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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三章◆【鳥居香姫は不可思議な景山澄恋との出会いを楽観視する】
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第四話 イザベラ・ハモンドの告白*

 ハモンドは、腰より長いストレートの金髪を持ち、頭にはヘアバンドをしている。背の高さはリリーシャとあまり変わらない。品のある清楚な女の子だ。


 ハモンドはジュリアスと目が合うと頬を染めて、震える手をもう片方の手で鎮めている。そして、意を決して身を乗り出した。


「ジュリアス様! お話があります!」


 私は彼女を唖然として見上げていた。今まさに食べようとしていたフォークに巻きつけたパスタが、するりと解けて皿の上に落ちた。彼女がジュリアスを様付けで呼んだことに驚いたのだ。


 ジュリアスはジュリアスで面倒臭そうだ。人を寄せ付けない空気を醸し出しながら、ソファに座ったままハモンドを見上げている。

 そんな空気を出しているものだから、少女は臆したらしい。


「……何かな?」

「ここではちょっと……」


 ハモンドの声は尻すぼみになった。そして、彼女はとうとううつむいた。ジュリアスは、嘆息すると立ち上がる。


「良いよ、廊下で話そう」

「はい!」


 そして、二人は医務室から退室した。

 私は閉まったドアの方を見ながら、クリームパスタを口の中いっぱいに詰め込んだ。

 ジュリアスが不機嫌なのは、食事を邪魔されたからかもしれない。私なら食事の最中に席を立つのは嫌だ。


「あの人ジュリアス君の事様付けしてたけど、ジュリアス君ってもしかして貴族なの?」


 私が言ったことが笑いのツボを得ていたらしく、クェンティンとクレア先生は吹き出した。


「やーね、好きだから様付けするんじゃないの? つまり呼び出されたのは愛の告白をするからよ!」

「ええっ!? そうなんですか!?」


 やっとそれで私は、ジュリアスが様付けされていた理由を知った。つまり、私が初恋の人を好きなのと同じ道理なのだ。好きな人を崇拝する気持ちは分からなくもないけど……。どうして、ハモンドはジュリアス君が好きなのだろう。彼は、あんなに無愛想で意地悪なのに。無言で白身魚を頬張る私を、クェンティンが複雑そうな顔で見ていた。


「リリーシャは気になるの?」

「……別に?」


 私には、日本に好きな人がいるので、ジュリアスの恋愛に干渉するつもりはない。でも、何となく面白くないのは何故だろう。そんな私を、クェンティンが複雑そうな顔で見ている。

 そうこうしているうちに、ジュリアスが戻ってきた。


「シェイファー、もう話は済んだの? 早いね?」

「ああ」

「……ジュリアス君、告白されたの?」

「そういうことだね。ところで、どこの誰がモテないって?」


 ジュリアスは得意げだった。あんなに、彼女の話を聞くのを嫌がっていたのに調子がいい。


「ああ、ハモンドが、リリーシャのことを呼んでたよ」

「ええっ? 私に何の用だろ……」


 恐る恐る廊下の外に出る。ハモンドは、魔法灯の明かりから少し外れた廊下の隅に立っている。


「えーと、ハモンドさん?」

「……リリーシャさん、私とお友達になってくれません?」

「えっ、お友達?」


 いきなりイザベラに手を握られて、私は焦った。

 お友達になりたいと言ったのか。


「ええ、ジュリアス様と仲の良いリリーシャさんにお近づきになりたいのですわ」

「良いけど……私でいいのかな?」

「ええ、勿論よ! 後、私の事はイザベラと呼んで?」

「うん! イザベラさん、よろしく!」


 私は友達ができたことを喜んでいた。イザベラが何を考えているのかも、その時は全く考えていなかったのだ。


 それから、私は寮の自室に帰った。


 私は、クェンティンのパスワードを言い当てたことを思い出していた。

 またリリーシャの手を可視すれば、彼女が殺された時の事を見つけることができるかもしれない。

 思い切って、リリーシャの手を可視してみた。

 リリーシャの身体には、強い想いが残るらしく、クェンティンの事が大半を占めている。それでも、しつこく可視していると、いきなり、頭に衝撃が走った。リリーシャは誰かに殴られたらしい。強い痛みに、私は倒れた。ついに犯人の顔を見ることはできなかった。


 気が付くと朝になっていた。痛みは消えて、何事もなかったかのように元気だ。やはり、私は残留思念を感じただけなのだ。強く感じたために、私は気絶してしまっただけだったのだ。


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