表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第四章◆【鳥居香姫は不可思議な魔導師との対決で復讐に燃える】
58/226

第四話 シャード先生の特別授業

 チャイムが鳴り終わる。暫くするとシャード先生が魔法学の教室のドアを開けて入ってきた。

 私は、慌てて席に着く。すると、隣の席のジュリアスが「あ!」と声を上げた。


「ジュリアス君、どうしたの?」

「いや……すっかり忘れていたと思って……」

「何を?」


 まったく、見当もつかなかった。けれど、答えは私の目の前にいた。シャード先生が、自分に気づかせるように名簿で机を叩いていていた。


「リリーシャ・ローランド。課題はやってきただろうな?」

「あっ!」


 鈍い私は、その事にやっと気が付いた。イザベラの事でごたごたしていて、すっかり課題の事を失念していた。私の返答を聞いたシャード先生の顔つきが険しくなった。私の思わず上げた私の声が何を意味しているのか、シャード先生が気付かないはずがない。


「あっとはなんだ? まさか、一ページもやってきてないのか?」

「すみません……一ページもしてません……」


 シャード先生は、フッと笑った。私も引きつりながら愛想笑いを浮かべる。

 だが、シャードの笑い顔は、いきなり般若のごとく変貌した。


「いい度胸だ。放課後、みっちり補習してやる」

「ええーっ!」

「話したいこともあるし、いい機会だ。楽しみにしていろ」


 難解な魔法学の授業と、得体のしれないシャード先生。百歩譲っても楽しみにできるはずなどない。

 そして、今日の授業に身が入らないまま、ついにその時がやってきたのだった。


・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜



 放課後。魔法学の教室の付近は、生徒の声もあまりしなくて閑散としている。

 ジュリアスとクェンティンが、魔法学の教室まで私を送ってくれた。彼らの言うことには、私から目を離すと、いつも事件に巻き込まれるかららしい。


「ジュリアス君、クェンティン君、もう行っちゃうの?」

「ああ。今日は、特に用がないからね」

「そっか、今日は補習だったな」

「う、うん」


 こんなにひっそりとしている魔法学の教室で、シャード先生と二人きりで補習とは、果たして本当に無事で帰れるのだろうか。シャード先生は私が倒れた時にずっと付き添ってくれていたけれど。あの厳しい指導がどうにも私には合わないのだ。


「まあ、取って食われないって」


 クェンティンが私の緊張を解こうとした。

 ジュリアスもクェンティンも、シャード先生の事はちっとも警戒していないらしい。暢気に笑っている。私にとっては笑い事じゃないけど。


「でも、シャード先生は私の事恨んでるかもしれないから……」

「そうだね、もしかしたら煮て食われるかもしれないけどね」

「ええっ!?」


 ジュリアスが、意地悪くおどけた。ちっとも冗談に聞こえない。

 その後ろで、咳ばらいが聞こえた。私は振り向いて泣きそうになった。

 最悪なことに、開いたドアの向こうにはシャード先生が立っていたのだ。


「誰が、煮て食うんだ?」

「なんでもありません……っ!」

「ウワサをすれば影だ。じゃあね」


 ジュリアスは余計な事を言い残して手を振った。


「またな、リリーシャ」


 クェンティンもサッと手を上げると、二人は魔法学の教室から退室した。

 そんな……!

 私は二人の残像にすがるように手を伸ばしたまま固まっていた。


「席に着きなさい」


 シャードの声に震えて、私はぎこちない仕草で席に着く。シャード先生も椅子を持って来ると、私の前に腰かけた。


「データキューブは?」

「あ、そうだった……!」


 データキューブを取り出すと、シャード先生が呪文を唱えて開いてくれた。私は、ノートとペンをスタンバイする。


「鳥居、今日は、お前のために特別授業をしてやろう」


 シャード先生は、フッと笑った。特別授業。その言葉を深読みしてしまう私は疲れているのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご感想・評価をお待ちしております。ポチッとお願いします→小説家になろう 勝手にランキングcont_access.php?citi_cont_id=186029793&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ