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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三章◆【鳥居香姫は不可思議な景山澄恋との出会いを楽観視する】
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第十五話 パスワードは、××?*

 私たちは、何とかアリヴィナの攻撃をかわして、また三人で集まった。


「デュランが考えそうなパスワードって何だ?」

「皆目見当もつかないよ!」


 アリヴィナの身体を乗っ取ったウォーグが、私たちに向かって襲い掛かってきた。口から電子音のような音が漏れたかと思うと、それは膨れ上がり光の塊になる。そして、ウォーグはそれをこちらに放った。


「うわああ!」

「きゃああ!」


 続けざまに、ウォーグは光弾を連射する。その光弾は、内壁にぶち当たり、けたたましい音を立てた。けれども、建物はびくともしていない。校舎には防御の魔法がたっぷりとかけられているようだ。それをいいことに、アリヴィナの姿をしたウォーグは立て続けに攻撃を展開していた。パスワードを考える暇もなく、防御するしかできない。


「さっさと負けろ!」


 後ろで、イザベラの姿をしたデュランが大笑いしている。


「このままじゃ、相手の思うつぼだよ!」


 その時、後ろでドアが開く音がして、誰かが地下室の中に入ってきた。


「お前ら、何やってんの?」

「が、ガーサイド君!?」


 姿を現したのは、アミアン・ガーサイドだった。一人調子外れて、キョトンとしている。アリヴィナは攻撃するのを止めた。そして、新たな人物に警戒して間合いを取っている。


「実は、アリヴィナがウォーグに身体を乗っ取られて……」

「ふーん、そうかよ……」


 ガーサイドは、ジト目でアリヴィナを見て呆れている。特に心配した様子はない。思わずこちらが心配になってくるほどに。ガーサイドが黒幕というわけではなさそうだが。


「じゃあ、俺が元に戻してやる! 可視編成!」

「キャン!?」


 ガーサイドは予告なしに、アリヴィナに向かって魔法弾を放った。魔法弾はアリヴィナの身体に命中してしまった。ガーサイドは、「やりぃ!」と、命中して喜んでいる。


「ちょちょちょちょっと、ガーサイド君!?」


 あまりの対応に、私たちは唖然とするばかりだ。


「そんなことしていいのか!?」

「ロイドにもしものことがあったら!」


 クェンティンとジュリアスも、無茶苦茶なガーサイドに焦っている。だが、ガーサイドは一人落ち着いている。


「アリヴィナが、この程度で怪我するとでも? 冗談!」


 確かに、アリヴィナはリリーシャと教室で対立していただけあって、その程度でやられるとは考えられないが。ガーサイドはニヤリと笑って、呪文を連打した。


「あーっはっはっはっは! 今こそ、アリヴィナに積年の恨みを! 可視編成、可視編成、可視編成ーッッッ!」

「えええー!?」


 轟音の中に、アリヴィナは消えた。

 私たちはついて行けずに、その場に突っ立っていた。暴風にローブがはためく。

 煙が引くと、アリヴィナは四つん這いで逃げ惑っていた。


「キャインキャイン!」


 確かに、アリヴィナの身体は強靭で、怪我をした様子はない。だが、中に入っているウォーグは思いのほか驚愕したようだ。


「よーし……」


 ガーサイドが、手をボキボキ鳴らしながら、アリヴィナの前に立つ。


「アリヴィナ、お手!」

「キャ……キャン!」


 素直にアリヴィナは、右手をガーサイドの左手に置いた。降参して、ガーサイドを主として認めたらしい。


「よーしよしよし! 中身が違うと良い子だなぁ~」


 ガーサイドは、笑顔でアリヴィナの頭をなでている。ウォーグはすっかり、ガーサイドに懐いて、「キューンキューン」と甘えた声を出している。

 しかしこれはまるで――。


「犬だ」ジュリアスが呟いた。

「犬ね」私も頷く。

「確かに、もとは狼だから、似たようなもんかも」と、クェンティンも笑っている。


「こらこら、くすぐったいって!」


 ウォーグとガーサイドはじゃれ合って笑っている。


 その様子を見て、デュランはイザベラの姿で感心したように口笛を吹いていた。


「今のうちに!」

「蟻地獄のデュラン、ハモンドを返してもらう!」


 ジュリアスとクェンティンが私の前に出た。椅子に座って傍観していたデュランも立ち上がる。


「やれるもんなら、やってみな! 可視編成!」

「可視編成!」


 デュランとジュリアスの魔法弾がぶつかって弾けた。


「リリーシャ! 俺たちが何とかしているうちに、可視して!」

「う、うん!」


 クェンティンは私に指示すると、魔法弾を繰り出した。ドンパチやっている中で、私は疑問を持って周りを可視する。

 しかしイザベラを見ても、イザベラの裸が見えるだけで、可視する意味がない。


「どうしたら……」


 イザベラの持ち物がここにあるわけでもない。アリヴィナの持ち物もここには――。アリヴィナの方を振り返ると、ガーサイドと目が合い、ぎくりとなった。


「リリーシャ、可視って何だ?」

「それはその……」


 ガーサイドに打ち明けてもいいのだろうか。ガーサイドに伝わると、アリヴィナにも伝わるんじゃ……面倒なことになりはしないだろうか。躊躇した私の気持ちを汲んでくれたのか、ガーサイドは視線を外した。


「役に立つかどうかわからないけど、アリヴィナ、見慣れない首輪してる」

「それだ! それ頂戴!」


 私は、首輪をガーサイドから受け取って可視した。これは何時間前ぐらいだろうか。

 イザベラの姿をしたデュランが、眠っているアリヴィナと一緒にいる。眠っているアリヴィナに首輪をした様子が見えた。


『よし、アリヴィナ。首輪とっても似合ってるぜ~?』


 暢気にデュランは眠ったアリヴィナ相手に話している。

 徐に、デュランは視線を上げた。


『今頃、この首輪を可視しているだろなぁ? なあ、香姫?』

「……っ!?」


 数時間前のデュランと目が合い、私は驚いた。流石は知能犯のデュランだ。彼は、私が可視することを予測して、わざと首輪というアイテムを残したのだ。そして、デュランは続けた。


『でも、残念だったな。パスワードは最初から存在しない』

「えっ!?」


 私は愕然として、立ちすくんだ。何と言った?


『つまり、パスワードはないんだよ! アリヴィナとイザベラは永遠に元に戻らない! あはははは! 残念だったな!』

「そんな……!? パスワードは最初から存在しない……?」

「なんだって?」


 ガーサイドが私の呟きに反応する。私は何と返せばいいのか分からずに、言葉を失っていた。


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