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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第四部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な妖魔と石碑に圧倒される】
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第九話 石碑の謎

 ドゥルドゥー村の森のひらけた所にほうきでたどり着くと、辺りはすっかり闇夜に紛れていた。私たちがいる上空では風の鳴く音がして、木々の葉の揺れる音がさざ波のように押し寄せている。


 ベルカ王国の片田舎までほうきで飛んで来た。今頃、魔法学校ではディナーの時間だろう。それぐらい、時間が経ってしまった。


「ホントにここなのかな……? 静まり返ってるし、真っ暗だし……」

「香姫、森の中に誰かいる?」


 澄恋は私に訊いてきた。私は可視使いだから、真っ暗な暗闇の中でもヤマネコのように視ることができるのだ。澄恋はその事を知っているから訊いたようだ。


「ううん、どこにも誰もいないみたい……」


「可視編成!」


 澄恋が呪文を唱えると、森は発光して辺りを照らし出した。

 私はギョッとして、澄恋を振り返った。


「澄恋君! そんなことしても大丈夫なの? もし、妖魔王グリードンが居たらみつかっちゃうよ!」

「でも、誰もいないんだろ……? 森全体を照らしたから大丈夫だよ。簡単には見つからない……降りてみるか?」

「う、うん」


 そこに降り立っても、遠くで木々が揺れていて、フクロウが眠そうな声で鳴いているだけだった。


「おかしいな。ここのはずなんだけど……」


 警戒しているので、自然に小声になる。ここは平和そのもので、妖魔王グリードンの痕跡すらなかった。


 ジュリアスが何かを見つけて指差した。


「これって何かな?」


 そこには、奇妙な模様が描かれた石碑が立っていた。良く見ると、あちこちに散らばっている。


「ルーン石碑みたいな石碑だな」澄恋が呟いた。

「ルーン石碑?」

「スウェーデンで主に見つかっている大昔の石碑の事だよ」


 澄恋は物知りだ。その石碑には絵のような模様が書かれてある。これが何を意味しているのかは定かじゃないが。


「じゃあ、ここは遺跡なのかな?」


 石碑を調べていたジュリアスが何かに気づいて目を瞬いた。


「あれ? でも、香姫さん? この石碑、草を踏み潰しているよ?」

「なんで、それが変なの?」

「確かに変だな。踏みつぶされた草は何故か『枯れてない』」

「……ということは、たった今、石碑が建てられたってこと?」


 ということはどういうこと……?

 私の心は興味で疑問だらけになった。気が付くと私の目は、石碑を勝手に可視していた。


 数分前の光景を何気なく見ていて、ぎくりとなった。私は嫌な予感を感じながら、その残留思念を巻き戻していく。事実を知るなら、早く知らなければならない。でないと――。心臓の鼓動が早くなり警告音を鳴らしている。


 結論から言うと、私たちが訪れた場所は間違ってはいなかった。

 目の前に展開される半透明の残留思念がそれを告げている。

 数分前、森の中央に伸びる光の柱があった。


『おおお! ついに、妖魔王のグリードンが目覚める時が来た! お目覚めください! グリードン様ァァァ!』


 光の柱が消え、ハイエナのファナティルの前に、重そうな甲冑を身にまとった長身の男が現れた。長い銀髪を垂らした美形であるが、目は赤く、犬歯がやけに長くて吸血鬼のようだった。彼は長いマントを翻した。


『お前か、余を目覚めさせたのは……』

『はっ! 左様でございます!』


 ハイエナのファナティルは恭しく一礼した。

 妖精王グリードンは手を斜めに降る。瞬間、ファナティルの笑顔が消えた。


『えっ? 何故ですか! グリードン様ァァァァ!』


 ファナティルは嘆きながら光の粒をまき散らし消滅した。グリードンに存在を消されたのだ。

 妖魔王グリードンは冷めた目でそれを見るが、無表情のままだ。

 傍に落ちている封印鏡を拾い上げた。


『余計なことを……』


 妖魔王グリードンは、苦々しく呟きながら封印鏡を懐に仕舞った。


『妖魔王グリードン!』


 その時、複数の影が森のひらけた場所に舞い降りた。


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