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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三章◆【鳥居香姫は不可思議な景山澄恋との出会いを楽観視する】
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第十四話 蟻地獄のデュラン

 目の前にいるイザベラは、外見と中身が違う。彼女の中にいるのは、恐らく妖魔の賞金首だ。


「蟻地獄のデュラン! アレクシス王子の真似はもうやめたら?」

「あれ?」


 鎌をかけると、デュランは面食らったように目を瞬いた。そして、肩をすくめて残念がった。


「なんだ、バレてたのか。香姫がここにいるってことは、腕輪の事もうまくいかなかったのか……」

「そうよ! あんたのせいで、拷問されるところだったんだから!」


 観念したようで、デュランは口調まで替えた。やはり、アレクシス王子の真似も、腕輪の罠も、デュランの企みだったのか。


「失敗か……チッ……処刑されたら、香姫の魂を食べてやろうと思ったんだが……」


 デュランは、舌打ちして悔しそうだ。外見はイザベラなのにすっかり別人だ。でも、デュランのセリフのお蔭で、アレクシス王子の言っていたことが立証された。やはりアレクシス王子は、私を蟻地獄のデュランから守ってくれていたのだ。


「お前が、俺のリリーシャを殺したのか!?」と、クェンティンが怒鳴った。

「人聞き悪いことを言ってんじゃねーぞ? お前のリリーシャなんて知らない。恐らく、他の妖魔がやったんじゃねぇの?」


 他の妖魔……? 蟻地獄のデュランじゃないのか。それを聞いても、クェンティンの怒りは収まることを知らない。


「妖魔なら、誰だって一緒だ! 僕たちが取っ捕まえて、軍警に突き出してやる!」

「ふーん、できるもんならやってみな! そんなことより、また俺と一緒にゲームをしようぜ?」

「ゲームですって?」


 蟻地獄のデュランはイザベラの顔でニヤリと笑った。また、クェンティンが乗っ取られた時のように、デュランに踊らされそうな嫌な予感がする。


「名付けて、『アリヴィナとイザベラを元に戻そうゲーム』! 可視編成!」


 デュランが右足をダンと踏みしめると、そこから見る見るうちに景色が変わっていく。それは、コンクリートの床から始まり、壁を変え、天井に至った。見覚えのある外観だ。遺跡の洞窟のような装いに私は既視感を感じた。


「これって!?」

「じゃーん、フォーネの遺跡と景色を入れ替えました~。雰囲気出るだろ~?」


 やはり、フォーネの遺跡だったのか。それにこの内部は、ビートン先生の野外授業で迷った時に見た、あの部屋そのままだった。


「それでこれだ! 可視編成!」


 風が巻き起こり、アリヴィナが姿を現した。


「アリヴィナさん!」

「待って、様子が変だ!」


 駆け寄ろうとした私を、ジュリアスが止めた。

 アリヴィナは、カッと目を見開いた。そして、四つん這いになって、地面に爪を立てた。そして、唸り声と共に、よだれを垂らす。これはどう考えても、アリヴィナの中身ではない。


「ど、どうなってるの!?」

「実は、アリヴィナの魂とウォーグの魂を入れ替えてみたんだな、これが」

「ウォーグ……?」

「ウォーグってまさか!」


 クェンティンは驚愕している。ジュリアスも、神妙に頷いた。


「ああ、別名、魔狼と呼ばれる魔獣だ」

「グルルルル……!」


 アリヴィナの姿をしたウォーグは、私たちに襲い掛かるべく間合いを計っているようだ。


「お前たちが勝ったら全員解放してやる。でもな、お前たちが負けたらイザベラとアリヴィナ、そしてお前らの魂を食べさせてもらう。言っておくが、拒否はお前らの負けだ。魂は例によって、キーホルダーの中だ。ほら!」


 デュランは、私たちにアリヴィナとイザベラの魂の入った、小さなデータキューブのキーホルダーを投げて寄越した。

 私は、一つを何とか受け止めることに成功した。もう一つは、ジュリアスが受け取ってくれた。


「ロイドとハモンドが言いそうなパスワードを何とか考えよう!」

「うん!」


 クェンティンの言葉に、デュランはチチチと指を振った。


「違うんだなぁ、今回のパスワードは俺が決めたんだ~」

「なんですって!?」


 そんなこと到底分かるはずがない。だが、デュランは容赦ない。


「文句は言わせねえ! さあ、ゲームスタートだ!」


 デュランが合図すると、アリヴィナが飛び掛かってきた。

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