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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三章◆【鳥居香姫は不可思議な景山澄恋との出会いを楽観視する】
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第二話 ジュリアスの目的

 二人は死角でにらみ合っていたので、当の私が険悪な空気に気づくわけもない。その火花の元を断ち切るように切り出したのはジュリアスだった。


「ちょっと、ノースブルッグに話があるんだけどいいか?」

「別にかまわないよ?」

「外で話そう」

「ああ」

「私も行って良い?」


 二人が行くなら私も付いて行くのが当然と思っていた。だから、許可をくれることを前提で訊いたのだが。


『ダメだ!』


 二人は断固として私を拒否したのだ。彼らの顔が般若にそっくりになり、背後にに稲光まで見えた。険悪な空気がこちらに向いていると錯覚して、私は臆してしまった。


「えっ……! ど、どうして!?」

「ノースブルッグに大事な話があるからだよ」

「そういうわけだから」

「ええ~っ!」


 声を上げる私を無視して、二人は医務室から退室した。

 話とは何だろう。純粋に興味がある。しかし、二人が行くなら私も同伴するのが当然とばかりに思っていたのに、拒否されてしまったのだった。



・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜



 廊下を生徒たちが追い駆けっこしながら通り過ぎていく。ジュリアスはそれを一瞥して、クェンティンの方に視線を戻していた。その廊下の窓枠にクェンティンは腰かけている。ジュリアスが言葉を選んでいる内に、生徒たちはいなくなっていた。


「……何時の間にリリーシャと友達になったんだ?」


 クェンティンは苦笑した。


「そんなことをわざわざ言いに呼び出したのかよ?」


 目的は他にあるんじゃないのかと、クェンティンの目が探っている。勿論、ジュリアスの目的はそれではない。


「答えろよ」


 命令するが、クェンティンは以前のように激怒した様子もない。リリーシャと仲良くなったことで、心に余裕ができたのかもしれなかった。


「そうだよ。リリーシャの事は失った今でも忘れられない。でも、リリーシャの姿をしている香姫を見ていると、心が安らぐんだ。以前のようにリリーシャと話しているような気分になってさ」


 どうやらクェンティンは、ジュリアスもリリーシャの秘密を知っていると思っているらしい。さらりと『香姫』という固有名詞が出てきた。


「……リリーシャの代わりってわけか? 『鳥居香姫』が?」

「ああ。今はそうだよ。でも、香姫は良い子だから、これから恋に発展するかもしれないし、しないかもしれない」


 ジュリアスが黙っているので、クェンティンは用が済んだと感じたようだ。

 おそらくクェンティンは、自分の感情が大したものじゃないと知って、ジュリアスが安心したと思っているのだろう。


「話ってそれだけか?」

「ああ、手間取らせたな」

「俺、先に夕食済ませるから。香姫……いや、リリーシャに言っておいてくれ」

「ああ」

「じゃあな」


 クェンティンは、穏やかに去っていった。一方で、ジュリアスは満足している。クェンティンから情報を聞き出せたからだ。


「香姫……。鳥居香姫か……」


 やはり、あのリリーシャは鳥居香姫だった。以前、香姫にその事を告白させようとして困らせてしまったから、一時期は訊くことを諦めたのだ。ジュリアスは、嬉しくなって頬を緩めた。


 しかし、その事を香姫に確認するには、一つ問題がある。自分の事を話さなければならないからだ。例え言っても信じてもらえないに違いない。


「どうすればいい……?」


 ジュリアスが考えあぐねていると、後ろから誰かが駆けてきた。

 振り返ると、アリヴィナ・ロイドが息を切らしていた。何かあったのだろうか。


「ちょっと、ジュリアス!」

「どうした、ロイド?」

「リリーシャが落ち込んでいるよ!」

「えっ?」


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