表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第一章◆【鳥居香姫は不可思議な転生とジュリアスに戸惑う】
23/226

第二十二話 願いをかなえる者

 私の目は変調をきたしていた。ジュリアスと炎に巻き込まれた魔人が、四重に見えるのだ。


「不可視編成!」


 ジュリアスは魔人を消そうとしたらしい。けれども、全然消える気配がない。

 魔人は不敵に笑う。

 ジュリアスは舌打ちした。そして、新たに呪文を編成する。


「可視編成!」


 ジュリアスは必死に戦っているが、魔人は無傷だった。立ち上がろうとした私は、視界が定まらずによろけて壁にもたれかかった。


「小僧、お前の力はそんなものか?」

「リリーシャ!」


 唐突に、ジュリアスが私の名前を呼んだ。


「な、何、ジュリアス君」

「助けを呼んでも無駄だ。その小娘は魔法を使えない。それに、辺りには眠りの魔法をかけてある。助けはこない」


 ジュリアスは魔人のセリフを無視した。そして、ジュリアスはそれと対峙したまま、背中を向けて私に語る。


「……さっき、リリーシャの手に僕の腕輪を通した」

「えっ、これ……?」


 いつの間にか、私の手にはジュリアスがしていた腕輪がはめられていた。ジュリアスと初めて出会った時に、女っぽい腕輪だなと思っていたあの腕輪だ。


「リリーシャ。その腕輪に宿っている『残留思念』が読み取れないか?」

「残留思念……?」

「もしリリーシャが、『可視使い』なら『本当の腕輪の持ち主』の残留思念を読み取ることが可能だ」


 四つに見えていた腕輪が照明の光で鈍く光る。私は腕輪を触りながら、それを凝視した。

 すると四つに見えていた腕輪の絵が、目に吸い込まれるようになって思念が頭に入ってきた。


「あ……人影が見える……」


 リリーシャと同い年くらいの腕輪をしている人影が見えた。顔はよく分からないけれど……。初めて腕輪をして喜んでいる姿が脳裏に浮かんだ。これが残留思念なんだろう。


「その子は、どうやって『可視使い』を制御していた?」


 ジュリアスの諭すような声を受けて、腕輪の中に残っている『残留思念』を辿っていく。腕輪の記憶の中にいる人影がしていた通りにしてみると、眩暈が治まり四つに見えていた視界も元に戻った。


「あ、元に戻った! 普通の視界になってる!」


 何気なく私は魔人の方に目を向けた。

 魔人と目が合う。すると、魔人の過去の映像が吸い込まれるように目に飛び込んできた。それは何年か昔に、魔人が何者かに倒される姿があった。魔人の弱点となった物が、確かにその映像に残っていた。

 私は我に返って、ジュリアスに声を張り上げる。


「ジュリアス君! 魔人の弱点は鈴だよ! その鈴を狙って!」


 ジュリアスは、手を魔人に翳す。


「可視編成!」


 彼が奏でる呪文の二重音が辺りに響いた。現れた無数の矢が、願いを叶える魔人の鈴に吸い付くように突き刺さる。破裂音がして鈴が破壊されると、魔人は霧が消える様に薄くなり消滅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご感想・評価をお待ちしております。ポチッとお願いします→小説家になろう 勝手にランキングcont_access.php?citi_cont_id=186029793&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ