表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第四部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な妖魔と石碑に圧倒される】
224/226

第十二話 妖魔王グリードンと香姫2

 ジュリアスが私を先導して引っ張っていく。こんな時でなかったら、発光された森の美しさに心を奪われていただろう。走りにくい地面に悪戦苦闘しながら私たちは進んでいく。


「香姫さん」


 ジュリアスが、呟くように言った。


「何? ジュリアス君……」

「何故か、僕は分かったんだ」

「えっ?」


 何のことだろう? 私は眼をぱちくりさせた。


「妖魔王グリードンの弱点が分かったの?」

「そうじゃなくて……」


 ジュリアスは苦笑している。どうやら、的外れな質問をしてしまったらしい。


「一体、何が分かったの?」

「記憶をなくす前も、景山君と僕はこうやって香姫さんを守ってきたんでしょ?」

「ジュリアス君、思い出したの!?」


 ジュリアスは首を横に振った。


「でも、何となく解ったんだ」

「ジュリアス君……!」


 私の胸が喜びで満たされる。その時――。


「うわああああああああああああ!」


 遠くで澄恋の悲鳴がこだまする。とうとう、澄恋が石碑に変えられてしまったらしい。

 私は天国から地獄へ突き落された。


「澄恋君!」


 逆方向へ走り出そうとした私を、ジュリアスは手を引っ張って引き止めた。


「香姫さん! 今、そっちに走ったら、澄恋君の好意は無駄になってしまう!」

「でも……!」


 後ろ髪引かれる私を、散歩を嫌がる犬のようにして引いていく。


「香姫さんが、その眼の力で何とかすればいいんじゃないかな? 僕は間違ったことを言ってるかな?」


 私の眼は流れた涙でぼやけている。木の根につまずきそうになって、私は慌てて涙をぬぐった。ジュリアスが立ち止まる。


「ジュリアス君も、澄恋君も、私の事を買いかぶりすぎだよ! 私は、ひとは可視できないの! 物の残留思念しか視えないんだから!」

「物ね……」


 数分前までは、妖魔王グリードンを倒して、クレイトンを連れ戻す気でいた。でも、私は妖魔王グリードンの力を完全に侮っていたのだ。まさか、こんな事態におちいるとも思ってみなかった。


「そうか、お前は可視使いなのか……」


 毛色の違う声に私の心臓が飛び上がった。

 それを言ったのはジュリアスではなかった。振り向いて息が止まるかと思った。


「よ、妖魔王グリードン……!」


 私たちの後ろには、妖魔王グリードンが木の幹にもたれて腕組みしていた。


「石碑になるがいい……」


 妖魔王グリードンは問答無用で手を横に振って魔法を発動させた。

 私は、プレルーノ・モンドを投げる。

 魔法は弾かれたが、プレルーノ・モンドは妖魔王グリードンの向こう側に落ちた。易々と、プレルーノ・モンドは妖魔王グリードンに拾われてしまう。


「これで二度目は防げない……」

「くっ……!」

「可視編成!」


 間髪入れずに、ジュリアスが呪文を放った。カマイタチは妖魔王グリードンに直撃するが、妖魔王グリードンの髪の毛をわずかに地面に散らしただけだった。


「余には効かない。無駄だ……」


 ジュリアスの頬から冷や汗が流れ落ちる。

 何故、ジュリアスがわざわざカマイタチの呪文を放ったのか。

 私にはその理由が分かっていた。


「ジュリアス君、分かっているから」


 ジュリアスは頷いた。


「僕と反対方向に走って!」


 ジュリアスの言葉通り、私は反対方向に走った。そして、ジュリアスの呪文で散った妖魔王グリードンの髪の毛を拾い上げる。

 人体は可視できないが、人体から離れ物になった髪の毛は可視できるのだ。ジュリアスはこれを狙っていたに違いない。


「はあああああっ!」


 私の眼の力が発動される。次の瞬間、私は妖魔王グリードンの弱点を見つけた。

 私たちが妖魔王グリードンから逃げ出した後、妖魔王グリードンは自分の心臓を隠していた。自分の右肩の上の異空間に。


「ちょこまかと……!」

「香姫さん、僕、分かったんだ。どうして、香姫さんを守っていたか」

「えっ……?」


 妖魔王グリードンは、手を横に薙いだ。魔術が発動される。

 ジュリアスは、私を守るように両手を広げた。


「うあああああああああああああ!」

「ジュリアス君!」


 石碑が地面にゴトンと落ちた。私の眼から涙が零れ落ちた。


「うわあああああああああああ!」


 私は勢いをつけて、妖魔王グリードンの右肩に飛び付いた。

 そして、妖魔王グリードンの異空間の中に手を突っ込んで、心臓を握りつぶそうとした。


「ぐあああああああああ! 何をする!」

「きゃああああああああああ!」


 私は弾き飛ばされて、木の幹に打ち付けられてぐったりした。妖魔王グリードンが鎧をガシャガシャさせながら歩いてくる。


 彼は私の髪の毛を掴み上げた。そして何かに気づいたように息を呑んだ。


「この匂い……!? まさか、お前は……!」


 しかし、私の意識はそこで途切れてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご感想・評価をお待ちしております。ポチッとお願いします→小説家になろう 勝手にランキングcont_access.php?citi_cont_id=186029793&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ