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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三部♚第二章◆【鳥居香姫は不可思議な魔法会の勧誘に辟易する】
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第四話 占い学の授業2

 一時間目は占い学の授業だ。苦手意識が強かったクリスタル先生とも和解したので、私は比較的穏やかな気分で授業を聴いていた。


「誕生日占いは様々なものがあるの。ここに誕生日占いの本を用意したから、各自で占ってみてね」


 私がクラスの人気者になるという、クリスタル先生の予言は当たったような、当たってないような。とにかく、当たりかけたのは事実だ。私の取りつくろいがなければ、かなり危なかった。それからは、私は真剣に授業を受けている。


 今回の授業は誕生日占いだ。クリスタル先生が持ってきた本には、さまざまな日に生まれた人の性格や相性などが書かれてある。なので、女子生徒は本を食い入るように見ている。何故かというと、運命の相手なども書かれてあるからだ。つまり、恋愛的に。


 私は、真剣に立ち読みしているリリーシャとイザベラを、占いの本を手に取りながら眺めていた。ジュリアスもにこにこしながらいろんな本を手に取っている。何をそんなに真剣になる必要があるのだろう? 占いなんて当たるも八卦外れるのも八卦なのに。


 私は疑問を持ってしまったために、可視状態になる。

 しまっ……!

 可視したまま人を見るとどうなるのか。私は下着姿のクラスメイトを視てしまった。


「ううっ……」


 私は眉間をつまんで、目を制御しなおした。


「香姫のエッチ」

「☆◎×▽×◎☆っ!?」


 耳元でささやかれ、私はギョッとして振り返った。すると、澄恋が意地悪な顔をして笑っていた。


「ち、違うの! なんで、あんなに女子が真剣なんだろうって思っただけなの!」


 澄恋は、私の秘密中の秘密を知っている。人を可視するとハダカが見える事を知っているのは澄恋しかいない。私が小声で言い訳を並べ立てていると、澄恋は楽しそうに笑って、続けた。


「女子たちは都合のいい占いの結果を求めているんじゃないのかな」

「都合のいい占いの結果?」


 リリーシャの彼氏のクェンティンがグレンと占いの本を見て談笑している横で、「違う!」「違う! これもダメ!」と文字を追うスピードが滅茶苦茶速い。

 イザベラなんか、「違いますわ!」「これもダメですわ!」と、目が血走って長い金髪が頬に張り付いている。


「あったア!」「ありましたわぁ!」


 俊敏な手つきの彼女たちはそれぞれ一冊の本を手に取った。その勢いに私は吃驚した。


「クェンティン!」


 まず、リリーシャが、彼氏のクェンティンに声をかけた。


「何? リリーシャ?」


 クェンティンはリリーシャに声をかけられてうれしそうだ。リリーシャに右を向けと言われたら素直に右を向くタイプだ。


「ほら、見て! クェンティン! 私とクェンティンの相性、滅茶苦茶良いわ! しかも、運命の相手ですって!」

「本当だ! 僕たちは離れられない運命にあるんだね!」


 二人はラブラブモードに突入した。


「な、なるほど……都合のいい結果だ……」

「ね? 占いがいかに多様であるか分かるだろ?」


 私は、リリーシャとクェンティンのハートをサッと避けた。私も真似して、澄恋との相性を占おうかと思った。でも、澄恋に見透かされそうなので止めておこう。


「ジュリアス様!」


 こちらは、イザベラだ。先ほどは井戸の底からはいずり出そうな顔つきだったが、いつの間にか可愛いお嬢様キャラに戻っている。


「何かな? ハモンドさん?」


 ジュリアスは黒い笑みを浮かべて戦闘態勢だ。両者共に手には占いの本を持っている。


「ジュリアス様! 私とジュリアス様の相性、ウルトラスーパー超絶良いですわ! しかも、千年に一度の運命の相手ですのよ!」


 う、うわー。すごい! これなら、ジュリアスはイチコロ……!?

 私は黙って成り行きを見ていた。

 ジュリアスはクスクスと笑っている。


「あれっ? おかしいなぁ。僕の本には、イザベラさんとの相性は、ウルトラスーパーハイパー超絶最悪とあるけどね? しかも、千年に一度の天敵とあるよ?」


 イザベラはその場に崩れ落ちた。

 ジュリアスは強かった! ジュリアスを落とせる人なんていないんじゃないか。

 私は、ただただ傍観するのだった。


 占い学の授業が終わって教室に戻ろうとしていた頃、イザベラは燃え尽きて灰になっていた。教室を出て行ったところでさらりと風に流されて消えそうだった。

 片思いは辛いよね! 分かるよ!


 私が目をそらした時、クリスタル先生の姿が目に映った。クリスタル先生は「うぐぅ!」と胸を押さえて、準備室に消えて行った。


「ま、まさか……!?」


 クリスタル先生のアレが始まるのか……! ヤバい! 逃げないと!


「どうしたんだよ、香姫?」

「香姫さん?」


 青ざめた私を見て、澄恋もジュリアスも不思議がっている。私は澄恋とジュリアスの手を引いて、さっさと占い学の教室から出て行こうとした。


「澄恋君、ジュリアス君! 早く、次の授業に行こう!」


 ドアを開ける。

 ほっ、誰もいない――。


「鳥居さぁあああああああんッッッ!」

 天井に逆さにぶら下がったクリスタル先生が降ってきた。

「ぎゃあああああああああああああ!」


 今回は私と一緒に澄恋もジュリアスも絶叫した。

 べちゃっという音がして、クリスタル先生はむくりと起き上がった。


「鳥居さん! スゴイ占いの結果が出たの!」

 スゴイのはアクロバットなクリスタル先生だ。

「そ、そうですか……!」


 私の心臓は飛び出そうに鳴っている。

 どこのホラーだ……。普通に登場できないのか……。


「う、占いの結果って何ですか?」


 聞かなくていいのに、事情の知らない澄恋が訊いてしまった。


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