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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二章◆【鳥居香姫は不可思議な黒幕とクェンティンに動揺する】
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第十三話 二章完結 和解

 丁度その時、シャッターが開いて太陽の光が入ってきた。もう、夕暮れ時になっていた。日の光が赤く染まっている。

 倉庫を開けたのは、マクファーソン先生だった。ダルそうに欠伸をしている。


「ジュリアス・シェイファー。忘れ物はあったのか? ……おい、どうして、リリーシャ・ローランドとクェンティン・ノースブルッグがいるんだ!?」

「忘れ物はこの二人です! すみません! ……行こう、リリーシャ!」


 ジュリアスが小声でささめく。


「えっ、ちょっと、どうなってるの?」

「いいから!」


 ジュリアスはクェンティンを背負って、私と一緒に駆けだした。


「倉庫で遊ぶなどと、全くもってけしからん!」


 マクファーソン先生の怒鳴り声が背中の向こうで響く。

 そして、私たちは、医務室に駆け込んだ。


「ノースブルッグの気分が悪いので、クレア先生、診てください!」

「良いわよ~」


 クレア先生ののんきそうな声が返ってきた。クレア先生は、クェンティンに可視編成をかけて治癒している。私は、傍観しているジュリアスの袖を引っ張った。


「どうなってるの?」

「ああ、マクファーソン先生の事だね。マクファーソン先生に手っ取り早く、『忘れ物をした』って言って、瞬間移動の魔法をかけてもらったんだ」


 そういえば、マクファーソン先生は空間転移の魔法が使えたんだった。私も一度かけられたことがあるのを思い出していた。あの魔法は熟練した魔導師でなければ使えないのだから、マクファーソン先生は相当熟練した魔導師なのだろう。


「でも、間に合ってよかったよ」

「うん、助けてくれてありがとう」


 私とジュリアスは微笑み合った。


「あら、こそこそと、何の話?」


 クレア先生は興味津々だ。クレア先生に相談した方が良いのだろうか。口を開いた途端、ジュリアスが遮った。


「課題を手伝ってあげたんで、お礼を言われただけです」

「あら、そう? ノースブルッグは元気になったわよ」

「ありがとうございます!」

「私は先に食堂でご飯食べてくるわね~」


 クレア先生は、鼻歌を歌いながら、楽しそうに医務室から出て行った。


「それにしても、このキーホルダーにあんなからくりがあったなんて……」


 ジュリアスがキーホルダーを取り出して呟いた。やはり、キーホルダーは二つあったのだ。ジュリアスが犯人だと一時は疑ってしまったが、彼は無実だった。私は、心の底から安堵したのだった。


「リリーシャ」


 ベッドから、クェンティンの声がした。私とジュリアスは、ベッドのカーテンを引いた。ベッドの上で上体を起こしたクェンティンが、穏やかに微笑んでいた。


「クェンティン君……!」


 それはいつも通りのクェンティンだった。雰囲気が彼のものだと物語っている。


「シェイファー、迷惑をかけたな。でも、少し席を外してくれないか?」

「分かった」


 今日のクェンティンはいつものような喧嘩腰ではなかった。かと言ってもいつもは、ジュリアスが挑発しているのだけれど。今回は、ジュリアスも少し責任を感じているのかもしれない。ジュリアスはため息を吐いて、大人しく医務室から退室した。


「リリーシャ……」

「クェンティン君、何?」

「香姫って呼んだ方が良い?」

「えっ!? なんでその事を知ってるの!?」


 クェンティンは穏やかに微笑んだ。けれども、私は驚愕することしかできない。


「キーホルダーの中で聞いていたんだよ」

「じゃあ、私の秘密も全部知って……!?」

「うん、知ってる」


 青ざめている私にクェンティンは即答した。クェンティンは、切なそうな顔で私を見ていた。空気が気まずくなってしまった。


「動いている君を見ていると、リリーシャが殺されただなんて信じられないけど……」

「う、うん……でも、本当なの。ごめん……」

「でも、リリーシャを殺した黒幕は絶対に許せない! 香姫、俺も、黒幕を倒す手伝いをさせてくれないか?」

「うん、分かった」


 クェンティンが笑顔になったので、私も釣られて頬を緩めた。


「でも、普段はリリーシャって呼んで? クラスだと差し障りがあるし、それに可視使いの事も命に係わるから」

「分かってる。でも、二人でいるときは香姫で良いんだよな?」

「うん」

「じゃあ、俺と友達になってくれないか、香姫」

「うん! 友達になろう!」


 私とクェンティンは仲良く微笑み合った。ジュリアスの他にも、心を許せる友達ができて嬉しかった。


「……ところで、俺の腕にいつの間にか高そうな腕輪がはまっているんだけど」

「えっ……どれ?」

「これ」


 クェンティンは腕輪を外して、私に見せた。これは、黒幕の残して行った証拠なのだろうか。しばらくの間、私はその腕輪を見つめていた。


☆…┓┏━┓☆…┓┏━┓☆…┓

┃二┃┃章┃┃完┃┃結┃┃!┃

┗━┛┗…★┗━┛┗…★┗━┛


◆◇◆――……第三章に続く……!――◆◇◆

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