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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第一章◆【鳥居香姫は不可思議な転生とジュリアスに戸惑う】
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第七話 正体不明のジュリアス

 唯一答えられる質問を的を射たように訊かれて驚いた。確実に私の事だ。中身は『鳥居香姫』だが、外見は『リリーシャ・ローランド』なのだから。

 この人は、リリーシャの事を確実に探している。


 私の事です!


 私は素直に答えようと思った。

 でも、待ってほしい。この人が、味方だと決まったわけじゃない。平和に慣れていた私の脳みそが、現実を思い出して警戒し始める。そう、ここは平和な日本ではない。危険極まりない異世界なのだ。

 だとすると、結論は一つ。


「えっと、知りません……。ごめんなさい……」


 私は、素知らぬ顔をして通り過ぎようとした。だが、彼に腕を掴まれてしまった。


「えっ!?」


 驚いていると、彼はフッと笑った。青い瞳の奥に意地悪そうな光が宿っている。


「嘘だな」

「なんで! 私は本当に」


 しどろもどろになっている私に、彼は持っていたデータキューブを見せる。

 絶句もいいところだった。

 光の画面に画像がホログラムのように立体的に浮かんでいて、その画像こそが、リリーシャ・ローランドの写真だったからだ。つまり、最初からこの男子は私の事をリリーシャだと知って話しかけていたのだ。


「不可視編成」


 彼は呪文らしき低音と高音の言葉を同時に呟いた。すると、データキューブは力を失い小さな立方体に戻る。それを、易々とポケットの中に仕舞った。


「僕は、ジュリアス・シェイファー。ジュリアスって呼んで」

「ジュリアス君……?」


 露骨に困った表情を返す私のことを、彼は何も気に懸けていない様子だ。


「よろしく!」

「う、よろしく……」


 彼は、改めて手を差し出してきた。私は、その手を握り返す。

 彼の右の袖下にクラシックな金色の腕輪が覗いていた。男子が付けるには少し女っぽい腕輪だ。その時は、そのことを特に感じ入ることもなく、追求しようとも思わなかった。

 しかし、この出会いが私とジュリアス・シェイファーとの長い付き合いの始まりだったのである。


「えっと……私に何か用があるの?」

「ああ、僕はリリーシャ・ローランドに付きまといに王都から来たんだ」

「そうなの……って、ええっ!?」


 リリーシャに付きまといに来た? しかも、王都からわざわざ? リリーシャはフランス人形のように色白で美人だし、付きまとわれるのは分からないでもないけど……。現在のリリーシャ・ローランドは私、鳥居香姫なのだ。冗談じゃない。ジュリアスは私に視線を合わせたまま、口端に笑みを浮かべている。


「……リリーシャ、目に不調はないか?」

「えっ? 目に不調? ないよ?」


 何を聞かれると思ったら。私の体調でも心配してくれているのか。私の答えに満足したのか、ジュリアスは離れていく。

 だが、彼は眉をひそめていた。


「おかしいな。君は、『可視使い』になったんだよね?」

「えっ!?」

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