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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第四部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な青銅鏡と予言にやきもきする】
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第十八話 妖魔王のグリードン……?

 私と澄恋は、ひと気の全くなくなった廊下をひた走っていた。

 廊下を走りながら窓から見えた中庭には、人影が二つあった。それが見覚えのあることに気づく。


「あれっ?」


 私は思わず足を止める。


「香姫、どうした?」


 澄恋が踵を返して駆け寄ってきた。私が指差すと、澄恋もそちらに目を向けた。


「澄恋君、あれって、ベルナデット校長先生とクレイトンさんだよね?」

「変な組み合わせだな。それより、今は急がないと!」

「そ、そうだね! ゴメン!」


 そんな場合じゃなかった。水晶の事に引っ掛かっていたので、思わず足を止めたのだが、今は余計なことだった。


 私の眼は再び可視状態になって、イザベラたちの残留思念を追っていく。

 そんなとき、向こうからイザベラの友達のカヴァドールが歩いてきた。

 可視し続けるよりはイザベラの親友の彼女に訊いた方が早い。


「あっ、カヴァドールさん、イザベラさん見なかった?」

「イザベラさんなら、校庭の隅でシェイファー君とデートしていたわよ」

「ありがとう!」


 いつもなら、イザベラの横で嫌味を言ってくるカヴァドールだ。しかし、今日は嫌味を言う前に私たちは退散した。


 嫌味を言おうと思ったらしいカヴァドールは、イザベラの居所を私に教えてからしまったと思ったのだろう。私の背中に、声を張り上げた。


「くれぐれも、邪魔しちゃだめだからね!」


 校庭まで走ってくるとマラソンした後のように汗だくになった。

 肌寒い冬の外気が、熱した体を冷やしてくれている。

 視線を彷徨わせて、辺りを窺う。


「イザベラさんとジュリアス君はどこかな……!」

「居た! あっちだ!」


 校庭の隅のベンチに、イザベラとジュリアスが仲睦まじく寄り添って座っていた。

 普通に見れば、仲の良いカップルにしか見えないのに――。


「イザベラさん! ジュリアス君!」


 普通なら邪魔なんてしないが事態は急を要する。私と澄恋は駆け寄って行った。

 すると、それに気づいたジュリアスとイザベラが、鬱陶しそうに振り返った。


「何か用? 僕たちの邪魔をしないでくれないかな?」

「ジュリアス様の言うとおりですわ!」


 視線をさまよわせると、ジュリアスの手には封印鏡が握られてあるのが確認できた。

 やっぱり、ジュリアスは操られている……!


「その鏡は、青銅鏡じゃなくて封印鏡なの! だから、それには妖魔が封印されているの!」

「だから何かしら?」


 えっ? イザベラは何と言った?


 ――だから何かしら……?


「まさか、知ってるってこと!? じゃあ、イザベラさんは妖魔とグルなの!?」


 イザベラはその私の問いを肯定するように笑った。


「さあ、やってしまいなさい! 『妖魔王のグリードン』!」


 イザベラが、私に封印鏡を翳した。カッと封印鏡が鈍く光った。


「妖魔王のグリードンって!? まさか、あの、五十億ルビーの賞金首の妖魔!?」


「香姫!?」

「えっ!?」


 隣で身構えていた澄恋がギョッとして、私に手を伸ばしたが遅かった。

 私の身体は禍々しい光に包まれて、ふわりと浮きあがっていた。


「っ!? だ、大丈夫だよね。もし、攻撃されたら、サミュエル王子にもらったプレルーノモンドを盾にすれば――」


 しかし、私の作戦を嗤うように、私の身体は皆から引きはがされてボールのように天高く遠方に飛ばされる。


「きゃああああああああああああああ!」


 私は悲鳴を出すことしかできないでいる。

 私の身体は空高く放り投げられたボールのように急降下していく。


「香姫! 可視編成!」


 ほうきに乗った澄恋が、風の魔法を使って私の身体を空中に滞空させた。そして、私の身体は澄恋に抱きとめられた。


「澄恋君……!」

「大丈夫か? 香姫」


 やっぱり、澄恋は背が縮んで可愛くなっても、私の王子様だ。

 安心して気が遠くなっていく。このまま、意識を手放してもいいか。

 その甘い考えを叱咤するように、遠くからイザベラの声が風に乗って届いた。


「いやあああああああああああ!」

「っ!?」


 私は気を失いそうだったが、イザベラのせいで私の意識は再び鮮明になった。


「イザベラさんが!」

「まさか、封印が解かれた!? 急ごう!」

「うん!」


 私たちを乗せた澄恋のほうきは、回転して向きを変える。

 魔法学校を一望していたが、校庭の中に流れ込むように降下する。


「イザベラさん!」


 私と澄恋は地面に降り立った。

 駆け寄る私の目に映ったのは、イザベラとジュリアスが倒れていて、セシル先輩が蘇生を行っているところだった。


 妖魔王グリードンらしき姿はそこにはなかった。

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