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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三部♚第二章◆【鳥居香姫は不可思議な魔法会の勧誘に辟易する】
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第八話 アロースミス先輩と仮面のシャンベリー

「可視編成」


 意外なことに、私はすぐに泥のような眠りから解放された。


「あ、私!?」


 そう言えば、眠りから解放される前に、呪文を唱える低い声が聞こえた。


「大丈夫か?」


 私を覗き込む顔に気づいて私は、ギョッとなる。

 妖魔に顔を覗き込まれていたとなると、平常心を保つことなんて常人ではできない。


「仮面のシャンベリー……!」

「自己紹介をしている暇はない。あの女に腕輪を取られたようだ」

「えっ!?」


 逃げようと後ずさりしていた私に、仮面のシャンベリーは焦ったように早口で説明した。

 腕を確認すると本当に賢者の腕輪は私の手のどこにもなかった。

 あの女に腕輪を取られたと言った? あの女?

 私はハッとして顔を上げた。

 ディーナ・アロースミスが、賢者の腕輪を手に持って私を見下ろしていた。


「うふふ。鳥居さんに腕輪さんを貸して貰おうと思って、少しの間眠って貰っただけよ」

「なんで、腕輪を!?」


 まさか、見られていた? でも、それならもっと早く行動に映ったっておかしくなかったはずだ。何故、今なのだろう?

 私の疑問が可視に変わる前に、アロースミス先輩はご丁寧にも説明してくれた。


「ハモンドさんが、ベラベラと喋ってくれたのよ。だから、鳥居さんの素晴らしい古代魔法はこの腕輪さんのお蔭だと思ったの。だから、私も使ってみたくなっちゃって」

「イザベラさんが!?」


 私は殴られたような衝撃を覚えた。

 そうだ。イザベラは賢者の腕輪の事を知っている風だった。

 さっき二人が話した時に、イザベラはアロースミス先輩に不満をぶちまけたのだ。だからアロースミス先輩が変な気を起こしたのだ。


「その腕輪を早く放すんだ!」


 仮面のシャンベリーは焦ったように声を上げた。彼が焦っている意味が分からない。

 アロースミス先輩は可笑しそうに吹き出した。


「ちょっと借りるだけよ~。一回使ったらすぐに返すから。でも、貴方、さっきからなぁに? ヘンテコな格好して……」


 アロースミス先輩は、横取りする気はなかったらしい。それなら安心だ。

 でも、仮面のシャンベリーは一人焦燥している。


「君、腕輪の弱点は分かるか?」

「えっ!?」


 私は心臓を掴まれたほど驚いた。私の正体がバレたのだろうか。

 私が答えを逡巡していると、賢者の腕輪がついに怒った。


『私に触れるな!』

「きゃあ!」

「アロースミス先輩!」


 賢者の腕輪は、あろうことか電撃をアロースミス先輩に食らわせた。アロースミス先輩は、その衝撃に耐えられず、床に転がった。どうやら気絶してしまったらしい。

 私はアロースミス先輩を助けようと駆け寄った。けれど、仮面のシャンベリーは一人右往左往している。


「腕輪はどこに行った!?」


 カラカラと腕輪が転がっていく。それを華奢な綺麗な手が拾い上げた。


「ここですわ」


 余裕な声が聞こえて、私は振り返った。


「イザベラさん!?」


 私は居るはずのないイザベラが現れてギョッとした。イザベラは気になって跡をつけてきたのだろうか。

 勝ち誇った顔が嬉しそうに笑っていた。


「この腕輪は私が頂きますわ!」


 まさに漁夫の利。

 イザベラは、賢者の腕輪を右手にはめようとした。

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