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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第四部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な妖魔と石碑に圧倒される】
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第十話 石碑の謎2

『……何だ? お前たちは?』


 妖魔王グリードンの前には、武装した男たちが十数人舞い降りた。

 一人が高らかに叫ぶ。


『私たちは、討伐隊だ! すぐに封印鏡に戻ってもらおうか!』

『……余が断ると言ったらどうする?』

『我らがお前を倒す!』

『ほう? やれるものならやってみよ』


 すぐさま、討伐隊の面々は雄叫びを上げながら剣を手に飛び掛かっていく。

 討伐隊の中には古代魔法の呪文や可視編成の呪文を唱える者もいた。

 しかし、妖魔王グリードンが素早く手を横に薙ぐと魔法が発動された。


 刹那、討伐隊の動きが止まった。


『ぎゃあああああああああああ!』


 討伐隊の悲鳴が辺りを震撼させた。

 彼らの身体が発光したかと思うと、次の瞬間にはみんな石くれに変わっていた。

 私はゾッとした。この石碑は、『討伐隊』の『変わり果てた姿』なのだ。


『ここだ。クレイトンさん、お願いします』

『分かりました』


 数分前に、セシル先輩とクレイトンが、ほうきの二人乗りで到着していた。

 二人は真っ暗な森の中に降り立った。

 クレイトンが祈るように空を仰いだ。

 しかし――。


『貴様らもか……!』


『見つかった!? クレイトンさん、逃げて! 可視編――』


 再び、妖魔王グリードンが空を薙いだ。すると、セシル先輩は、目に見えない何かが絡みついたように動かなくなった。セシル先輩の身体が発光する。


『うわああああああああああああ!』


 地面に石碑が落ちた。

 セシル先輩が! セシル先輩でもあんなにあっさりと倒されてしまうだなんて!

 五十億ルビーの妖魔というのは伊達じゃない。

 セシル先輩が歯が立たなかったのに、私たちが勝てるはずがない。


『あ……ああああ……!』


 残留思念のマリエル・クレイトンは震えていた。

 妖魔王グリードンと目が合う。


『きゃあああああああああああああ!』


 空高く、悲鳴が木霊した。そして、石碑がごろんと転がった。草を踏み潰した石くれはその無言の存在感を横たえた。その事を知った恐怖と絶望は言い表せない。


 私は完全に妖魔王グリードンの存在を軽視していた。三人で力を合わせれば何とかなると思い込んでいた。それなのに、討伐隊も一人残らずやられてしまい、セシル先輩も助けようと思っていたクレイトンまでもが――。


 血の気が引いていく。気が付くと私は震えていた。


「香姫?」

「香姫さん、何を見たの?」


「澄恋君、ジュリアス君、ヤバいよ! この石碑は妖魔にやられた討伐隊たちだよ! セシル先輩もクレイトンさんもその中に……!」

「何だって!?」


「そう言うことだ……」


 声は上の方から聞こえた。私はギクリとして空に目を向ける。


 上空には、重そうな鎧に身を包んだ銀髪の青年が浮かんでいた。それは、たった今、残留思念を視てよく知っていた男だった。


「妖魔王グリードン……!」


 私は、かすれ声で呟いていた。

 心臓が壊れるくらいの音で警告している。早く逃げろと。私の口の中は干上がっていた。


「ほう、余の事を知っているのか……」


 私は喉の塊を呑みこんで、愛想笑いを無理やり貼り付けた。


「そうなの! すごい人だって聞いたから、データキューブを見て勉強したの!」


 私は、話を引き延ばそうと試みた。策を考えるまでの時間稼ぎだ。


「どうでもいい……余の前から消えてもらう……」


 しかし、現実は甘くないらしい。どうすればいい。私は脳みそをフル回転させた。


「そうだ……!」


 でも、手遅れかもしれない。

 妖魔王グリードンはまたもや魔力を発動させるために手を横に薙いだ。


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