第十一話 香姫VS蟻地獄のデュラン2
「可視編成!」
操られたクェンティンが放った魔法弾が私に迫る。
壊れたように震える足では避けることはできない。
「そうだ!」
私はとっさに、手に持っていたキーホルダーを目の前に翳した。
すると、魔法弾はキーホルダーに弾かれて跳ね返ったではないか。まるで、盾のように。
「やっぱり思った通りだ!」
どうやっても、開かなかったキーホルダー。もしかすると、どんな攻撃魔法にも耐えられるようにできているのではないかと考えたのだ。そして、その勘は幸いなことに当たっていた。
「もしかしたら!」
私は、構えたキーホルダーの角度を変えた。
魔法弾はそれに跳ね返り、レリック=グレイの身体に入っているデュランの魂に吸い込まれるように直撃した。
「ぎゃあああああああああ!」
すると、デュランの魂はレリックグレイの身体から飛び出た。私は続けざまにキーホルダーの角度を変えてデュランの魂に当てた。
デュランの魂は蒸発するように消滅した。
「やった……! デュランを倒した!」
レリック=グレイの身体に直撃したクェンティンの魔法は、違う方にも作用した。デュランが食べていたレリック=グレイの魂を吐き出したのだ。
吐き出されたレリックグレイの魂はそのまま、彼の身体に吸い込まれた。それが、どういう意味を成すのか、私たちはまだ気づかない。
「……俺は?」
「クェンティン君! 元に戻ったんだね!」
「香姫!?」
クェンティンは駆け寄ってくると、私の服についている土を払ってくれた。
「傷だらけじゃないか! まさか、俺がやったのか!?」
「えへへ、大丈夫だよ。リリーシャのキーホルダーが守ってくれたから!」
「香姫……」
クェンティンは安堵して息を吐き出した。
「それに私、デュランを倒したの!」
「すごいじゃないか!」
私とクェンティンは手に手を取り合って喜び合った。だが、そのお祝いムードは長くは続かなかった。
「ううっ……ひどい目に遭った……」
「え……?」
『……ッ!?』
私とクェンティンは第三者の声にぎくりとして、反射的に振り返る。
そこには、本物のレリック=グレイが目を覚ましていた。




