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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第四部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な妖魔と石碑に圧倒される】
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第十三話 妖魔王グリードンと香姫3

 それでも、私の意識はすぐに回復した。


「ううっ……?」

「気がつかれたか?」


 誰だろう? この優しそうな声は。ジュリアスでも澄恋でもない、もっと年上のひとの声だ。親切に私を助けてくれたのだろうか。


 私が目を開けると、妖魔王グリードンが覗き込んでいたので、悲鳴を上げた。


「香姫に危害を加えてすまなかった」


 しかし、妖魔王グリードンは私に跪いて、平謝りしている。その事実に私は面食らった。


「は……? えっ……? な、なんで?」


 なんだろう? この百八十度違う態度は……?

 妖魔王グリードンは別人のような優しい表情で微笑んだ。


「香姫からは、変わった匂いがしたのだ」

「え゛? わ、私臭いの……!?」


 私は自分のニオイをクンクンした。しかし、別段変わった臭いはしない。昨日洗濯した洗剤のニオイがするくらいだ。


「そうではない。もっと、懐かしい良い匂いだ。余の思い出の……奴に似た香りだ」


 思い出って言われても……。


「もしかしたら、お前は奴の娘かもしれん。そう言う結論に至ったのだ。だから危害を加えないことにした」


 私は眉をひそめた。奴の娘と言われても、私は魔法研究所で体を作ったのだから、娘も何もないと思うのだ。でも、そんなことをわざわざ言って心変わりされるのも厄介だ。


「じゃあ、みんなを元に戻してくれないかな……?」

「分かっておる。皆の者を元に戻して、余は封印鏡に封印されよう。もともと、目覚めたくはなかったのだ」


 殊勝な心意気だがそれでいいのだろうか。なんとなく可哀想になってしまった。


「みんなを元に戻してくれるんだったら、逃がしてあげようか?」


 私は血迷ったことを口に出していた。

 何となく、この妖魔が可哀想な気がしたのだ。


「余計な気遣いだ。余は封印鏡で眠るのが気に入っているのだ。俗世間に惑わされることがなく、静かであるからな」

「そ、そっか……」

「強いて言うならひとつ頼みがある」

「うん」

「余の事をパパと呼んでくれないか!」

「え゛?」


 私は硬直した。

 ぱ、パパ!? 私の父でさえ、お父さんとしか呼んだことがないのに!?


「それで、思い残すことはないのだ……」


 私は遠い目をしてこの陶酔している男を見ていた。

 目から涙が、キランと光っている。

 私は、滅茶苦茶疲れてため息を吐いた。


「ぱ、パパ……!」


 可哀想なので呼んであげた。

 何となく、恥ずかしさで死にそうになった。

 そうしたら妖魔王グリードンは、大いに喜んで封印鏡に自ら封印された。


 そして、ジュリアスも澄恋もみんなも、もとに戻った。

 偶然でそうなったとはいえ、私はその場にいた全員に心から感謝されたのだった。


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