたずらに使うおふだだもの。今日も何人か医務室に駆け込んできたわ」

「えっ? ジュリアス君……もしかして私の事が嫌い……なの?」


 少し引いてジュリアスを見ると、彼は大慌てになった。


「そんなわけないでしょ? 香姫さんが欲しそうにしてたから!」


 ジュリアスは意地悪を言ってくるが、私の事が嫌いではないらしい。一応は友達だと思ってくれているんだろうか。


「コーナーに書いてなかった? いたずら専用って?」と、クレア先生。

「書いてなかったけど……」


 私とジュリアスは顔を見合わせた。


「何か、お店側で手違いがあったんじゃない?」

「じゃあ、香姫さんは貧乏くじ引いちゃったわけですね?」

「ええーっ!?」


 じゃあ、私は店側の手違いで、頭痛になったとそう言うわけだ。抗議の声をあげたいが、その店員はここにはいない。


「香姫さん、とんだ災難でしたね。私が仇をとってあげたいところです」

「アレクシス様……」


 アレクシス王子は珍しく私を心配してくれているようだ。アレクシス王子はもしかすると優しい方なのかも――。そんな事を思い、情にほだされそうになったとき。


「ところで、バージルは魔法学校にいましたか?」


 私は苛立ちを覚えてしまった。

 要するにアレクシス王子は、例によって私の事を心配してなどなく、バージルの事に協力してほしいだけなのだ。


「いませんでした! もしかしたら、魔法学校にいないんじゃないかな?」

「そう、ですか……?」


 アレクシス王子の視線が私を探るように見ている。私はそっと目をそらした。


「アレクシス様! お話があります!」


 ジュリアスが、アレクシス王子の前で跪いた。

 何事が始まるのだろうと、私はジュリアスを傍観していた。ジュリアスの視線と私の視線がかち合う。


「香姫さん、早く魔法学の教室に帰った方が良いんじゃない? シャード先生、お冠だよ?」

「ええっ!? 大変だぁ!」


 私は棒読みで驚いて見せると、そそくさと医務室から退散した。

 一時は、協力しようと思ったが、そんな気持ちもなくなってしまったのだった。



・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜



「ジュリアス・シェイファー、お話とは何でしょう?」

「キャロルのかたき討ちの事です」


 ジュリアスとアレクシス王子が話を展開しているのを、こっそりと聞いている者がいた。バージル少年だ。

 自分の姿が全然見えていないのを確認すると、ドアをすり抜けて、香姫の後姿を一人眺めているのだった。


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