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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第一章◆【鳥居香姫は不可思議な転生とジュリアスに戸惑う】
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第二十話 魔法演習と試験2*

「可視編成!」


 私の発音は低音と高音の二重音にはならず、普通の単調な声だった。奇跡など起きるはずもなく、ついに私は魔法を使うことができなかった。


「不合格! もっと練習をしておくように!」

「……はい」


 私は、嘆息して列に戻って行った。

 クラスメイトは、驚天動地のようにざわめいている。

 ちょうど、チャイムが鳴り終わった。


「それでは、授業を終わる!」


 アリヴィナは私の試験を見守っていた。リリーシャは記憶喪失だが、どこまでできるだろうか。そんなことを考えて、自分のライバルを応援していたという。


 クェンティンも私のことを見守っていたようだ。以前のリリーシャならこんなこと訳もない。みんなをアッと言わせるような、魔法を使うに違いない。それが、俺の好きなリリーシャだから。そう思っていたようだ。


 だが――。


 アリヴィナとクェンティン、果てはガーザイドまで立ち上がり、私の方を向いて呆然としている。クェンティンも、私を見たまま放心していた。


 私は、その視線をそらしてジュリアスのもとに走って行った。


 クェンティンが見ているのは、私ではなくリリーシャだ。彼は、何を見ていたのだろうか。

 きっと、本物のリリーシャの残像と、リリーシャの姿をした私が重ならなくて、戸惑っていたんだろうけれど。



・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜



 この時、アリヴィナはついに変だと思った。

 こんなの、リリーシャじゃない! 魔法の使えないリリーシャなんて、リリーシャじゃない!

 授業が終わり、クラスメイトが帰って行く中、アリヴィナはあることを決意していた。


「アミアン!」

「な、なんだよ、アリヴィナ!」

「ちょっと顔貸しな!」


 アリヴィナは、ガーサイドを引っ張って行き、隅でこそこそと話し始めた。


 その日の夕刻。香姫はその予兆にも気づいていなかった。アリヴィナとガーサイドは校舎の中庭にある銅像の前に立っていた。


「アリヴィナ……なんだよ、こんなところに呼び出して……」

「アミアン、聞いて! この像はこの魔法学校の願いを叶える魔人だと言われているよな!」

「ああ、知ってる。だから、それが何? その魔人はもう願いをかなえられなくなって、この姿になったんだろ」

「だから、可視編成をこの銅像にかけるんだよ!」

「ええっ?」

「今日の試験のマクファーソン先生の可視編成は、魔物の姿を幻影として再現したものだろ。だから、それと同じ可視編成をするんだよ!」

「それで、うまく行けば魔人がリリーシャの記憶を戻してくれるかもしれないってことか!」


 アリヴィナとガーサイドは、ニヤリと笑った。そして、一緒に銅像に手を翳す。


『可視編成!』


 銅像は黄色く発光した。


「おおお!」


 アリヴィナとガーサイドの目が期待で輝く。けれども、黄色の光は消え失せて、ただの銅像に戻ってしまった。


「お?」


 何も起こる気配もない。夕暮れの虫の鳴き声だけが、平和に聞こえている。


「なんか、肩透かし食らった気分だ……」

「やっぱり、俺たちの可視編成じゃ、魔力が足りないんだよ」

「あ~あ、良い考えだと思ったんだけどなぁあああアミアンんんん!」

「酔っぱらいかよ! 絡んでくんじゃねぇ!」

「友よッッッ!」


 アリヴィナは意気消沈して、ガーサイドと一緒にその場から去っていく。

 その様子を、クェンティンが見ていた。

 彼は、銅像を見上げて、しばらくその場に佇んでいたのだった。



・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜



 その日の夜中。当然のことながら、私はベッドの中で眠っていた。

 遠くから小さな鈴の音が段々と近づいてくる。その鈴の音のせいで深い眠りから現実に呼び戻された。


「ん……? なに……?」


 まぶたを開けると、私を見下ろしている顔が目前にあった。若い男だ。目の前の男が銅像そっくりであることも、恐怖心が先行して気付かなかった。


 私は、びっくりして悲鳴を上げようと思った。だが、寸前で口を手でふさがれた。私は巻き起こった風に目を閉じてしまう。


 風が治まった次の瞬間、目を開けるとそこは夜空の下だった。


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