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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第一章◆【鳥居香姫は不可思議な転生とジュリアスに戸惑う】
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第十八話 猛特訓!

 ジュリアスは気を取り直したように微笑んだ。


「ごめん、ごめん! 君を苛めるつもりはないんだ」

「えっ……」


 ジュリアスを取り巻く空気が変わった。墓穴を掘ったとばかり思っていたのに。私を縛っていた緊迫の糸は、ジュリアスの微笑によって解かれた。


「君の素性も訊くつもりはないし、君も話さなくていい」

「どうして? 気にならないの?」

「全然気にならないよ。本名で呼ばれて困るなら、僕は知らなかったことにする。君を、リリーシャ・ローランドと呼ぶ」

「えっ……」

「その代わり、僕の素性も訊かないで。それで、チャラだ」

「でも……」


 もし、ジュリアスが全てを敵に回すような人だったら。それでも、私はジュリアスの味方でいられるんだろうか。ためらっていると、彼は微笑んだ。


「安心してよ。僕は君の味方だから」


 あっさりと、ジュリアスはそう言った。けれども、データキューブのキーホルダーは彼の手中だ。


「キーホルダーは、僕が預かっておく」


 私は眉間のしわを深めた。


「あ、僕のこと疑っているよね? 君は何の力もないんだから、危険かもしれない物は持たない方が良いんだよ」

「う……」


 私は、何も言えなくなってしまった。

 そうかもしれない。あのキーホルダーは私が持っていても無用の長物かもしれない。

 そして、ジュリアスは何事もなかったかのようにポケットからいつものデータキューブを取り出した。


「さあ、まずは魔法が使えないと」


 いつもと変わらないジュリアスを見ていると、心配が段々と薄れて行った。素性を隠さなければならないのは私とて同じこと。ジュリアスが私の味方になってくれるなら、私もジュリアスの味方でいればいい。


「来週は試験だからそれまでにデータキューブぐらいは開ける様にならないとね」

「そうだね……」


 このままじゃ、ずっとジュリアスに頼りっぱなしだ。


「まずは、データキューブの開閉から」

「どうやっても、開かないよ?」

「可視編成って言う時に、魔力を喉から出すんだ。そうすると発音も低音と高音の二重になる」

「可視編成!……できない……」


 私の発音は、普通だった。そもそも魔力を喉から出すって何なんだろう。魔力の備わっていなかった私には、初めて乗る自転車より難しいと思われる。


「リリーシャは、まだ目に変調はないの?」

「えっ? ……うん」

「そう。じゃあ、続けるよ。もう一回、呪文を唱えて?」


 目に変調があったら何なのだろう。以前も、ジュリアスはそんなことを言っていた。可視使いに関係があるんだろうか。

 でも、今はそんなことはどうでもいい。まずは、データキューブを開ける様にならないといけない。


 しかし、努力を裏切るように、何度やってもデータキューブは開けなかった。私は魔法の素質が全然ないのかもしれない。鳥は空を飛べるけど、魚が空を飛べないのと同じ道理かもしれない。もとから羽のない私には無理なのだ。でも、リリーシャの身体だし、ベルカの国の言葉も自然と話せたから、希望がないわけではないけど――。

 そして、一週間が早足で過ぎて行った。

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