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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三章◆【鳥居香姫は不可思議な景山澄恋との出会いを楽観視する】
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第七話 アリヴィナVSイザベラ

 しかし、水を差したのは他でもないビートン先生だった。


「感動の再会よりもお説教が先です! どうして私の言いつけを守らなかったのですか!」


 普段は優しいビートン先生が、鬼のように怒っている。怒りで顔が真っ赤になっていることから、相当私のことで心配をかけたのだと知った。


「実は……!」


 私はありのままをビートン先生に話した。魔法陣を見ていると、急に目の前を女の幽霊が横ぎったこと。そして、幽霊を見つめていると意識が薄れて、気が付くと知らない洞窟の部屋に来ていたことを。

 ビートン先生の顔から赤みが消えた。ビートン先生の怒りが沈静化した代わりに、彼は複雑そうな表情を浮かべた。


「酷い言い訳だこと!」

「えっ!?」


 話に割り込んできたのは、昨日友達宣言をしたばかりのイザベラだ。ビートン先生の複雑な表情は、私を信用してないからだと理解した。あまりの事に、イザベラに何を言われたのか、すぐに呑み込めなかった。彼女なりのギャグじゃないのか。それにしては、私を見る瞳に険がある。イザベラは鬼の首をとったように笑っていた。


「自分で勝手に出て行っただけじゃない。幽霊なんて嘘なんでしょ? リリーシャさん」


 私の心臓がドクンと鳴った。


「う、嘘なんかついていません!」


 慌てて弁解したが、自分の言葉に信憑性がないことは誰が聞いても明らかだ。クラスメイト達も幻滅したような目で私を見ている。一体、イザベラは何を言っているのだろう。てっきり私の味方をしてくれると思ったのに。


「私、誰がやったのか見当がついてます。ハモンドが可視編成でリリーシャを。違うなら、どうしてリリーシャを止めなかったのか理由が分かりません」


 幸いなことに、アリヴィナは私の味方をしてくれているようだった。

 そして、イザベラに裏切られたショックでふら付いた私を支えてくれたジュリアスとクェンティンも。


「っ……!」

「大丈夫か、リリーシャ」


 絶句するしかできない。あの幽霊は可視編成でイザベラが出したものなのだろうか。ジュリアスとクェンティンにフラれた腹いせに、私を陥れようとしたのだろうか。

 再び泣きそうになっている私を、イザベラは一瞥してフンと鼻で笑った。


「言いがかりはよしてくれないかしら、ロイドさん。勝手に出て行ったのはリリーシャさんじゃなくて?」

「言いがかり? イザベラはリリーシャが居なくなるのを見て見ぬふりしたんだ!」


 アリヴィナとイザベラはにらみ合って、火花を散らしている。

 それを止めたのは、ビートン先生だった。


「止めなさい! とりあえず、見学は中止です! 魔法学校に帰ります!」


 友達に裏切られてしまった。一人泣きそうになっていると、ビートン先生は更に追い打ちをかけた。


「それから、リリーシャ・ローランドは言いつけを守らなかった罰として、古代魔法の問題集を十ページ分解いて明日の朝までに提出しなさい!」

「えっ!? は、はい……」


 私はただ返事するのみだった。ビートン先生は相当腹を立てているらしい。


「ビートン先生は、リリーシャの諸事情を知らないんだよ」と、ジュリアス。

「記憶喪失の『他の』ことをな」


 クェンティンがウインクしておどけた。どうやらビートン先生は、私が可視使いだということを知らないらしい。


「後で、僕も問題集手伝ってあげるよ」

「俺も出来ることならお手伝いしますよ、お嬢さん!」

「あ、ありがとう!」


 隣で、ジュリアスとクェンティンが慰めてくれたので、私の心は少しばかり軽くなった。

 一方、火花を散らした女二人の呪縛は解けていない。アリヴィナとイザベラは、にらみ合ったままで動かなかった。

 ガーサイドがアリヴィナに声をかけようとしたとき、イザベラが動いた。


「ロイドさん、後で、私との決闘受けてくれるかしら? 私、クラスの主導権が欲しいの」

「良いわ。その勝負、受けて立つ!」

「アリヴィナさん……!?」


 私は驚いて思わずアリヴィナに声をかけていた。


「主導権ということは、アリヴィナさんが負けると、クラスを仕切っていた権利をイザベラに受け渡さないといけないんじゃ……?」


 心配している私にアリヴィナは不敵に笑った。


「リリーシャ、大丈夫だから安心しな! 私、ハモンドが許せないんだ!」

「アリヴィナさん……!」


 思わず「姉御!」と慕いたくなるような懐の広さ。私は、アリヴィナを頼もしく思った。


「じゃあ、放課後グラウンドで待っていますわ!」

「分かった!」


 でも、負けたりしないよね……? 雲行きが怪しくなってきた気がするのは気のせいだろうか。

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