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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二章◆【鳥居香姫は不可思議な黒幕とクェンティンに動揺する】
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第二話 興奮冷めやらぬ夜

「そんなにすごいことなのかな?」


 釈然としなくて、隣のベッドで眠ろうとしているジュリアスに尋ねた。


「すごいんじゃないかな。この世界に可視使いは君だけしかいないんだから」


 ジュリアスは苦笑しながら答えたが、私は眉間のしわを深くした。つまるところ私は、その可視使いを人為的に作り出すために利用されたのだ。だから、全く喜べない。


 もしかすると私が可視使いとして目覚めたのだから、黒幕からもアプローチしてくるかもしれない。


 いや、ちょっと待てよ?


 ということは、可視使いになったのだから、この事件も私自身で解決できるということじゃないのか。これで、黒幕を捕まえられるかもしれないし、元の日本に帰れるかもしれない。鳥居香姫として――。


 部屋の照明が消えたので、ハッと我に返った。

 隣を見ると、ジュリアスは部屋の照明を消して、布団をかぶって眠ろうとしていた。私は、隣のベッドに座ってそれを見下ろしている。


 今日あったことが脳裏で巻き戻った。たしか、ジュリアスは私を守りにここに来たと言った。


「……ジュリアス君は、私の事を守ってくれるためにこの魔法学校に来てくれたの?」


 訊かないと約束したのに、私の口が勝手に訊いていた。薄闇の中、私はジュリアスの顔をじっと見つめた。ジュリアスが横たわったままこちらを振り向く。


「そうだよ」


 答えてくれた!


「なんで、私の事を守ってくれるの?」


 調子に乗って尋ねた途端、ジュリアスは目を閉じてしまった。


「……おやすみ」


 それでも、彼と話したくて私は話題を探す。


「ジュリアス君、これ、ありがと!」


 腕輪を返そうとしたのだが、ジュリアスはそれを静止した。


「この腕輪はリリーシャが持っていて。また、役に立つことがあるかもしれないから」

「うん、ありがとう。私もこの腕輪があったほうが心強いよ」


 疑問を持ったままジュリアスを見ていた時だ。


「わっ!?」

「どうしたの?」


 思わず声を上げると、ジュリアスが目を開けた。

 私はどぎまぎしながら布団を頭からかぶる。


「なんでもないっ!」


 可視して驚いた。また、ジュリアスの裸が見えてしまったのだ。

 疑問を持って人間を見ると裸が見えてしまうのか。魔人の弱点が見えたのは、それが人間ではないからかもしれない。ジュリアスの過去を見ること。それはやはりできそうにない。


 でも、うまく行けば、明日は日本に帰れるかもしれない。私もクレア先生と同じように興奮してきて、今から眠れるかどうかで悩むことになったのだ。

 東の空が白み始める頃になると、やっと眠れそうになっていた。



・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜



 魔法学の教室では、まだ明け方の三時だというのに話し声が絶えなかった。もちろん授業をしているわけでも、居残りの生徒の補習をしているはずでもない。


 魔法灯の明かりが灯り、部屋の中は色づいている。黒板は映写幕と化し、一人の青年の映像を明々と映し出してた。映っているのは、穏やかな印象の男性で、身なりの良い服装をしている。


 彼に向かって、クレア先生は興奮した面持ちで喋っている。それを、面白くなさそうに顔をしかめてシャード先生が横で聞いていた。


「……それで、リリーシャ・ローランドの能力が目覚めたというわけです!」


 クレア先生は、高潮したまま喋り終えた。勢い付いたせいか、少々息切れしている。

 そんなクレア先生の興奮した有様を、映写幕の中の彼は穏やかな面持ちで聞いていた。そして、微笑を浮かべて軽く相槌を打つ。


「プリミア・クレア。良くやりました」

「身に余る光栄です!」


 お辞儀するクレア先生を遮るように、シャード先生が前に進み出た。


「くれぐれも、リリーシャの事をよろしくお願いします。例え、鳥居香姫が消滅することになっても私はリリーシャを取り戻したいのです!」


 それを聞いたスクリーンに映った男性は顔を曇らせた。シャードのセリフが、穏やかではないと思ったのだろう。どうやら彼は、争いを好まない性格のようだ。


「ジェラルド・シャード、早まらないように。私にできることなら、幾らでも手を貸しましょう」


 シャード先生は自分の失言に気づいたが、協力してくれるとあって素直にその場に跪いた。


「心より感謝いたします! アレクシス様」


 アレクシスと呼ばれた男は、慈愛の微笑を浮かべていた。誰からも、愛される微笑みを。

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