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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第四部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な青銅鏡と予言にやきもきする】
207/226

第十五話 プレルーノ・モンド*

「それをやろう」

「は、はぁ……」


 初っ端から、サミュエル王子にわけの分からないものを頂いてしまった。


 この黒曜石のような石ころは一体なんなのだろう?

 隕石か? はたまた道ばたで拾った綺麗な石ころか?

 でも、道に転がっている石ころをわざわざ私に渡すだろうか?

 石ころの収集の趣味でも持っているのか?


 いつの間にか、私の眼は可視状態になって、その黒曜石のような艶やかな丸い石ころの残留思念を視ていた。


「っ!?」


 すると、この石ころの残留思念が見えない代わりに、ボワーンとした振動が頭に伝わってきて、私はくらくらして可視するのを止めた。まるで、お寺の鐘の中に頭を突っ込んで打ち鳴らしたかのような激烈さだ。


「な、なにこれ……? 可視できない……!」


 以前、可視できない石や砂の残留思念を視て、気を失ったことがあった。でも、そんなヒドイ感じではないけど。


「そ・れ・は・な、『プレルーノ・モンド』という石だ。『満月の世界』という意味を持つ。香姫の名前は、元居た世界では『月に帰ってしまう姫』の名前なんだろう?」

「漢字は違いますけど……そんな感じのお姫様の名前です……」

「そ・れ・で、こないだの礼として、何がいいかと思ったんだが、これがお前の名前にピッタリだろ? 勿論、国宝級の値段の付かない高価な石だ。こないだは、高価そうだからトラブルになったので、安物に見えるものを用意したってわけだ! 私の見立てに間違いはない!」


 ただの石ころにしか見えないのに、そんなにいいものだったのか!

 でも、可視できないから、ただの石ころではないことは確かだろうけれど。


「へええ、それでこれって何ができるんですか?」


 期待を込めて訊いたが、サミュエル王子からは沈黙が返ってきた。隣のアレクシス王子を見ても、微笑みしか返ってこない。


「何だったっけな……? おい、エン! 何だったか答えろ!」


 唐突に、問いを投げつけられて、エンは飛び上がった。


「サミュエル様!? 知らないであげたりしたんですかっ!?」

「十秒以内に答えろ! でないと魔法研究所で合格にすっぞ!」


 私は唖然として、言葉も出てこない。

 エンは、いきなり見つかった野兎のようになって、大慌てしている。


「ええええっ!? た、確か……っ」

「一、二、三、四、五、六、七、八!」


 サミュエル王子は問答無用でカウントダウンしている。

 お、鬼か……っ!


 エンは汗ダラダラになりながら考えていたが、ハッとして手をポンと打った。


「ベルカ王国一硬い石ですっ!」

「ああ、そうだったな。エン、ご苦労」

「……馬鹿王子が……っ」


 エンがぼそりと呟いた。


「あん? 何か言ったか?」

「あはは、何も言ってませんっ!」


 サミュエル王子は傍若無人もいいところだが、エンはケロッとしてそれをいなしている。サミュエル王子とエンは、良い侍従関係を築いているのかもしれない。


「ベルカ王国一硬い石……?それって、ダイヤモンドと同じ様なものですか?」と、私。


「いや、ダイヤモンドは熱に弱いが、プレルーノ・モンドは、熱にも強い。硬過ぎるから、ダイヤのように加工もできない。だから、そんな石ころにしか見えない」

「なるほど、硬い石……!」


 プレルーノ・モンドがようやく価値のあるものに見えてきた。何もできない石だったら、売り飛ばしてお金にして好きな物を買おうと思っていた。でも、これなら、もし妖魔に狙われて攻撃されても、これを使えば跳ね返すこともできるんじゃないか。


「嬉しいです! ありがたく、頂戴します!」


 私はローブのポケットの中に入れた。

 それまで、黙視していたアレクシス王子がようやく口を開いた。


「喜んでくださって光栄です。実は私もそれをサミュエル兄上と一緒に選んだのです」

「そ、そうですか……!」


 どことなくトラブルのニオイがして、私の心臓が反応して不穏な音を奏でている。なかなか言い出そうとしないアレクシス王子がことさら不気味だ。


 しびれを切らした澄恋があからさまにため息を吐いた。


「回りくどいんだけど。香姫に言いたいことがあるんなら単刀直入に言えば?」

「澄恋、アレクシス様になんてことを……!」


 ウィンザーは澄恋に噛みついている。


「私も澄恋君と同じ気持ちです。言いたいことがあるなら早く言ってください。このままじゃ、蛇の生殺しです!」

「では単刀直入に言いましょう」


 アレクシス王子の笑みが消えて、真剣な面持ちになった。


「封印所から、五十億ルビーの妖魔が逃げました。だから、香姫さんにご協力いただきたいのです」

「えっ……ご……五十億ルビー!? って賞金首ですか!?」

「そうです」


 桁が違う! ご協力って一体何を……?

 とんでもない依頼を持ちかけられて、私はめまいを覚えるのだった。第十五話 プレルーノ・モンド*


「それをやろう」

「は、はぁ……」


 初っ端から、サミュエル王子にわけの分からないものを頂いてしまった。


 この黒曜石のような石ころは一体なんなのだろう?

 隕石か? はたまた道ばたで拾った綺麗な石ころか?

 でも、道に転がっている石ころをわざわざ私に渡すだろうか?

 石ころの収集の趣味でも持っているのか?


 いつの間にか、私の眼は可視状態になって、その黒曜石のような艶やかな丸い石ころの残留思念を視ていた。


「っ!?」


 すると、この石ころの残留思念が見えない代わりに、ボワーンとした振動が頭に伝わってきて、私はくらくらして可視するのを止めた。まるで、お寺の鐘の中に頭を突っ込んで打ち鳴らしたかのような激烈さだ。


「な、なにこれ……? 可視できない……!」


 以前、可視できない石や砂の残留思念を視て、気を失ったことがあった。でも、そんなヒドイ感じではないけど。


「そ・れ・は・な、『プレルーノ・モンド』という石だ。『満月の世界』という意味を持つ。香姫の名前は、元居た世界では『月に帰ってしまう姫』の名前なんだろう?」

「漢字は違いますけど……そんな感じのお姫様の名前です……」

「そ・れ・で、こないだの礼として、何がいいかと思ったんだが、これがお前の名前にピッタリだろ? 勿論、国宝級の値段の付かない高価な石だ。こないだは、高価そうだからトラブルになったので、安物に見えるものを用意したってわけだ! 私の見立てに間違いはない!」


 ただの石ころにしか見えないのに、そんなにいいものだったのか!

 でも、可視できないから、ただの石ころではないことは確かだろうけれど。


「へええ、それでこれって何ができるんですか?」


 期待を込めて訊いたが、サミュエル王子からは沈黙が返ってきた。隣のアレクシス王子を見ても、微笑みしか返ってこない。


「何だったっけな……? おい、エン! 何だったか答えろ!」


 唐突に、問いを投げつけられて、エンは飛び上がった。


「サミュエル様!? 知らないであげたりしたんですかっ!?」

「十秒以内に答えろ! でないと魔法研究所で合格にすっぞ!」


 私は唖然として、言葉も出てこない。

 エンは、いきなり見つかった野兎のようになって、大慌てしている。


「ええええっ!? た、確か……っ」

「一、二、三、四、五、六、七、八!」


 サミュエル王子は問答無用でカウントダウンしている。

 お、鬼か……っ!


 エンは汗ダラダラになりながら考えていたが、ハッとして手をポンと打った。


「ベルカ王国一硬い石ですっ!」

「ああ、そうだったな。エン、ご苦労」

「……馬鹿王子が……っ」


 エンがぼそりと呟いた。


「あん? 何か言ったか?」

「あはは、何も言ってませんっ!」


 サミュエル王子は傍若無人もいいところだが、エンはケロッとしてそれをいなしている。サミュエル王子とエンは、良い侍従関係を築いているのかもしれない。


「ベルカ王国一硬い石……?それって、ダイヤモンドと同じ様なものですか?」と、私。


「いや、ダイヤモンドは熱に弱いが、プレルーノ・モンドは、熱にも強い。硬過ぎるから、ダイヤのように加工もできない。だから、そんな石ころにしか見えない」

「なるほど、硬い石……!」


 プレルーノ・モンドがようやく価値のあるものに見えてきた。何もできない石だったら、売り飛ばしてお金にして好きな物を買おうと思っていた。でも、これなら、もし妖魔に狙われて攻撃されても、これを使えば跳ね返すこともできるんじゃないか。


「嬉しいです! ありがたく、頂戴します!」


 私はローブのポケットの中に入れた。

 それまで、黙視していたアレクシス王子がようやく口を開いた。


「喜んでくださって光栄です。実は私もそれをサミュエル兄上と一緒に選んだのです」

「そ、そうですか……!」


 どことなくトラブルのニオイがして、私の心臓が反応して不穏な音を奏でている。なかなか言い出そうとしないアレクシス王子がことさら不気味だ。


 しびれを切らした澄恋があからさまにため息を吐いた。


「回りくどいんだけど。香姫に言いたいことがあるんなら単刀直入に言えば?」

「澄恋、アレクシス様になんてことを……!」


 ウィンザーは澄恋に噛みついている。


「私も澄恋君と同じ気持ちです。言いたいことがあるなら早く言ってください。このままじゃ、蛇の生殺しです!」

「では単刀直入に言いましょう」


 アレクシス王子の笑みが消えて、真剣な面持ちになった。


「封印所から、五十億ルビーの妖魔が逃げました。だから、香姫さんにご協力いただきたいのです」

「えっ……ご……五十億ルビー!? って賞金首ですか!?」

「そうです」


 桁が違う! ご協力って一体何を……?

 とんでもない依頼を持ちかけられて、私はめまいを覚えるのだった。

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