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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第四部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な青銅鏡と予言にやきもきする】
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第九話 最悪の占いの結果と出会い*

 早速、私たちはクリスタル先生の依頼を断りに占い学の準備室までおもむいた。


「なんて言ったの? 聞こえなかったわ!」


 いつもの美しいカリスマのクリスタル先生と違って、今は暗闇の中で見るハロウィンのかぼちゃにそっくりだ。本当に妖魔じゃないのかと疑いたくなるような、その……。


 私は苦笑しながら、後ずさりした。後ろに控えていたジュリアスと澄恋にぶつかりそうになる。


「だ、だから、クリスタル先生の依頼は受けられないので、断ろうと思って……!」


 すると、クリスタル先生は、オホホホホ! と上品に笑った。


「断るんなら仕方ないわよね! 私も素敵な占いの結果が出たからお知らせしなきゃね!」

「えっ!?」


 占いの結果!? 嫌な予感が!

 ハロウィンのかぼちゃのおどろおどろしさをそのままに、クリスタル先生は口の両端を釣り上げた。


「ジュリアス・シェイファー! お前は、もうすぐ死ぬ! だから、せいぜい気を付けることだ!」

「っ!? ジュリアス君が!?」


 私は、ジュリアスを振り返る。

 ジュリアスは口元が微笑んでいるが、目が怒っていた。


「脅しですか? 先生がそんなことを言っても良いんですか?」


 ジュリアスの言葉をものともせず、クリスタル先生は楽しそうに笑っている。


「オホホ! いやね、占いの結果よ! 脅しなんかじゃないわ!」


 まさに、水を得た魚のよう。私たちは言い募ろうとしたが、今度は、クリスタル先生が苦しみだした。


「うっ!? 発作が!」


 クリスタル先生は、脂汗をいっぱいかきながら準備室のドアノブを掴んだ。


「ハァハァ……じゃあね!」


 クリスタル先生は、ニタリと笑ったままドアを閉めた。完全にクリスタル先生の独り舞台だ。ジュリアスは肩をすくめた。私と澄恋はため息を吐いた。


「まったく! クリスタル先生には困ったもんだな」と、澄恋。

「でも、ジュリアス君も身辺には気を付けてね」

「香姫さん? 大丈夫だよ。あれは、クリスタル先生の腹いせだからね?」


 ジュリアスは、もはや全然気にしてない。クリスタル先生がそういうなら、挑戦状を受け取ってやろうじゃないかと言わんばかりだ。


「う、うん……」


 クリスタル先生の占いの結果を気にしている私は完全に彼女の術中におちいっているのか。当人のジュリアスはすっかりこの事を忘れてしまったので、私も澄恋も授業を受けるたびにこの事を忘れてしまった。



・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜



 その頃、ベルナデット校長先生は中庭の手入れにいそしんでいた。花の植え替えをしているのだ。秋の花が咲き終わったので、冬に咲く花に入れ替えていた。


 今日は良い天気で、冬の柔らかい日差しがふんわりと降り注いでいる。


 ベルナデット校長先生は老齢の女性だ。けれども、お日様のような優しいひとなので、太陽の下で働く農作業も良く似合う。ベルナデット校長先生が植え替えた花々も生き生きとしているし、小鳥が彼女の肩にとまって親しげに話しかけている。


 夢中になって時間の流れが速くなったことに気づくのが遅れた。生徒たちの楽しげな声が聞こえてきて、ベルナデット校長先生は顔を上げた。どうやら今日の授業が終了したようだ。


「もうこんな時間! あら?」


 ベルナデット校長先生は目の前に一人の少女が立っていることに気づいた。少女は、高等部の紺色のローブを着ていた。どうやらここの生徒らしい。彼女は吸い込まれるようにベルナデット校長先生の方を見ていた。


「どうかしましたか?」


 すると、彼女はハッと我に返った。


「あ、あの。綺麗な花だと思って……」

「花壇が綺麗だと生徒たちが落ち込んだ時ふと見ると元気になるでしょ。私はそういうお手伝いをしているの」

「素敵なことだと思います」


 少女は手に持っていた本をぎゅっと抱きしめている。ベルナデット校長先生は額の汗をぬぐって立ち上がった。曲がった背骨をぐーっと伸ばしている。


「そういえば、貴方のお名前はなんだったかしら。名字じゃなくて、お名前ね。私もベルナデット校長先生って名前で読んでもらっているものですからね。名前で呼んだ方が親しみがわくでしょ?」

「そうですね」


 少女は校長先生に釣られるようにして笑った。


「お話した記念に、お名前を教えてもらえるかしら?」


 少女は、名前を覚えてもらえることが光栄だというような緊張した様子だった。


「……マリエルです」


 一呼吸置いて、マリエル・クレイトンは答えた。ベルナデット校長先生は瞠目した。しかしすぐに、優しそうな笑みに取って代わる。


「そう、素敵なお名前ね」


 これが、マリエル・クレイトンとベルナデット校長先生の出会いだったのだ。


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