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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第四部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な青銅鏡と予言にやきもきする】
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第十七話 ジュリアスの真実

 第二医務室を飛び出した私はすぐに廊下を駆けて行く。イザベラが封印鏡を持っていたということは、イザベラは妖魔とグルなのだろうか? そうじゃなかったら、イザベラが危ない。


 私はハッとして立ち止まった。

 ちょっと待って……? 封印鏡は、ジュリアスが持っていた。イザベラにプレゼントされたと言っていた。


「香姫!」


 後ろから、澄恋が駆け寄ってきた。


「澄恋君、あの封印鏡は、イザベラさんが持っていたモノじゃないかな!」

「十中八九そうだろうな。ハモンドが封印鏡を教室に持ち込んだのはいつだった?」


 私は指折り数える。


「えっと、三日前だよ!」

「三日前……ジュリアス君がハモンドに呼び出されたんだよな……?」

「そっか! 三日前の放課後の教室を可視すれば!」

「行こう!」


 私は澄恋と一緒に、ファルコン組の教室に戻ってきた。放課後なのでクラスメイト達は帰った後だった。私はすぐさま疑問を浮かべる。ジュリアスはどうして急にイザベラにぞっこんになったのだろう? イザベラはどうして、ジュリアスに青銅鏡をプレゼントしたのだろう?


「はぁあああ!」


 私の眼は可視状態になって、残留思念の映像を巻き戻していく。三日前という時間が経過した後なので、かなりの集中力を使い、疲労感が募っていく。


「視えた……!」


 残留思念の半透明の映像が現在の景色の中に展開される。


「残留思念のジュリアス君が、残留思念のイザベラさんと一緒に教室を出て行くよ!」

「行こう!」

「うん!」


 私と澄恋はその残留思念の後を追って行く。

 ジュリアスが呼び出されたのは古代魔法学の教室だった。


「えっ? 古代魔法学の教室……?」

「人がいないからここを選んだのかもしれない。開いている。入ろう」


 私と澄恋は、古代魔法学の教室の中に足を踏み入れた。現在のこの教室も無人だった。しかし、三日前の残留思念のジュリアスとイザベラは向き合って立ち止まっている。


『何かな、話って?』


 ジュリアスは黒い笑みを浮かべてイライラと言った。イザベラはポケットから封印鏡を取り出した。ジュリアスは眉をひそめている。


『ジュリアス様、私とお付き合いしてください!』


 イザベラは封印鏡をジュリアスに向けて懇願した。

 ジュリアスは断ろうとしたようだ。その時、封印鏡が眩い光でカッと輝いた。


『えっ!? うわああああああああ!?』


 ジュリアスの悲鳴が、誰もいない古代魔法学の教室の中に響き渡った。


『香姫さ――』


 ジュリアスの青い瞳がガラス玉のようになった。打ち震えていたジュリアスは次第に力を失い、操り人形のようになって、コクンと頷いた。


『良いよ……』


 その顔には、すでにジュリアスの意志がなかった。ジュリアスは、イザベラの封印鏡に魅せられたように、駆け寄った。そして、ジュリアスはイザベラの封印鏡を手に取ろうとする。


『それを貰えないかな……!』


 ジュリアスの言葉にイザベラはニヤリと顔を歪めた。


『ジュリアス様がこの鏡がお好きなら、差し上げますわ! その代り、私の事を大好きになって欲しいのですわ!』

『ああ、大好きだよ。イザベラさん!』


 ジュリアスは病的な笑みを浮かべて、封印鏡を抱きしめた。

 私の目から涙が零れた。


「ジュリアス君が……!」


 よろけた私は、澄恋に支えられる。


「何が視えたんだ?」

「ジュリアス君は、封印鏡に操られてた……! それでイザベラさんの事を!」

「何だって? でも、ハモンドは、どこで封印鏡なんて手に入れたんだろう? こんなモノ、いくら金持ちだからって、手に入れられるようなものじゃない」


 残留思念のイザベラが悦に入ったように喋りつづける。


『こんな鏡が空から落ちて来るだなんて、なんて私はついているのかしら! ああ、神様、ありがとうございます!』


 えっ!? 空から封印鏡が降ってきた……?

 手を組み合わせて、イザベラは陶酔したように喋りつづける。


『きっと、クレイトンさんに負けた私を憐れんで、神様はこんな素敵な鏡を私にプレゼントしてくださったのだわ!』


 イザベラに微笑んだのは女神でも神様でもない。凶悪な妖魔だ。イザベラはそれに気づいていない。


「イザベラさんが、クレイトンさんに負けたあの日、空から落ちてきた封印鏡を手に入れたって言ってる!」

「もしかして、五百ルビーの妖魔が空から落としたんじゃないのか?」

「だとしたら、イザベラさんはグルじゃなかったんだね」


 イザベラは、知らずに封印鏡を使っていたようだ。


「封印された妖魔がこんな力を使うだなんて……」


 顎に手を当てて考えていた澄恋がハッとして、私に視線をやった。


「もしかしたら、封印が解けかけているんじゃないか?」

「そ、そんな!? じゃあ、ジュリアス君とイザベラさんが危ないんじゃ!?」


 澄恋がちらりと、窓の外を見た。私も釣られるようにして眺める。空はオレンジ色の夕焼けで染まっている。


「まだ、日は落ちてない。二人を探そう!」

「うん!」


 私と澄恋は、古代魔法学の教室を飛び出した。

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